大西ライオン無双 いつの間にかゴルフ界のアイドルになっていた〈徳井健太の菩薩目線 第141回〉

“サイコ”の異名を持つ平成ノブシコブシ・徳井健太が、世の中のあらゆる事象を生温かい目で見通す連載企画「徳井健太の菩薩目線」。第 141 回目は、同期・大西ライオンについて、独自の梵鐘を鳴らす――。

徳井健太

 結論からいうと、「自信ってすごい大事」に尽きる。そんなお話についての今回の菩薩目線。

 ことの発端は、『徳井の考察』で、同期である大西ライオン、5GAP、ラフコントロールと話をしたこと。その模様は、「同期トーク【大西ライオン】中尾班コラボ」と題された動画で公開されているので、ぜひ視聴していただけたらありがたいです。

 その話の中で、とにかくびっくりしたことが、ライオンの調子がいいということ。知っている方もいるかもしれないけど、ライオンはゴルフがうまい。彼のゴルフ好きの面に関しては、『アメトーーク!』などでも触れられていたから、俺も「ゴルフが好きなんだな」という認識はあった。

 ところが改めて話を聞くと、どうやら吉本で“今もっともゴルフが上手い”のはライオンらしい。そう自分で放言できるほど、ライオンは自らを「上手い」と話し、自信がみなぎっていた。

 実を言うと、この撮影をする前までライオンを面白いと思ったことは少なかった。面白くない奴――というわけではなくて、話を振っても肯定も否定もしないライオンの印象はぼんやりしていて、面白いといった印象を抱けなかった。

「ライオンはお笑いに対して努力してこなかったもんな」と話しかければ、「うん、まぁ……」という具合に歯切れが悪い。偏った意見が笑いを加速させるわけで、ふにゃふにゃした意見はどうしたって話を鈍重にさせる。

 でも、この動画におけるライオンの立ち居振る舞いは、びっくりするくらい変わっていて、どんどん持論を話す。「でも」とか「そうじゃない」なんてトークに介入してくる姿が、まるで別人のよう。

 偏った意見や尖った持論は、どうやったら振りかざすことができるのか?  言い切れるだけの胆力や責任を持てるか……結局のところ、自信の有無につきると思う。「この言葉を言っても僕は困りません。どうぞ煮るなり焼くなり好きにしてください」。そのふんぞり返りが、人を面白くさせる。ふんぞり返るには、自信という背もたれが必要だ。

 賞レースでチャンピオンに輝いた人間が、もう一段階ギアを上げて面白くなるのは自信がつくからに他ならない。結果を出すと、人は自信がつく。ライオンの場合、おそらくそれがゴルフだったんだろうなと思う。

 実際、ライオンは、自信がつくだけのことをしているからびっくりする。単にゴルフが上手いという自信だけじゃない。自分のYouTube チャンネルで、ゴルフ動画をたくさんアップし、その再生数は数十万再生を記録しているものも多い。

 その結果、ゴルフをしているおじさんたちからの支持もとても厚いらしい。たとえば、ゴルフ場で相方である吉村、千鳥のノブさん、オリラジの藤森とまわっていても、まずおじさんたちは「ライオンさん!」と声をかけるという。

 ゴルフ業界におけるライオンの認知度は凄まじく、コラボグッズの話もあるとかないとか。ゴルフの本を出せば、おそらく相当売れるだろう。ライオンと一緒にゴルフをするというツアーもあるそうで、それも大盛況らしい。YouTube におけるあっちゃん状態。ライオンはサバンナじゃなくて、いつのまにかフェアウェイに生息するようになっていた。

 考えてもみてほしい。ゴルフをプレーするおじさんなんて、ほとんどが生活に余裕のある人たちばかり。しかも、ゴルフをたしなんでる人には60 代以上も多い。そんな人たちから好かれているライオンは、まだ40 代前半。ということは、今後ライオンは25 年間は安泰ということになる。2022 年から2047 年までを安定して稼ぐことができる芸人なんて数えるほどしかいない。その領域に、ライオンは踏み込んでいる。当然、自信の一つや二つ、芽生えまくるに違いない。

 最初は下手だったと教えてくれた。社長付き合いでゴルフを始めてみたものの上手くいかない。東野さんや蛍原さんとプレーしてみると、自分の下手さに悔しくなった――と。今までお笑いでは何の努力もしてこなかったけど、「ゴルフだけはどういうわけか努力できた」。

 サブスクサービスのレッスンプロに通い続け、暇だからと毎日毎日腕を磨いたという。俺は詳しくないからよくわからないけど、ライオンは通い続けてから 3 か月でスコア 100 を切ったそうだ。ゴルフ好きに言わせると相当すごいらしいんだが、当の本人は 「当たり前の結果。努力すれば誰だってできる」と豪語していた。自信があふれるのは、裏付けとなる努力があるから。無双するにはワケがある。

「努力すれば誰でも突破できるのに、努力してないやつに限って『難しい』と言っている」

 これがライオン理論だ。どうやら人は変われるらしい。必要なのは、なんでもいいから続けられることを見つけること。そして、結果を出すことだ。

【プロフィール】
1980 年北海道出身。2000 年、東京 NSC5 期生同期の吉村崇とお笑いコンビ「平成ノブシコブシ」結成。「ピカルの定理」などバラエティ番組を中心に活躍。最近では、バラエティ番組や芸人を愛情たっぷりに「分析」することでも注目を集め、22年2月28日に『敗北からの芸人論』を発売。「もっと世間で評価や称賛を受けるべき人や物」を紹介すべく、YouTube チャンネル「徳井の考察」も開設している。吉本興業所属。
公式ツイッター https://twitter.com/nagomigozen
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