TENGAはプレジャー、カルチャー、ヘルスケアをつなげる

 今年3月、大規模リニューアルオープンを遂げた「阪急メンズ東京」の6階に、株式会社TENGAが国内では初となる常設店「TENGA STORE TOKYO」を出店した。

 同社の製品は、現在、全世界 60カ国以上で販売され、累計出荷本数は7700万本を突破。今期の売上高は、前年同期比で125%。発売から14年が経つ今なお、成長の一途を辿っている。一般流通も拡大し、2018年には大丸梅田店に女性向けセルフプレジャーアイテム「iroha」の期間限定店が登場するなど、「性を表通りに、誰もが楽しめるものに変えていく」という同社のスローガンを、まさに有言実行中だ。

 とはいえ、百貨店のフロアの一部にセクシャルアイテムも扱う常設店を構えるというのは、見方によってはリスキーにも映ってしまう。人によっては、拒否反応を示すのではないか。

 「阪急メンズ東京6階は、東京をベースに活動し、メインストリームと相容れない“異端”の空気漂うクリエーターファッションが集結するフロアをコンセプトにしています。ルールや時流に縛られず、自分らしく個性を装う男性を応援したい。突き抜けたファッションのヒントが詰まったこのフロアで、TENGAの展開はポイントと思っています」

 そう語るのは、阪急メンズ東京広報担当者。今回の出店は、百貨店サイドからオファーを依頼したと明かす。

 「私たち百貨店は、ファッションをベースにフロアを構成しがちですが、今回は逆の発想で考えました。ファッション以外にも音楽やアートなどはムーブメントの幹ですし、裏原宿などにはそこから派生し、見て見ぬふりをされるようなカルチャーがたくさんあります。そういったものの先にファッションがあるとすれば、枝葉から考えることで多様なストリートカルチャーを表現できるのではないかと。TENGA導入は、とても自然な流れでした」(阪急メンズ東京広報担当者)
「阪急メンズ東京」6階にある「TENGA STORE TOKYO」。まったくいやらしさがない外観が特徴的だ。
 実は、 2005年に商品化されたTENGAは、発売から14年経過する中で、そのイメージも大きく変わってきている。株式会社TENGA広報宣伝部の本井さんは説明する。

 「昨年9月に実施したTENGAの男性認知度アンケートでは、20代89.3%、30代86.0%、10代86.0%、40代72.0%、男性平均は83.6%に上りました。かつては、「テレビで芸人さんが話す姿をきっかけに知った」という方が多かったのですが、昨今は「気が付いたら知っていた」という意見が多い(笑)。男の子同士がプレゼントするということも珍しくないほどです」

 発売当時は、男性の自慰グッズとして面白おかしく扱われていたTENGAは、認知度が向上するとともに、ウケ狙いの道具から日常的に使うプレジャーアイテムとして浸透。「一人で寂しくオナニーなんて……」といったマインドから、「せっかくだったらより気持ちよく」という“プレジャー”的思考が広まったことで、TENGAは“カルチャー”としての展開を目指しているというわけだ。
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