劇的勝利クリアソン新宿! ユースたちの歓喜の声、選手たちに届けたかった!〈徳井健太の菩薩目線 第254回〉

“サイコ”の異名を持つ平成ノブシコブシ・徳井健太が、世の中のあらゆる事象を生温かい目で見通す連載企画「徳井健太の菩薩目線」。第255回目は、クリアソン新宿のキックオフセレモニーについて、独自の梵鐘を鳴らす――。
大変ありがたいことに、クリアソン新宿のキックオフセレモニーに参加させていただいた。
クリアソン新宿とは、新宿区に拠点を置くJFLに所属するサッカークラブ。観戦に行くと、次第に知り合いも増え、クリアソン新宿のコミュニティに溶け込んでいくような心地よさを覚えていた。40歳を過ぎて、こんなに応援できるチームと出会えるなんて、人生は面白いものです。
その縁で、8月30日、 JFL第19節 「vs 沖縄SV」(@味の素フィールド西が丘)の試合前のイベント(キックオフセレモニー)に参加することになったのだ。その日は、「クリアソン夏祭り」と題して、浴衣・甚平着用で入場無料だったり、飲み放題プランがあったりと、とにかく‟盛り上がろうぜ!”という一日。
試合前には、「クリアソン新宿トーーク」でクリアソンのメンバーとトークイベントまでさせていただき、とても光栄だったものの、内心はドキドキというか、ハラハラというか、落ち着かなかった。
というのも、この試合までクリアソン新宿は、10試合勝利そして得点がない状態。当然、下位に沈んでいて、楽観できる状況にない。しかも、この日の相手である沖縄SVはトップ戦線に名を連ねる強者。下馬評では圧倒的に不利という中で、試合前に選手とトークイベントをするわけだから、僕もソワソワしていたのだ。
「徳井が来た日に惨敗した」なんてことになったら申し訳が立たないし、疫病神扱いされたっておかしくない。こうしたイベントに参加できるのはめちゃくちゃうれしい反面、「もし負けたら」という不安は常にあるわけで、試合前は結構ナーバスになるものなのです。
この1週間前にも、北海道のエスコンフィールドで行われた「vsソフトバンク」三連戦のイベントに参加させていただいた。日ハムはソフトバンクと熾烈な首位争いを繰り広げてたから、どうしても勝ちたい。そんな状況下で試合前を盛り上げる。盛り上げたはいいものの試合に負けてしまったら、「試合前のノブコブがふざけすぎた」などと言われても仕方ない。イベントに登場する僕たちも、勝てば官軍、負ければ賊軍なのだ。
試合は0対0のまま9回を終え、延長10回に日ハムがサヨナラ勝ちをした。これ以上ない劇的な勝ち方。僕は、勝手にそのイメージを持ちながら、第19節 「vs 沖縄SV」を見守っていた。
前半が終了し、クリアソンは無得点。ただ、相手の沖縄SVも無得点。格上を相手によく抑え込んでいる。でも、このままでは勝てない。喉から手が出るほどほしい1点。なにせクリアソンは、10試合も得点を入れていないわけだから、選手もスタッフもサポーターも、全員、その喜びを長らく味わっていない。
後半もドローが続き、アディショナルタイムはあとわずか。「また無得点か」なんて沈んだ声が聞こえてくる一方で、「強い相手に引き分けなら上出来」といった弾んだ声も聞こえてくる。たしかに、沖縄SV相手に勝ち点1をゲットできるならぜんぜん良い。でも――、歓喜を味わいたい。そんな見えない熱が味の素フィールド西が丘に渦巻いていたのだと思う。
試合終了直前、クリアソン新宿はコーナーキックを獲得した。時計は後半49分。島田選手が蹴ったボールに、竹内選手がヘディングで合わせた。ボールがゴールに吸い込まれていく。その瞬間、破裂したような歓声が轟いた。これだよ、これ。この瞬間を待っていたんだ!
サポーターの皆さんとハイタッチをしながら、僕は「疫病神にならなくてよかった」と溜飲を下げた。いや、出来すぎだ。日ハムの試合はサヨナラ勝ち。クリアソン新宿の試合はアディショナルタイムでの一撃。そして、こんなことを書いてしまったら、「徳井さんが来るときは、‟劇的”をお願いします」なんて言われかねない。はっきり言おう。まぐれなので期待しないでくださいませ。
監督、選手、スタッフ、サポーターが一丸となってつかんだ勝利。その瞬間に、ほんの少しでも触れさせてもらっただけで、僕は救われました。得点が入った瞬間、おそらくユースに所属しているだろう小中学生くらいの子どもたちが、「やった!」と喜びを爆発させていた。それを見たコーチと思しき男性が、「喜ぶ時間は今じゃない」と制止する姿を見て、この瞬間が未来につながっているのだと感じた。子どもたちは喜びをグッと抑え、試合終了を見守っていた。
1対0。ついに勝った。10試合ぶりの勝利。興奮冷めやらぬ中、トイレに行くと、先ほどのサッカー少年たちが入ってきた。
「やったーーーッ! 勝った! 勝った! すげぇ!」
トイレが国立競技場かと思うくらい、彼らは雄たけびを上げ、勝利を喜んでいた。グッと抑えた分、コーチがいないこの場所で、好きなだけ感情を吐き出す。
クリアソン新宿が勝つだけで、少年たちがこんなに喜んでいる。なんて素敵なスポーツなんだろうとあらためて思った。あの日、あの場所にいた皆さん、素晴らしい体験をさせていただき、ありがとうございました。
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