「松山を変えたい」と市長選への立候補を表明の田中エリナ氏「“これからどんどん良くなる”という期待を持てる街へ」
持続可能な未来へ向けた取り組みや、SDGs17の目標達成のヒントとなる話題について各界の著名人に話を聞く「シリーズ:未来トーク」。
今回は目標4「質の高い教育をみんなに」、目標8「働きがいも経済成長も」、目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」、目標11「住み続けられるまちづくりを」に関わる政策を掲げ、松山市長選への立候補を表明した田中エリナ氏に話を聞いた。
田中氏は愛媛県松山市出身で2022年4月に松山市議会議員選挙に出馬し、新人無所属ながらトップ当選。今年4月の市議選では2期目の当選を果たしたが、9月には11月15日に投開票される松山市長選への立候補を表明した。松山市はこれまで野志克仁氏が4期16年にわたり市長を務めてきた。
今回は市議2期目での決断。出馬表明会見では「松山は転換点にある」とおっしゃってましたが、これから4年間、これまでの市政が続くことへの危機感がとても大きかったということでしょうか? また、そういった意識は政治家はもちろん、一般の市民も感じるようなものなのでしょうか?
「現職に対する支持率が19%の一方で“支持しない”が60%弱まで上がっていたんです。市議や県議というのは与党に対する態度の表明はなかなか難しい部分があるのですが、様相として“松山市ってちょっと停滞してるよね。変わらなきゃね”という意見は空気感として松山にあったと思います」
近くの都市で比較するとお隣の香川県の高松市は結構にぎわっている印象があります。松山市は四国で人口が一番多い市なのですが、地元に住んでいる方からするとそういう危機感は結構あるのでしょうか?
「人口は松山のほうが多いです。以前は、松山が四国で一番と思っている方が多かったはずですが、今では高松に追い抜かれたと感じている方が増えていると思います。高松はアリーナもできて、駅ビルも綺麗になって、商店街が生まれ変わっている。松山は街づくりが停滞している。そういう意味で、やはり街づくりという観点からも“松山は高松に比べてちょっと遅れているよね”という印象が松山の人にはあると思います」
逆に言えば、まだまだ成長の余地があるということでしょうか?
「そうですね。私はこれまで『チェンジ』、つまり変化を掲げて政治活動を行ってきました。松山にはまだまだ可能性がありますし、今の松山を変えてほしいと感じている方には、共感していただける部分もあるのではないかと思っています。今回、私以外に出馬を表明されている方々も、松山を変えたいという主張をされています。ただ、同じ『変える』でも、これまでの市政を基本的に引き継ぎながら改善していくのか、これまでの仕組みや事業のあり方そのものを見直していくのかでは、大きな違いがあると思っています。もちろん、これまでの市政の良いところは残すべきです。ただ、今までやってきたからという理由だけで続けるのではなく、本当に今の松山に必要なのか、未来につながるのかという視点で見直していくことが大切だと考えています。
田中さんが考える「変わる」というのは具体的にどういった事があるのでしょうか?
「私はまず『行財政改革プラン』をしっかり始動させたいと思っています。福岡市や浜松市などの行政改革の取り組みも参考にしながら、松山市のすべての事業を総点検し、見直していきたいと考えています。ただ、それを私一人で判断するのではなく、民間の方々や専門家、そして事業に関わる当事者の皆さんにも参加していただき、本当に必要な事業なのか、もっと効果的な方法はないのかを検証していきたいんです。そうして生み出した財源を、子育てや教育、福祉、地域経済の活性化など、松山の未来への投資につなげていきたいと思っています。もちろん、長年続いてきた事業を見直すには、さまざまな反発や難しい判断もあると思います。それでも、特定の組織や利害関係にとらわれず、聖域なく改革を進めていく。その覚悟を持って取り組みたいと考えています。
国であろうが地方であろうが、財源の見直しの際には常にこの「しがらみ」という言葉がセットで出てくるような気がします。やはり政治というものは、いつまでたっても「しがらみ」からは逃れられないものなのでしょうか?
「そうなりがちな面はあると思います。政治はさまざまな立場の方との関係の中で成り立っていますし、その関係自体が悪いわけではありません。ただ、政権が長く続くと、どうしてもこれまでの関係や前例を優先しやすくなったり、見直すべきことが見直されにくくなったりする。だからこそ、新しい市長が担う役割は、誰が言ったか、や、その補助金につながる人の顔を思い浮かべるのではなく、市民にとって本当に必要なのかという基準で判断できる、市民のほうを向いた改革が大切だと考えています」
若者の流出への歯止めと、よそからの流入というのが一つのポイントだと思うんですけれども、子育て政策の中の0歳から2歳までの保育料の無償化というのは、そのどちらにも訴えかける政策ということでしょうか。
「そうですね。ただ、私が一番大切にしたいのは、子どもたちが安心して育つことのできるまちをつくるということなんです。子どもは地域の宝ですし、20年後には地域を支える大人になります。子育てしやすいまちというのは、裏を返せば、子どもたちが幸せに育つことのできるまちでもあると思っています。本来、子育てや教育については、国が責任を持って取り組むべきだと考えています。生まれ育った自治体によって、受けられる支援や教育の機会に大きな差が生まれるのは望ましくありません。ただ、国の制度が追いついていないのであれば、自治体としてできることに取り組む必要があります。例えば、隣の松前町では0歳から2歳児の保育料無償化が実施されていますが、松山市ではまだ実現できていません。若いご夫婦が住む場所を考えるときや、2人目、3人目の子どもを持ちたいと考えるとき、保育料の負担は決して小さくありません。経済的な不安が、子どもを持つことをためらう理由の一つになってしまうのであれば、そこは行政が支えていくべきだと思っています。安心して子どもを産み、育てられるまちにすることが、結果として若い世代の定住や転入にもつながっていくと考えています。

