「お帰り、また会えたね」ペットの遺骨で真珠 約1年見守り、浜揚げに立ち会う人も

できた真珠はフォトブックに収められて依頼者のもとへ

 現在、有明・東京ビッグサイトで日本最大級のペットイベント「第13回 インターペット」が開催中。ペットフードやグッズはもちろん、IT家電や旅行サービス、インテリアなど、ペットとの暮らしをサポートする多彩な分野の製品・サービスが集まるなか、ペットとの別れを迎えた飼い主のためのサービスも注目を集めていた。

 その一つが、ペットの遺骨を真珠に生まれ変わらせる「真珠葬」だ。ペットの骨のかけらをICチップと一緒に樹脂コーティングしたものを核として、五島列島・奈留島の海で1年ほどかけて約10㎜の真珠玉を育てるという。費用は50万円弱で、アコヤガイに入れた8個の核すべてが真珠になるとは限らないという自然相手ならではのリスクもある。それでも依頼者たちは「自分には必要なことだった」と語る。

 真珠葬のサービスを立ち上げたウービィー株式会社の増田智江代表は「ペットのご遺骨が入った骨壺を家で供養しているという方はけっこういらっしゃるのですが、骨壺を見るたびに悲しい気持ちを思い出してしまう方も少なくないんですよね」と言う。

「ペットロスに関する調査」(2023年・アイペット損害保険株式会社調べ)ではペットを亡くした際「ペットロス」になった人が約6割、 ペットロスの「自覚があった」人は7割超というデータも出ている。

 ブースで手伝いをしていたスタッフの女性も、10歳で亡くなった愛犬を真珠葬にしたと言い「うちの子は具合が悪くなったと思ったら急変して突然亡くなってしまって、それから気持ちの行き場が無かったんです」と振り返る。

 真珠を育てている間は、送られてくるレポートを楽しみにしながら「外国に子どもが留学に行っているような感覚でした」という。

 亡くしてからはペットロス状態で「旅行に行く時も骨壺を持って行っていた」という女性。愛犬の写真と一緒にケースに入れた5粒の真珠と、真珠1粒を収めた“かごペンダント”を見せてくれ「今はこれがあるから。見て美しいものになって帰ってきてくれた」とほほえんだ。

 事業のアイデアについて増田代表は「五島列島に行ったとき、長崎大学大学院の松下吉樹教授、奈留島で真珠養殖を行う多賀眞珠の清水多賀夫さんと食事をする機会があり、そこで出た会話がきっかけだったんです」と振り返る。

「当時、松下先生がペットロスになっていて、清水さんから“真珠は貝が受け入れれば何でも核になるんですよ”という話を聞き“僕の犬の骨で真珠を作ってもらえませんか”と。私もずっとペットロスを抱えていたので、そんな真珠なら私も欲しいと思い、ぜひ参加したいと思ったんです。そこから3人で真珠づくりが始まりました」

 骨のかけらを核とする真珠づくりが始まったが。
 
「最初に骨のまま入れたら貝の力が強くて粉々になってしまい、次にコーティングして入れたら今度は貝の柔らかい部分を突き破り貝を死なせてしまった。完成まで試行錯誤して2年かかりました」

 ついに松下教授の愛犬の骨で真珠が完成。「そのとき松下先生が涙を浮かべて微笑みながら“お帰り”と言ったんです。それがあまりにも感動的で、きっと必要とする方は他にもいると思い、五島市の助成を受け事業として立ち上げました」

 今では骨と8㎜のICチップを核に真珠を完成させる方法を確立。真珠ができ上るまでの様子をその都度、映像などで依頼主に共有する。取り出しの際には「ほとんどの方が五島にいらっしゃって立ち会います。来られない方にも、その様子をライブ映像で共有します。真珠と対面すると皆さん“亡くなった子に言うのはおかしいかもしれないけど、お帰りと言いたい”とおっしゃいますね。やっぱり、ペットが亡くなって止まってしまっていた時間が動き出すんだと思います。悲しみは無くならないけど少し前向きなものになるのかな、と」

 ジュエリー用に加工された白く丸い真珠とは違い、一粒ごとに色や形もさまざまな真珠に、亡きペットの個性を重ねる人も。オプションのかごペンダントも、そんな真珠に穴を開けずにペンダントにしたいという気持ちを叶えるため大きな真珠を1粒収めることができるチャームを特注。ペットを亡くした人たちの心の痛みに細やかに寄り添うことができるのも「同じ痛みを知っているから」と増田代表。

 ペット産業の成長とともに、その別れをサポートするサービスも増えた。ペットロスを感じたときも、きっと自分に合ういやし方を見つけられるはずだ。
 
「真珠葬」は「第13回 インターペット ~人とペットの豊かな暮らしフェア~」(4月5~7日まで東京ビッグサイトにて一般公開)にてブース出展中。

ウービィー株式会社 増田智江代表

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