映画『空白』主演・古田新太「よく怖そうって言われるけど…」実際は監督にも、街で“職質”されても“イエスマン”!?

古田新太(撮影・蔦野裕 ヘアメイク:田中菜月 スタイリスト:渡邉圭祐)

共演者も全員が“イエスマン”!? 怒涛のヒューマンドラマを撮り切れた理由

撮影も非常にスムースだったとか。

「今回はオイラだけじゃなく、他のキャストも全員“イエスマン”でしたから。監督に言われたとおり、いかようにも演じるというプロフェッショナル集団だったので、撮影期間は1カ月とわりとタイトだったんですが、最終的に3日早く終わりました。まあ、とにかくみんな、早くその日の撮影を終えて食事に行きたいという一念だったんですけど(笑)」

 スーパーの店長・青柳役には、実写映画では初共演となる松坂桃李。

「桃李とは、これまで一緒に作品をやったのは『パディントン』の日本語吹き替え版だけで、しかも別々に収録していたので、一緒に芝居したことはこれまでなかったんです。ただ、以前から一緒に食事をしたりはしていて。一緒に芝居するのは今回が初めてでしたけど、桃李がこういうタイプの俳優さんだったらいいなとイメージしていたそのままだったので良かったです。自分の役作りに縛られず、ちゃんと相手の芝居を受けて演じてくれる、思った通り、オイラの好きなタイプの俳優でした。桃李も、オイラとの芝居を楽しみにしてくれていたらしくて、やっぱり古田さんすごいですねと言ってくれて、うれしかったです」

 添田を父のように慕う若い漁師・龍馬役には藤原季節。

「季節は、ときおりいい芝居しようという欲が見えることがあるんだけど、それはそれでかわいい(笑)。龍馬は、添田にどんなに邪険にされても一緒に漁がしたいと慕ってくれる。若くして父親を亡くしていて、添田に父性を見出していたんでしょうね。そういう役の作り方が、本人と同じく実直でした」

 そんな龍馬の存在も、添田が人間性を取り戻していくきっかけに。

「いかんせん、龍馬は男の子で花音は女の子。添田の不器用さからすると、女の子の気持ちが分かるような男ではない。もしそれなら、奥さんも逃げて行かなかっただろうし。ただ、花音の親権を取ったということは、花音に対して愛情がなかった訳ではないと思う。でもその気持ちを表現できない人だったんだと思います。そこが、2人の“子供”に対する添田の接し方の違いに現れている。龍馬には漁のことを教えられるけど、少女漫画好きの美術部の娘には何も教えられることがなかったんでしょうね。もしあの事故が起こらず、花音が大人になって一緒に酒が飲めたりしたら、また変わったんだろうけど…と思います」

 怒りをたぎらせ悪魔的に青柳を追い詰めていく添田。その狂気に追い立てられ人生を狂わせていく青柳。はたして物語の最後に彼らを、そして見る者を待つのは…。

「試写を見終わったとき“監督はひどい人だね、かわいそうな人しか出てないじゃないですか”と言ったら、監督も“ね〜”って(笑)。本当に、誰一人幸せな人がいなくて、最後にかすかな希望が見えるかな、というくらい。それでもオイラの中では、好きな作品がまた1つ生まれたな、という思いです」