【短期集中連載】〈日本で最も歴史の長いプロ格闘技・シュートボクシング40年史〉最終回 いざエンリコ・ケールとの再戦へ。SBの最高傑作は再戦にめっぽう強い
来る11月24日、東京・国立代々木競技場第2体育館で創立40周年記念興行「〜SHOOT BOXING 40th Anniversary〜S-cup×GZT 2025」を行うシュートボクシング。プロ格闘技団体として同じ名前では史上最長となる40年という長い歴史を振り返る。(文・布施鋼治/写真提供・一般社団法人シュートボクシング協会)
その名は海人。40周年記念興行のメインで大一番に臨む
シュートボクシング(以下SB)40周年の歴史の中で“SBの最高傑作”の名をほしいままにする選手がいる。海人(TEAM F.O.D)だ。
キックボクシングを含めると過去71戦のキャリアの中には安保瑠輝也、日菜太、緑川創、不可思らそうそうたる面々から白星を奪ったレコードを持つ。那須川天心VS武尊という天下分け目の大一番で話題を呼んだTHE MATCH(2023年6月19日・東京ドーム)にも参戦。野杁正明を撃破した一戦はいまも格闘技ファンの脳裏に焼きついている。
VS海外の強豪に目を向けてみても、のちにK-1 WORLD MAX 2024 -70kg世界最強決定トーナメントで優勝するストーヤン・コプリヴレンスキー(ブルガリア)、初代GLORYライト級王者のダビット・キリア(ジョージア)、RISEで2階級を制覇したイ・ソンヒョン(韓国)から勝利。極めつけは、ジョルジオ・ペトロシアン(イタリア)から幻の勝利を奪っているペットモラコット・ペッティンディアカデミー(タイ)との連戦だろう。一度は敗北を喫しながら直後のリマッチでリベンジを果たし、海人はさらに評価を高めた。
チャンピオンベルトもホームであるSBでは世界スーパーウェルター級王座のみならず、2018年S-cupで優勝を果たしている。さらにRISE、KNOCK OUTといった他団体でもチャンピオンに輝いている。少なくとも、この10年で海人ほど複数のリングで実績を残している立ち技ファイターはいない。
そんな海人にも“谷間”といえる時期がある。今はまさにそうだろう。今年の初戦となったONE Championshipのタイの定期戦で伏兵のモハメド・シアサラニ(イラン)に判定負けを喫するや、続く6月22日のエンリコ・ケール(ドイツ)戦でも黒星をつけられてしまい、キャリアの中で初の連敗を喫することになってしまったのだ。
初戦で敗れた直後はノーコメントだったが、試合後、SBの創始者シーザー武志が海人の問題点として「パワーが足りなかった」と指摘した。その一方で「もう一回、僕の言い方で言えば“シーザー魂”というか、諦めないこと(が大事)だね。前より世界一への距離が遠くなったけど、また取り返す気持ちがあれば、もう一回やらせてあげたいけどね」とフォローすることも忘れなかった。
その機会は意外なほど早く訪れた。海人は10月11日のペットマイ戦で再起戦を白星で飾っているが、『SHOOT BOXING 40th Anniversary S-cup×GZT 2025』(11月24日・国立代々木競技場第2体育館)で早くもケールとの再戦が組まれることになったのだ。しかも試合順は大トリだ。初対決後、ケールは勝因についてこんなことを語っていた。
「私は休養している間にファイトスタイルを変えました。なので、その新しいスタイルに海人は対応できなかったんだと思います。具体的にいうとボディーを効かせる戦略が成功し、1Rから海人は苦しそうでした」
前日計量(11月23日)で海人は決意も新たにリベンジを誓った。
「SBのリングで最後に負けた選手に、40周年という一番大きな大会でリベンジするということが一番大事だと思う。ここで負けたら、またシュートボクサーが弱いと思われてしまう。僕自身、世界最強を目指しているので、40周年にふさわしい勝ち方をしたい」
2023年8月19日、GLORYオランダ・ロッテルダム大会ではティジャニ・ベスタティが保持するGLORY世界ライト級王座に挑戦するも5R大差の判定で敗れ王座奪取はならなかった。それ以降、海人は「打倒ベスタティ」を目標にキャリアを積み重ねてきたが、海人より長身の王者はMMAに転向してしまった。
新たな具体的な目標を設定するためには、ケールにリベンジしてからアピールするのが手っとり早い。スタンドの打撃だけではなく、投げや立ち関節・極め技もOKというSBならではの幅広いルールを武器に、ケールを攻略できるか。ペットモラコット戦を見る限り、SBの最高傑作は再戦にめっぽう強い。(終わり)

