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ヤングケアラーだったあの頃。周りに頼れず、「無理」と言えなかった理由がわかった。〈徳井健太の菩薩目線 第155回〉

2022.12.20 Vol.web Oiginal

“サイコ”の異名を持つ平成ノブシコブシ・徳井健太が、世の中のあらゆる事象を生温かい目で見通す連載企画「徳井健太の菩薩目線」。第155回目は、自身のヤングケアラーとしての過去について、独自の梵鐘を鳴らす――。

「僕、ヤングケアラーだったと思います。当時はそんな言葉なかったけど」

『敗北からの芸人論』を発売した際、自分の過去を振り返る機会があった。その話はBuzzFeedで記事になり、それからというもの、ヤングケアラーについて話をする機会が増えた。

 先日も対談をした。お相手は、水谷緑さん。精神科医療分野の取材を重ねている方で、ヤングケアラーについてのマンガを描かれている漫画家さんでもある。対談記事が公開される際は、徳井健太のTwitterなどでお伝えしたいと思う。

 水谷さんのマンガ『私だけ年を取っているみたいだ。 ヤングケアラーの再生』を見て驚いた。統合失調症の母を筆頭に、俺が通ってきた当時の道とほとんど一緒。主人公が抱く感覚にも既視感がある。特に、自分の感情を殺した――という感覚。

 高校生だったころ、クラスメイトに「徳井君って、何をやっても怒らないよね?」と聞かれたことがあった。「そうだね」と答えた俺に、クラスメイトは「何をやったら怒るの?」と質問を続けた。

「家が放火されて、大笑いされたら怒るかな」

 我ながらどうかしていると思った。放火されても怒らないんだもの。なぜか放火は許容範囲。その上で「大笑いされたら」、ようやく怒るらしい。あの時代、とことん感情を殺していた自分がいたんだなと、懐かしさが込み上げてきた。

 どういうわけか俺は、何かをやりながら何かをすることが好きだ。たとえば、料理をしながらテレビを見つつ、何かをぼんやり考える。そんなマルチタスクを抱えているときに、幸福感ややりがいを感じる。なんでだろうと思っていた。でも、その理由がわかった。

 ヤングケアラーは、家事をして、親の面倒を見て……結果的にマルチタスクをしている。だから、「そういうふうになりがち」なんだそうだ。さらには、「人に頼れない」。まったくその通りで、俺も人に頼ることが苦手だ。すべてを自分一人で抱え込んできたから、どう頼っていいのかわからない。そして、パンクする。勝手に抱えて、勝手に爆発する。

 本当は「無理です」と伝えればいい。だけど、「無理」と伝えることは、即死を意味する。唯一家庭の中でまともな人が匙を投げたら、すべてが崩壊してしまう。マンガを読んでいると、母親の面倒を見ながら、妹の世話もして、自分のことだってやらなきゃいけない――。あの頃の自分がフラッシュバックした。これって“ヤングケアラーあるある”だったんだって。

 そんな話を、菩薩目線担当編集A氏に話すと、「『(株)世界衝撃映像社』でむちゃくちゃなことを平気でできたのは、そういうことだったのかもしれないですね」と言われた。

 たしかに「無理」なんて選択肢はなくて、抱え込んでダイブするしかなかった。できませんと謝るくらいだったら飛んだほうがいい。傍から見れば、理解できないことだったかもしれないし、自分でもなんで飛びたがるのかわからなかったけど、今ようやく、自分でもあの頃の行動が理解できるようになった。ヤングケアラーだったときの行動や思考が、ずっと癖になっていたんだと思う。

 あのままいけば、きっと犯罪者になっていた。今はずいぶんと変わることができた気がする。救ってくれたのは、お笑いであり、お笑いの世界。まったく結果を残せていないときでも、誰かが見ていてくれて、一緒に酒を飲んでくれた。伸び悩んでいて脱線しそうなときでも、面白い先輩がダメ出ししてくれたり、励ましてくれたりする。感情を反芻して、自分に伝えてくれた人たちがたくさんいたから、ようやく自分でも感情が飲み込めるようになっていったんだと思う。

 さらけ出している人が多い世界で良かった。ヤングケアラーの話だって、普通であればなかなかオープンにできないことだよね。でも、さらけ出すのがお笑いだ。さらけ出すから、単なる思い出話が意味を持ち始めるのだと思う。

 

※徳井健太の菩薩目線は、毎月10・20・30日に更新

【KEY WORDで見るニュース】報道自由度、ヤングケアラー、ウサマ・ビンラーディン容疑者、路上飲み 他

2021.05.12 Vol.741

報道自由度
 香港のジャーナリスト団体、香港記者協会(HKJA)の調査で、香港で活動する記者らが感じる「報道の自由度」が2020年、過去最悪になったことが明らかになった。昨年6月に国家安全維持法(国安法)が施行されて以降、当局のメディアへの締め付けが強化されたことなどが原因。同協会は、国連が定めた「世界報道自由デー」の5月3日を前に今年2~3月に調査を実施。香港市民1023人、記者367人が回答し2020年の「報道の自由度」は100点満点で32.1。2019年の36.2から4.1ポイント低下。香港で報道の自由が失われることを懸念した同協会が調査を始めた13年の42から、20年までに10ポイント近く下がった。

セブン-イレブン東大阪南上小阪店
 フランチャイズ(FC)契約の解除をめぐり、コンビニ大手「セブン-イレブン」本部側と東大阪南上小阪店(大阪府東大阪市)の元オーナーの間で対立が続いている問題で、本部側が建設を進めた直営の仮店舗が5月4日、休業中のもとの店舗前にオープンした。対立は平成31年2月、元オーナーの松本実敏さん(59)が、本部側が認めないまま深夜営業を中止したために起きたとされ、コンビニ各社が24時間営業を見直すきっかけとなった。本部側は同年末にFC契約を解除し、翌1月に建物引き渡しなどを求めて大阪地裁に提訴。続いて松本さんも契約解除の無効を求めて提訴している。

ヤングケアラー
「YOUNG(若い)」と「CARER(世話する人)」を組み合わせた言葉で、病気や障害のある家族の介護や世話を日常的に行っている18歳未満の子供を指す。ヤングケアラーは厚生労働省と文部科学省による初の実態調査で、中学生の5.7%(約17人に1人)、高校生の4.1%(約24人に1人)に上ることが判明。孤立化や学習遅れなどにつながる恐れがあり、元当事者らは専門職員による相談体制などの必要性を提言。一部自治体が支援計画の策定などで先行しており、国も5月中に相談窓口の拡充など具体的な支援策を示す予定。

朝日新聞阪神支局襲撃事件
 昭和62年、朝日新聞阪神支局(兵庫県西宮市)に散弾銃を持った男が押し入り、記者2人が殺傷された事件から34年が経った5月3日、同支局には犠牲となった小尻知博(こじり・ともひろ)記者=当時(29)=の遺影を掲げた祭壇が支局内に設けられた。

ウサマ・ビンラーディン容疑者
 2001年の米中枢同時テロを首謀した国際テロ組織アルカーイダの指導者、ウサマ・ビンラーディン容疑者を米軍が殺害してから5月2日で10年になった。ビンラーディン容疑者は1957年にサウジアラビアの資産家の家庭に生まれ、1979年のソ連によるアフガン侵攻を受け、同国でソ連軍との戦闘に参加。1980年代後半にアルカーイダを創設したとされる。また米中枢同時テロのほかイエメン沖の米駆逐艦爆破(2000年)や在ケニア・タンザニアの米大使館同時爆破(1998年)などにも関与したとされる。

路上飲み
 新型コロナウイルスの感染拡大防止のための緊急事態宣言発令に伴い対象地域では酒類を提供する飲食店などに休業要請が出され、屋外での「路上飲み」の光景がよく見られるようになった。スーパーコンピューター「富岳」で行ったシミュレーションでは屋外では風の影響でより広範囲に飛沫が拡散する可能性が高くなることが判明。東京都の小池百合子知事は路上飲みをしないよう呼びかけたが、一向に減る気配はない。

時給7550円
 河野太郎ワクチン担当相は4月30日の記者会見で、菅義偉首相が新型コロナウイルス対策として表明したワクチン接種の対価増額や協力した医療機関への支援の詳細を明らかにした。集団接種に要員を派遣した医療機関には1時間当たり医師7550円、看護師2760円を支援する。

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