SearchSearch

小池百合子のMOTTAINAI「山中教授のノーベル賞受賞で思うこと」

2012.10.15 Vol.568

 気がつけば、神無月。そろそろ来年のカレンダー制作にとりかかる時期です。
 内外ともにパッとしない今日この頃ですが、ここへきて明るいニュースが次々に飛び込んできました。
 7日、三重県の鈴鹿サーキットで行われたF1日本グランプリで小林可夢偉が3位に入り、悲願の表彰台に上りました。同日、パリのロンシャン競馬場では昨年の三冠馬オルフェーヴルが惜敗の2位に。そしてテニスの錦織圭がジャパン・オープンで堂々の優勝、ときました。
 それだけではありません。8日にはiSP(人工多能性幹)細胞の研究で、京大の山中伸弥教授がついにノーベル医学・生理学賞を受賞されました。自民党の世耕弘成参議院議員と中高の同級生だった縁から、数年前の研修会で山中教授の講演を伺う機会がありました。研修後の懇親会ではカラオケでデュエットもさせていただきました。曲名は忘れましたが、とてもシャイな歌い方でした。
 山中教授の地道で真摯な研究は、うつむき加減の日本と、病に苦しむ人々、総じて人類に希望を与えてくれました。山中教授とその仲間の皆さんに心から感謝し、実用化に向け、さらなる活躍をお祈りしたいものです。必要な研究環境の整備とともに。
 ノーベル賞の選考は物理学賞、化学賞、経済学賞の3部門についてはスウェーデン科学アカデミー、生理学・医学賞はカロリンスカ研究所、平和賞はノルウェー国会、文学賞はスウェーデン・アカデミーがそれぞれ行いますが、その過程は公表されていません。
 実は、私は沖縄担当大臣の際に、候補者の絞り込み過程を垣間見ることができました。沖縄・恩納村に世界最高水準の研究機関「沖縄科学技術大学院大学」を創設するため、世界最高の研究者と知己を得ることができたからです。
 利根川進氏(87年生理学・医学賞)、ジェローム・フリードマン氏(90年物理学賞)をはじめ、トーステン・ヴィーゼル氏(81年生理学・医学賞)、シドニー・ブレナー氏(02年生理学・医学賞)、スティーブン・チュー氏(97年物理学賞・現米エネルギー庁長官)など、全員がノーベル賞受賞者ばかり。会議の合間に、「次のノーベル賞受賞者は誰にしようか」「彼はまだ早すぎる」「あと数年、成果を見なければ」といった会話が飛び交うのです。正式な選考会の前に、こうやって専門家同士で絞り込みをするのだなと理解しました。これらの専門家の視野に入らなければ、ノーベル賞の候補にもなりえないことも。
 この大学院大学計画は、例の「仕分け」の対象にもなりましたが、ぜひとも次代のノーベル賞受賞者を輩出できる「ゆりかご」となることを期待しています。       
(自民党衆議院議員)

小池百合子のMOTTAINAI「領土問題にメディアはどう対応してきたか」

2012.09.10 Vol.565

 8月には尖閣諸島の一つ、沖縄県石垣市字登野城2392番地の魚釣島に香港の活動家が不法上陸する事件が起こりました。また島根県隠岐郡隠岐の島町無番地である竹島に韓国の李明博大統領自らが侵入。7月にはロシアのメドベージェフ大統領が再度、北方領土に上陸した事件もありました。

 日本が三方から「攻め込まれた」状態です。北京で日本大使の公用車が行く手を阻止された揚げ句、国旗を奪われるという考えられない事件もありました。

 わが国の天皇陛下を侮辱した李明博大統領への野田総理の親書を韓国政府が受け取りを拒否するという考えられない出来事まで起こりました。

 一言でいうと、日本が「なめられている」。弱い日本が「付け込まれている」。そう断言せざるをえません。

 実兄が違法資金疑惑で逮捕された李明博大統領も、歴代大統領が死刑宣告を受けたように、退任後の悲惨な運命を予感しているのか、愛国者として名を残すための竹島上陸なのでしょう。

 それにしても日韓の離反は東アジア情勢に新たな不安定さをもたらします。李大統領の言動は、一国の指導者としての責任を放棄したエゴイストそのものではありませんか。
 これらの異常事態は突然降って沸いたものではありません。竹島は60年前のサンフランシスコ講和条約発効直前、韓国側が一方的に李承晩ラインを設定したことに端を発しています。北方領土は日本がポツダム宣言を受諾し、降伏した後に赤軍が上陸、占領したもの。尖閣諸島は国連の機関が豊富な天然資源の存在を報告して以来、にわかに中台が領有権を主張したケース。

 自国の領土、領海を主張するのは政治の責任ですが、長年、日本のメディアは領土問題を取り上げる政治家を危険な軍国主義者、右翼扱いし、日本の平和ボケを助長したといえます。

 メディアは竹島を「日韓両国が領有を主張する」竹島と呼び、尖閣に上陸した元衆議院議員の西村真悟氏を極悪非道の危険人物扱いしました。私自身、「ワールド・ビジネス サテライト」のキャスター時代に「朝鮮民主主義人民共和国」の正式名称が長すぎるとカットしようとすると、「あとが面倒だから」と言い直しを迫られました。ならばイギリスは「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国」と呼ばねばなりません。

 ようやく「島根県の竹島」といった報道が見られるようになりました。これまでの政治の責任を問うなら、メディアの責任も問われるべきです。国民の後押しのない領土の保全はありません。

 今からでもいい。きちんと歴史を学び、伝える教育とメディアの対応を求めます。
(自民党衆議院議員)

小池百合子のMOTTAINAI 第15回「6月は日本と世界の鬼門となるか?」

2012.06.11 Vol.555

 そろそろ梅雨入りかと思いきや、早くも台風3号のおでましです。竜巻に襲われたり、雹(票なら大歓迎ですが)に見舞われたりと、気候も政治も不安定極まりない状況が続いています。
 6月は世界の政治のハイライトが目白押しです。
 まず、今通常国会の会期が21日に迫る中、6月18日から開かれるメキシコでのG20に出席するには、15日にも衆院本会議での消費税関連法案の採決を行わなければなりません。
 ましてや、その後、ブラジルでのリオ環境サミットが開かれます。ちなみに、20年前、同じくリオ・デジャネイロで開かれたいわゆる「地球サミット」に世界中のリーダーが参加するなか、出席できなかった主要国はイタリアと日本だけでした。イタリアはそもそも首相の座が空席でした。日本については、当時の宮沢喜一首相が湾岸戦争後の機雷処理に自衛隊を派遣するための法案処理のため、国会を離れられなかったという事情がありました。結果として、日本は地球環境保全に後ろ向きとの印象を残しました。
 今回は、ぜひとも日本を代表して野田総理にはリオに飛んでほしいものです。
 6月16、17日には、私の第二の故郷でもあるエジプトで大統領選の決選投票が行われます。昨年のいわゆる「アラブの春」でムバラク大統領が権力を失い、先日終身刑を宣告されたばかりですが、判決や息子たちへの甘い対応を不服とする国民、なかでもイスラム系の反発は強くなるばかりです。結果として、長い歴史を持つムスリム同胞団をベースとする候補が勝利を収める可能性があります。
 となると、これまで世界の火薬庫といわれる中東において重要なセーフティーネットとなっていたエジプトとイスラエルの平和条約にも影響が出てくるでしょう。首相に世俗主義者を置くなどの配慮があるか、ないかがポイントになりますが、シリア情勢と相まって、中東の不安定化が懸念され、すなわち原油価格などに影響を及ぼします。
 遠い世界の出来事のようですが、原発すべてが停止し、老朽化した火力発電も駆り出す状態にある日本にとっても見逃せません。
 トドメは同じく17日に行われるギリシャの再選挙です。世論調査では8割以上が「ユーロ圏からの離脱は望まない」が、「緊縮財政もイヤ」とのこと。結果次第では、想定外だったユーロからの離脱、旧通貨のドラクマ復活とのシナリオが現実のものとなり、世界経済は大荒れが予測されます。
 6月は日本にとって、世界にとっても鬼門となりそうです。

(自民党衆議院議員)

小池百合子のMOTTAINAI 第14回「場当たり的ではないリアルな政治を!!」

2012.05.14 Vol.551

「脱」「卒」「反」だと、原発を巡る言葉遊びを続けているうちに、日本にあるすべての原子力発電が停止しました。42年ぶりの脱原発です。

 こどもの出産や入学、卒業など、将来の日程が明確であるように、13か月ごとの定期検査を考慮すれば、原発の全停止は十分予測されていたはずです。この1年間、いったい何をしていたのか。

 消費税増税に「政治生命」と全エネルギーを傾ける単線志向の野田総理ですが、「日本のエネルギー問題」こそ喫近の国家的課題。おまけに電力不足は国民の生命にも関わる問題です。複線志向で、目指す方向を決めながら、次に何をするかを考え、一つひとつ実行する…。政府の役割はこれに尽きるのではないですか。

 3・11以後、多くの国民、そしてほとんどの日本の政治家は、濃淡はあれど、原発に依存しない社会を望むようになりました。世界のすう勢が原発推進の流れだとしても、地震や津波の危険性の高い日本では慎重にならざるをえないことは当然というものでしょう。

 ただ、電力を所管する大臣が「5月6日から一瞬ゼロになる」と言い放ち、「集団自殺するようなことになる」と与党幹部が脅したりと、事態は複雑、かつ情緒的になるばかりです。場当たり的な政策や判断の繰り返しが、ますます国民を不安と混乱に陥れているわけです。

 技術的、科学的、客観的な判断を下す組織が必要であり、原子力規制庁の設立が急がれます。環境省の外局方式を主張する政府・与党案、いわゆる三条委員会方式で独立性の確保を重視する自民党案などの折り合いがつかず、いまだ宙ぶらりん状態です。早急に結論を出しましょう。そのためにもさっさと問責を受けた2大臣の入れ替えが必要です。

 また、地球温暖化対策として二酸化炭素の25%削減や、原子力発電計画の倍増を謳ってきた民主党です。改めるべきは、改め、早急に今後のエネルギー政策を明らかにする責任があります。

 その上で、どの原発は安全性が高く、どの原発に不安があるか、より明確に、率直に国民に説明をすべきです。この1年間に生じた「すべての原発が危険」との印象を抱かせている現状では、かつての「原発の安全神話」の裏返しになりかねません。オール・オア・ナッシングではリアルな政治とはいえないのです。

 原発問題だけでなく、あらゆる分野での日本政府のモタモタぶりを世界が見ています。現政権には、そのことを心していただきたいものです。

(自民党衆議院議員)

小池百合子のMOTTAINAI 第12回「被災地のがれきの処理は「おたがいさま」の意識で」

2012.03.12 Vol.544

 遅い。遅いです。

 何がというと、被災地のがれきの処理です。岩手、宮城、福島の被災3県から排出されたがれきの量は2300万トン。平時の廃棄物処理量の10〜20年分にあたります。

 阪神大震災のど真ん中にいた私は、兵庫県の近隣自治体ががれき処理に協力してくれたことに今も感謝しています。

 思い出が詰まった家々が破壊され、災害廃棄物という無機質な固まりとして積み上げられたさまを見るだけで、精神的にも重苦しいものです。新しい出発をするにしても、がれきが片付かないうちは復興段階に入れません。

 東日本の復興促進のためには広域処理は不可欠です。

 問題は福島第一原発事故の影響を受けたがれきを全国にバラ撒くのではないかという不安です。京都の大文字焼の際に起こった騒動が不安の拡散に輪をかけました。

 先日、政府は食品の安全基準を一般食品で100ベクレルとしました。廃棄物に含まれる放射性セシウムについて再利用の基準も100ベクレルとなっています。そもそも人体にはカリウムなどの放射性物質が含まれており、体重60�sの人なら7000ベクレルは保有しているとされています。

 だから、被災地からのがれきをなんでも受け入れていい、というわけではありません。放射性の高いがれきはそもそも「受けない」ことを明確にしなければなりません。

 大都市で起こった阪神大震災と、津波に洗われた東日本大震災ではがれきの種類も異なります。阪神ではコンクリート系が莫大な量を占め、一方、東日本では住宅の木材が多いといいます。おのずと処理方法も異なります。木材系はバイオマスとして火力発電の材料としても活用できますが、仕分けの手間などを考えると、コスト面での問題も生じます。

 それでも、電力不足という現実を考えると廃材を資源として活用する意味は大きいでしょう。

 また、被災地の自治体ごとに廃棄物の収集を優先したところと、最初から分別という段階を経たうえで、素材別に収集したところがあります。耳にする範囲では、遠回りでも分別から始めた自治体のほうが、結局は全体の処理が進んでいるようです。

 また、津波被害が大きかった地域は必然的に海に面していることから、広域処理では船を輸送に活用しやすくなります。地震で破壊した内陸部は鉄道による輸送となります。

 量、質の両面を考慮し、迅速に決断を下す。

 平時の知恵の蓄積がものをいいます。マイナスからの作業ですが、日本が「おたがいさま」の意識で協力し合いたいものです。

(自民党衆議院議員)

小池百合子のMOTTAINAI 第11回「 一刻も早く新たなるエネルギー戦略を考えるべき」

2012.02.13 Vol.541

一刻も早く新たなるエネルギー戦略を考えるべき

 いよいよ来年度の予算審議が佳境に入ってきました。人口構成が大きく変わるなか、年金や医療、介護などの社会保障の設計を変えることはまったなしの状況であると、多くの国民も理解しているところでしょう。

 来年度予算の中身は消費税増税を先取りし、年金基金という別財布から流用しての交付国債発行など、問題点も数多く、審議を深める必要があります。

 本来なら、国民生活に直結する「社会保障」問題について大切な議論を重ねるべきところですが、田中直樹防衛大臣のあやふやな答弁に多くの時間とエネルギーを「安全保障」に費やす流れとなっています。

 そもそも、防衛政策にまともに答えられない防衛大臣を任命するほうが問題です。任命権者である野田総理の責任こそが問われます。もう少し「お勉強」する時間を与えても、といった心優しい感想こそ、わが国の平和ボケの最たる結果ではないでしょうか。

 現在の日本を取り巻く状況は、そうそう心優しいものではないのです。社会保障の充実も、国家の安全が守られてこその話です。

 国民生活に直結するもうひとつの問題は電力料金値上げの流れです。企業向け電気料金を4月から平均17%値上げとされますが、例えばNTTの場合、グループ全体で年間50億〜60億円のコスト増となると発表しています。消費者への負担増につながる恐れは大です。

 家庭用電力料金の値上げを含むと、消費税とのダブルパンチとなります。国際競争力の観点からも、由々しき状態と言わざるをえません。

 原発を取り巻く環境は依然厳しく、このままでは4月にはすべての原発が停止します。その分、世界から火力発電所用の石油やガスを仕入れなければならず、おまけにイラン情勢の不透明感からエネルギー価格は右上がりときました。

 どうやって自己防衛するか。

 以前、日本中の照明をLED化すれば13基の原発は不要となる試算を紹介しました。節電、省エネを徹底することが最短の道です。企業なら、リース方式を活用して、徹底して照明のLED化を進めるのはどうでしょう。

 そのための積極的な助成策こそ予算に盛り込むべきですが、そうはなっていない。どうも何を優先するべきか、感度が鈍いように思います。

 エネルギー安全保障という日本にとって最も脆弱な部分を直撃した東日本大震災と福島第一原発事故。ならば、一刻も早く出すべきは、新たなエネルギー戦略でしょう。総力戦で臨みましょう。

(自民党衆議院議員)

 

小池百合子のMOTTAINAI 第10回「台湾の人々にとり、財布は「北」京、思いは「東」京」

2012.01.23 Vol.538

 辰年の2012年。まずは、昨年のような災いを「断つ」年としたいものです。

 今年はアメリカ、フランス、ロシアなどの主要各国で選挙が目白押し。その皮切りとして1月14日、台湾の総統選挙が行われ、親中国で現職の馬英九氏(国民党)が再選を果たしました。

 1996年の台湾総統選挙では、台湾独自の存在を謳う李登輝氏の優勢に焦った中国軍は基隆沖にミサイルを発射する威嚇行為に出ました。結果は逆効果。李登輝氏の勝利に終わりました。

 今回も民進党の女性代表・蔡英文氏の猛追を受けましたが、学習を積んだ中国はミサイルによる恫喝ではなく、確実な弾を撃ち込みました。100万人にものぼる中国本土で生活する台湾人のうち、40万人近くを台湾に戻し、一票を投じさせたのです。これほど確実な「弾」はありません。

 民進党が牙城とする南部でも、農民票が国民党へと流れました。中台間のECFA(両岸経済協力枠組協議)は温家宝首相が「台湾に利益を譲る」と強調したように、「こっちの水は甘いゾ」とばかりに台湾側にメリットを多く与えたものとされています。台湾の農産品を中国本土の巨大マーケットへ導くなど、中国との交流を実感させる効果がありました。

 もちろん中国は台湾との経済交流促進を最終目標とはしていません。中国にとって、台湾統一こそ最大の目標であり、今回の馬英九勝利はその一歩ととらえていることでしょう。

 だからといって、台湾の国民がそうそう簡単に中国本土への併呑を許すわけではありません。民主主義の享受を幾度も体感し、自由すぎるといっても過言ではない報道合戦など、現在の中国では考えられない社会へと成熟しています。

 むしろ、台湾の自由な選挙に対して、中国本土の人々が羨む効果が今後も広がる可能性があります。その台湾人が最も好きな国は日本。それは、東日本大震災に際して、200億円にも上る義捐金が台湾から寄せられたことでも証明されています。台湾の人々にとって、とりあえず財布は「北」京、思いは「東」京、といったところでしょうか。

 さて、台湾初の女性総統を目指した民進党の蔡英文氏は敗北を受け、党代表を辞任。他方、12月にも予定されている韓国の大統領選は暗殺された朴正熙大統領の長女である朴槿氏と韓国初の女性首相を務めた韓明淑氏(元環境大臣)との女の闘いになりそうです。

 アジアでもなでしこたちが元気です。

(自民党衆議院議員)

小池百合子のMOTTAINAI 第9回「女性力の活用で日本社会に変革を」

2011.12.12 Vol.534

 今年はさまざまな国難が「これでもか」とばかりにわが国を襲いました。

 92年、英国のエリザベス女王はウィンザー城の火災、相次いだ王室スキャンダルを「アナス・ホリビリス(ひどい年)」とラテン語で嘆きましたが、今年の日本はまさに「ひどい年」でした。

 そんななかで、希望をもたらしてくれたのは、今年の流行語大賞ともなった「なでしこJAPAN」の活躍ではなかったでしょうか。私も女性として、彼女らの活躍には心からの賛辞を贈ります。

 世の中に変革をもたらすのは「若者、バカ者、ヨソ者」だと言います。

 アップルの創業者で、IT産業の旗手スティーヴ・ジョブスの言葉に「Stay foolish. Stay hungry」(バカでいろ、ハングリーを続けろ)という名文句がありますが、彼はそのままの人生を歩みました。バカと思われることにも、彼は挑戦を続けました。意思を持ってバカ者を貫いたのです。

 素晴らしい技術を有するオリンパスの不正経理を暴いたのは英国人社長、ヨソ者でした。結果的に、国際社会で日本企業全体が胡散臭い存在だとの印象を強めてしまい、日本が世界のヨソ者となる恐れもあります。

 そろそろ、日本もギアを切り替えたほうがよいでしょう。

 そのための即戦力が「なでしこ」たちです。女性力の活用です。

 ダボス会議で有名な世界経済フォーラムがまとめた世界の女性力活用ランキングで日本は年々地位を下げ、今年は135カ国で98位となりました。

 理由はただ一つ。他国が女性力活用を意識して高める努力をしているのに、日本はなすがままだからです。

 ノルウェーでは、取締役の女性比率が4割に満たない場合、上場廃止となる過激な法を施行しました。そのため、自ら上場を取りやめた企業もあります。欧州諸国でも同様の制度を導入する動きがあります。日本で実施するなら、上場企業はゼロになることでしょう。

 女性管理職の国際比較では、アメリカで47%、ドイツ30%に比べ、日本は10%に満たないのが実情。アジアでもフィリピンでは57%、シンガポールで25%です。

 医師不足といいますが、近年、3割を占める女子の医学生が、結婚、出産で離職後の職場復帰が不十分であることも原因とされています。国公立の医学部は税金で賄われているわけで、女医さんが専業主婦のままでいるなら「もったいない」。

 育児や介護など、女性の社会的環境整備を進めることで800万人もの雇用を生み、GDPを15%押し上げるという試算があります。

 日本社会で、女性はそもそもヨソ者。万年野党でした。真の政権交代は「なでしこ」を主力選手とすることではないでしょうか。

 ちなみに世界をリードする大学、ハーバード大、ペンシルバニア大、ケンブリッジ大などの学長は女性。東大や京大で女性学長が誕生するのはいつのことでしょうか。

(自民党衆議院議員)

 

小池百合子のMOTTAINAI 第8回「 夏と同じようにさまざまな工夫が必要な冬場の節電」

2011.11.14 Vol.531

 立冬を迎え、確実に冬の足音が聞こえるようになりました。

 3月の福島第一原発事故による計画停電や電力不足は日々の生活や経済に大きな影響を与えながらも、みんなの努力により何とか夏場を乗り越えることができました。

 東日本大震災が発生したその日、帰宅難民となった人々の整然とした姿は世界から絶賛されました。暴動や略奪が生じなかったことは、多くの国では考えられないことだからです。一人ひとりの節電努力で国家的危機を乗り越えたことも、絶賛されるべきことです。

 ただし、暑さを凌ぐための冷房で電力需要が午後2時ごろの数時間にピークを迎える夏場と違い、これからの冬場対策はさらにやっかいです。

 冬の電力需要のピークは1日2回。気温の低い朝夕に迎えます。特に、夕方午後5〜6時には夕食の支度に照明、暖房とトリプル要素が需要を伸ばします。さらに、冷房と比べ、暖房はエネルギー消費が約3倍増えます。CO2も3倍です。

 昨年は2月14日のバレンタインデーに5150万kwの最大電力需要を記録。今年は、東電管内で福島原発はもちろんのこと、柏崎原発などの原発が次々に13カ月ごとの定期検査に入ります。ストレス・テストを含め、安全確認をし、再稼働させない限り、来年春には日本中の原発が停止することになります。原発依存の高い関西電力や九州電力では5〜10%の節電が必要とされますが、東電管内は数値目標を伴う節電は求められずに済みそうです。

 とはいえ、夏と同じようにさまざまな工夫が必要です。まず、暖房の設定温度は2度抑えて、摂氏20度にすれば7%の節電が可能です。夏場に活躍した扇風機を天井に向けて回せば、上部の温かい空気を部屋に循環させることができます。

 夏とは逆に、外の寒い空気の断熱のためにペアガラスにする、厚めのカーテンにする、なども効果が高くなります。

 それでも寒い分は1枚多く着こみます。要はウォームビズです。昔から「頭寒足熱」と言うように、靴下の2枚ばきや湯たんぽの活用で足元を温かくする工夫をします。

 家の中での事故は各部屋の温度差に起因するものが多く、なかでも風呂場での事故が8割を占めるといいます。いわゆるヒートショックを防止するため、風呂の熱気を前もって脱衣スペースにまで広げる工夫もよいでしょう。鏡が曇ることは少々ガマンするとしましょう。

 一番の幸せは熱燗に鍋料理で体を内から温めること…。さっそく今晩にも、いかがですか?

(自民党衆議院議員)

 

小池百合子のMOTTAINAI 第7回「MOTTAINAI」の伝道師マータイさんの功績

2011.10.10 Vol.527

 2004年にノーベル平和賞を受賞したケニアの元環境副大臣ワンガリ・マータイさんが9月26日、がんのため亡くなりました。71歳でした。

 本コラムの標題「MOTTAINAI」もマータイさんと無関係ではありません。05年に初来日したマータイさんは古くからの日本の美徳である「もったいない」という言葉に接し、その意味に感動。そのままの足で環境大臣室を訪問されたマータイさんが新発見に興奮しておられたのを覚えています。

 2人で適当な英語訳があるかと議論しましたが、みつかりません。強いていえば、It is too precious to wasteでしょうか。結局、日本語のままがいいと、そのまま世界中に広める役をかって出られました。ニューヨークの国連本部での講演の際には、聴衆に「MOTTAINAI」の大合唱を促すなど、まさに伝道師でした。

 マータイさんは日本のリサイクルシステム「3R」についても興味津津でした。3RはREDUCE、REUSE、RECYCLE(削減、再使用、リサイクル)と循環型社会を構築するためのコンセプトをまとめたものですが、マータイさんはRESPECT(尊ぶ)を加えて4Rにすべきと主張しました。モノを大切にする心が必要だと言うのです。

 当時、日本の伝統的な風呂敷を活用して「レジ袋削減キャンペーン」に取り組んでいたこともマータイさんを刺激しました。江戸時代の画家、伊藤若冲の絵をモチーフに私がデザインしたペットボトルのリサイクル風呂敷を大いに気に入り、時折、ナイロビから追加注文が届いたものです。

 マータイさんが環境分野で初のノーベル平和賞を受賞したのは、アフリカの地で3000万本もの植林活動「グリーンベルト」を続けてきた功績によるものです。人口増と貧困で農地は荒れ、燃料代わりに木々が伐採される悪循環に陥るアフリカに希望をもたらすために、アメリカで生物学博士号も取得したマータイさんが考えた対策は女性と環境の組み合わせでした。

 アフリカの女性たちを植林に従事させることで、地域の環境を守り、雇用を生み出したのです。

 いつも笑顔を忘れず、いったん話し出すと周囲を魅了したマータイさんですが、政権批判のかどで幾度か投獄された経験もあります。大統領選出馬に妨害を受け、断念させられるなど闘いの連続でした。

 日本人が何気なく使ってきた「もったいない」の言葉にあらためて魂を吹き込んでくれたマータイさんに心から感謝し、ご冥福をお祈りします。

(自民党衆議院議員)

小池百合子のMOTTAINAI 第6回「電力不足がもたらした真の少子化対策」

2011.09.12 Vol.524

「故意に違反すると1時間あたり100万円の罰金なり」という極めつきの統制経済政策、電気事業法による電力使用制限令もひとまず解除されました。大口需要家を対象に前年比15%の節電を強いるものでした。

 電力多消費産業の工場では、土日操業に振り替えたり、電力需要期にはエイヤと操業休止に踏み切るなどの思い切った方策がとられました。いわゆるサマータイムを導入する企業も続出しました。

 さて、結果はどうだったのでしょうか。

 少なくとも罰金の支払いを求められた企業や団体が続出したとは聞いていません。これも日本の団結力、絆の賜物なのでしょう。しかし、企業ごとのばらばらなサマータイム導入はかえってエネルギー消費が増えるとの説もあります。だからこそ、その成果の中身を知りたいところです。

 私が興味を抱くのは、始業時間を早めるサマータイムを導入した企業で働く人たちのライフスタイルの変化です。

 早起きは辛いが、満員電車を避けられた。帰宅時間が早まり、家族と過ごす時間がたっぷりできた。趣味の時間が確保できたなど、新たな生活を見出すプラス効果。逆に、子どもの保育園や学校通いに支障が生じた。4時起きでのお弁当作りはきついなど、マイナス効果。さまざまな新現象が生まれたことでしょう。

 そもそも日本のホワイトカラーの労働生産性は先進7カ国中最下位、OECD33カ国中でも22位だとする日本生産性本部による調査(2010年版)があります。ブルーカラーの生産性は世界トップレベルなのに、オフィスワークとなると、長時間労働の割に成果は上がらずという状況が続いているのです。

 ワーク・ライフ・バランスなる舌を噛みそうな用語があります。仕事と生活を両立、調和させるため、働き方や社会環境を整えることを意味します。国の祝日を増やしたり、育児休業制度を改正しても、日本人は有給休暇さえ消化しない働き蜂ばかりです。

 その結果、少子化に歯止めがかからず、過労死は減らず、退職後に自分の居場所が見つけられない人が続出するなど、豊かなはずの日本で一人ひとりの幸福が実現しているとは思いがたい。

 環境大臣時代に導入したクールビズが、当初は賛否両論が渦巻きましたが、今はすっかり定着しています。同様に、電力不足対策として始まった新たな就業システムを一時的ではなく、恒久的なものとすればよいでしょう。

 こども手当てのようなバラマキで次世代につけ回しをするのではなく、時間という別の単位を提供する。真の少子化対策になるのではないでしょうか。

(自民党総務会長)

Copyrighted Image