都医・尾﨑会長、医療崩壊に警鐘「日本の皆保険制度できなくなってくる」小冊子や動画も

 東京都医師会の尾﨑治夫会長は6月10日、都内で行われた定例記者会見で、東京の医療崩壊について取り上げた。東京都医師会ではこれまでにも「TMA近未来医療会議」や書籍『近未来のTOKYO医療に希望はあるか?』(小学館)などで医療崩壊を訴えてきたといい、尾﨑会長は「今回、小冊子『東京医療崩壊?! ~あなたと愛する家族のためにできること~』とショート動画を制作し、東京にこれから起こるであろう医療の課題を4つ、それに対する対策を7つ挙げさせていただいた」と説明。

都の医療崩壊に警鐘を鳴らした東京都医師会の尾﨑治夫会長(撮影:上岸卓史)

 尾﨑会長は4つの課題として少子・超高齢化、高齢者の医療費財源の問題、医師や看護師の不足、医療提供体制の問題を指摘。具体的に「少子高齢化という言葉は理解していると思うが、若い人が高齢者を支えているという医療の仕組みについて理解していない方もいる。まず、支え手が減ってしまうということを理解していただきたい」「高齢者医療は税金や健康保険料、国からの支援金などで成り立っている。少子高齢化が進んでいく中で財源のことも考えていただきたい」

「東京は医師の数が一番多いと言われるが、実際に地域の中で地域の人を見ている医師の平均年齢は60代。最近は病院の経営が厳しいという状況もあるが、それを除いても少子超高齢化で医療・介護を支えてくれる若い人が減って高齢者(の医師)が頑張っている状態」「現状でも医師や看護師が足りない状況で、少子高齢化が進むと現役の医師や看護師が減っていく可能性がある。そういった問題も考えていただかないと」などと紹介した。

 その対策として禁煙の促進、多剤服用(ポリファーマシー、目安として6剤以上で薬物有害事象の頻度が高まる)を避けること、かかりつけ医を持つこと、救急車の適切利用、スイッチOTC薬(医師から処方される医療用医薬品のうち、副作用が少なく安全性の高いものを市販薬に転用したもの)の活用、未病対策やフレイル予防など健康寿命の延伸、ヘルスリテラシーの向上を挙げた。

 さらに「複数の診療科を受診して作用の似ている薬や、飲み合わせの悪い薬を飲んでいる人はいる。解決するためにIT化や電子カルテを共有し、本当に必要な薬とそうでない薬を薬剤師・薬局・医師が一体となって考えるべき」「若い人はかかりつけ医を持つ人が少ないが、これからは病気の治療だけでなく予防に取り組んでいくことが必要。近未来的には若い人もかかりつけ医を持って、予防医療に取り組んでいくことがいいのではないか」

「救急相談センター(♯7119)には東京都医師会でも相談員を派遣し、かなり充実した内容になっているので迷ったら利用していただきたい。高齢者の救急車利用が増えて半数以上は軽症というデータも出ているが、普段高齢者を見守る体制が作られていれば不安な時にも対処できる」「ちょっと喉が痛いという時に病院を受診するのではなく、最初は市販薬で少し様子を見るくらいのセルフメディケーションをしたほうがいいのではないか。ちょっと変だと感じたら会社や学校を休むことも大事」などと解説。

 尾﨑会長は改めて「日本の皆保険制度は素晴らしいと思って運営してきたが、そういうことがだんだんできなくなってくるのではないかというのが私どもの予測」と警鐘を鳴らした。

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