実力派たちの狂宴!新感覚サスペンス映画『ノイズ』で、藤原・松山・神木の魔法にかかれ!【黒田勇樹のハイパーメディア鑑賞記】

 こんにちは、黒田勇樹です。
 相変わらずって感じのご時世ですが、皆さん、いかがお過ごしですか?
 僕は取りあえずは自宅作業多めの毎日になってます。
 コラムのために映画館には行かせてもらってますが“普通にやっててくれてありがとうございます”って感じです。
 早くこの前までの生活が戻ってきますように!と祈りながら、今週も始めましょう。

黒田勇樹

 藤原竜也さん、松山ケンイチさんW主演の映画『ノイズ』を観てきました。
 この映画、サスペンスと謳って宣伝しているんですが、「幼馴染3人が人を殺してしまって隠す」というストーリーのキモを前面に押し出している。
 映画に限らず物語は、本当に“家に持って帰ってほしい命題”以外の問題は、出来る限り作中で解消しておく必要があると思っていて、BTTFのビフなんかがわかりやすいですかね?
 必ず天罰の様に馬糞に襲われて、作中の悪事の報いを受けることで、観客の感情を消化させて、本題をシャープにしていく。
 見やすいと思う作品ほど、“犯罪をしたから逮捕される”以外にも、色々な悪事と罰のバランスが取れている気がします。

 で、これはバランス感覚というか、勧善懲悪とは似て非なる感覚で、人間て大多数の人が「人を殺したら裁かれなければいけない」と思っているんですね。
 だから「殺人犯が主人公」って時点で“裁き”の存在が、観客の頭によぎる。
 ギリギリ、このパターンで逃げ切れるとしたら「実は殺したと思った人が生きてました。めでたしめでたし」(全然めでたくないし、消化不良になりがちですが、結構やってる作品、多いよね)
 ファンタジー寄りの世界観なら、バンバン殺しても「正義の味方」として見れちゃったりするんですけど、現代劇では難しい。1人殺したら、誰が見ても大罪人。

「どうやって事件が露呈して、どう裁かれるか」を、自然と観客は追うことになってしまうんですが、この映画の凄いところは、その主人公たちが追い詰められていくサスペンスパートと並行して“ひとつの殺人が引き起こす人間ドラマ”を、これでもかというほど濃厚に描いている。

“殺人者の葛藤”とか苦悩を描くような作品て、事件の謎解きに重心を置かず、シリアスだったりドキュメンタリータッチになりがちなのに、今作ではこれでもかとエンタメ性のあるサスペンス要素やケレン味のあるシーンを入れ込んで成立させるという、凄い技術を見せつけられました。

 多分、藤原・松山・神木隆之介くん3氏の“デフォルメしまくってるのに何故かリアルに見える”魔法みたいな演技が、共演者たちを自由にしてエンタメパートもサスペンスパートもシリアスパートも混在しているのに成立させちゃってたんだと思います。

 全ての謎が解けた瞬間が、物語後半に来るんですが、そこからも濃厚な人間ドラマを見せつつ…。
 最高のバランスで終わっていく本作。
 誰がどんな罪をどう裁かれていくのか、そして「最後に持って帰らさせられるもの」、消化しきれない、作品の「ノイズ」は、なんなのか。
 是非、多くの方に楽しんで頂きたい傑作でした。

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