思春期のメンタルヘルスの不調が増加 対策は“川上”の予防も 〈東京都 第16回こども未来会議〉

 

 熱のこもったプレゼンの後、田中れいか委員(一般社団法人たすけあい代表理事)は「認知行動をモチーフにしたツールができたのは非常に喜ばしいこと。虐待を受けて児童養護施設で暮らしている子どもと関わっているんですが、自分の取り扱いが分からない子が多い。そういった子たちも自分を知る1 つのツールになり得る」と、ポジティブ。

 一木広治委員(一般財団法人ピースコミュニケーション財団代表理事)は「AIの時代だからこそリアルが大切、と活動をしている。リアルとデジタルの連携、融合で、進化すると思う」。

 山本晃史委員(認定特定非営利活動法人カタリバ 文教区青少年プラザ b-lab館長)は「デジタルのお話は、生きる力をどうつけていくのかみたいな提案。自分の人生が自分のものだという感覚、自分で決めていくことも大事。そういうことはリアルな場で、学校や学年が違うとかいろんな子がいる中で一緒に決めていくみたいなところで養われていく力なんだろうなと思います」

 その一方で、池本美香委員(株式会社日本総合研究所調査部上席主任研究員)は、メンタルヘルスに関する早期学習の必要性ついてのノルウェーの子どもたちの声を紹介しながらも、「自分で学んで自分で解決することは重要なんですが、そこにフォーカスしすぎると責任が全部子どもに行く。子ども側の要望もあるのでバランスも必要」と指摘した。

 

 座長を務めた、学習院大学文学部教授で東京大学名誉教授の秋田喜代美氏は「数十年前ですが、私も思春期の娘のメンタルヘルスの不調に、親として向き合ってどれだけ大変かっていうのを実感した」としたうえで、子どものウェルビーイングの大切さを語り、「特に思春期の段階で予防的にメンタルヘルスの対策を行うことの意義は大きい」。

 そして、「東京都は従来の延長線上にはない新たな施策に取り組んで、こども政策を常にリードしてきました。思春期のメンタルヘルス分野におきましても、先進的な施策にチャレンジすることは極めて重要であり、東京が行うということのインパクトはとても大きいと考えております。1人も取り残されることなく、全ての思春期の子どもたちのウェルビーイングを高めるために、東京都におかれましては、思春期のメンタルヘルスに関する具体的な施策に積極的に取り組んでいただきたい」と、まとめた。

 都は子どもや保護者が日常で抱えている不安などについて気軽に匿名で話せる「ギュッとチャット」を設置して学校と連携して対策をするなど、子どもたちのウェルビーイングを高めるためにさまざまな取組を行っている。