SearchSearch

「ソウドリ解体新笑」で明かされた、演者とスタッフの魂が乗り移ったくりぃむしちゅーさんの番組〈徳井健太の菩薩目線 第147回〉

2022.09.30 Vol.Web Original

 

“サイコ”の異名を持つ平成ノブシコブシ・徳井健太が、世の中のあらゆる事象を生温かい目で見通す連載企画「徳井健太の菩薩目線」。第147回目は、「ソウドリ解体新笑」について、独自の梵鐘を鳴らす――。

 くりぃむしちゅー有田(哲平)さんがMCを務める『賞金奪い合いネタバトル ソウドリ~SOUDORI~』。その中で、今年4月から「ソウドリ解体新笑」というコーナーを定期的にやらせていただいている。

 毎回、今まで明かされていない有田さんのお笑い年表を開いたり、有田さんの転機を窺えたり、ソウドリウォッチャーの私、徳井健太は恍惚の連続であります。ありがとうございます。

 8月末に放送された「ソウドリ解体新笑」も、とても熱くて、まぶしかった。くりぃむしちゅーのお二人が、どのようにして冠番組を手にしていったのか……その裏側を有田さんが明かしてくれたのだ。

 お二人にとって初となる冠番組は、『くりぃむナントカ』だったという。くりぃむさんは早くして売れたというイメージがあった。だから、2004年まで冠番組がないというのは、少し意外だった。

 転機となったのは『虎の門』。そこで出会ったのが、その後、『くりぃむナントカ』を立ち上げる藤井智久プロデューサー(当時)だ。 

 意気投合したくりぃむさんと藤井さんは、特番の冠番組『生くりぃむ』という生放送番組を仕掛ける。ところが、放送前日までくりぃむさんは、『ぷらちなロンドンブーツ』のロケでイタリアにいたらしく、最悪の事態に巻き込まれる。飛行機が欠航し、初めての特番、しかも生放送という大舞台を欠席することになってしまったのだ。想像するだけで、悲しいし悔しいし怖ろしい。

 あくまでイレギュラーなトラブル。くりぃむさんに非はない。しかも、同じテレビ朝日の『ぷらちなロンドンブーツ』のロケによるまさかの事態。「もう一回何かやりましょう」、そうテレ朝サイドから声を掛けられたそうだ。

 このチャンスに、くりぃむさんは、恩人である明石家さんまさんと一緒に何かできたらと提案したという。だけど、さんまさんは色々あってテレ朝には行けない。でも、「くりぃむしちゅーとは出たい」。そこでさんまさんは、MBSでやっているラジオにくりぃむさんを呼んでトークをし、その模様をテレ朝で流すというウルトラCを敢行した――。全員、愛。愛がなければ、できっこない。

 結果を出したくりぃむさんは、2004年に『くりぃむナントカ』を始めることになる。だけど、これで終わりじゃない。このお話は、大河ドラマだ。

 同番組は、「芸能界ビンカン選手権」や「長渕ファン王決定戦」など数々の名企画を生んだ名バラエティだ。当然、視聴率もファンも獲得した。となると、期待してしまう。4年後、『くりぃむナントカ』は、水曜19時台のゴールデン帯へ昇格することになる。

 ところがその当時、裏番組には絶対王者がいた。ヘキサゴン。お化け番組の壁は高く、返り討ちに遭った『くりぃむナントカ』は、半年で打ち切りになってしまった。

 藤井さんは、「判断ミスだった」とくりぃむさんに謝ってきたという。その席で藤井さんは、もう一回仕事をしたい、ゴールデンでくりぃむさんと仕事がしたいと伝えた。ちゃんと視聴率が獲れて面白い番組をゴールデンで作るから。それが当たれば、また深夜でお笑いに特化した番組ができるから、少しの間、我慢してくれ――。

『シルシルミシル』はこうして誕生したと、有田さんは笑って教えてくれた。その後、くりぃむさんは深夜帯で『ソフトくりぃむ』を開始する。背筋がゾクゾクした。

『ソフトくりぃむ』は、俺たち平成ノブシコブシが『ピカルの定理』に出ていた頃だったから、よく出演させてもらった番組の一つでもあった。当時の俺は、実力がないながらもできる限りのことはやっていたつもりだった。

 でも、有田さんから語られる大河を知って、くりぃむしちゅーさんと藤井さんの魂が乗り移った番組だったんだと、今さらながら理解した。「できる限りのことはやっていたつもりだった」は、言い訳だ。あのとき、もっと頑張れたんじゃないかと、有田さんの話を聞いて後悔した。『ソフトくりぃむ』は、まるで独立を勝ち取った小国が、 “列強何するものぞ”の精神で、死ぬ気でやっていた番組だったんだ。振り返ると、ヒリヒリした現場だったのには、道理があったんだ。

 深夜に生まれたくりぃむさんの冠番組は、いまは『くりぃむナンタラ』となり、今年4月からは毎週日曜日の21時55分から1時間番組になった。ゴールデン・プライムタイムに、巡り巡って舞い戻ってきた。

 テレビ番組は、演者とスタッフの魂によって生まれるものがある。俺が言うことじゃないだろうけど、ゲストとして登場する出演者は、その気持ちをちゃんと想わないといけない。有田さんの話を聞いた今、いっそうその気持ちを持って、皆さんの番組にお邪魔したいと、私、徳井健太は思っています。

テレビから聞こえてきた成田悠輔さんと呂布カルマさんのコメントに、背筋がピンとした〈徳井健太の菩薩目線 第146回〉

2022.09.20 Vol.web original

“サイコ”の異名を持つ平成ノブシコブシ・徳井健太が、世の中のあらゆる事象を生温かい目で見通す連載企画「徳井健太の菩薩目線」。第146回目は、AI時代のコメント力について、独自の梵鐘を鳴らす――。

『さんまのお笑い向上委員会』の陣内さんは、地球防衛軍のような存在〈徳井健太の菩薩目線 第145回〉

2022.09.10 Vol.web original

“サイコ”の異名を持つ平成ノブシコブシ・徳井健太が、世の中のあらゆる事象を生温かい目で見通す連載企画「徳井健太の菩薩目線」。第145回目は、「5年後の芸人ランキング」について、独自の梵鐘を鳴らす――。

『出張!徳井の考察』で垣間見た「周りを気にすることが増えた」若手芸人の世界〈徳井健太の菩薩目線 第144回〉

2022.08.30 Vol.web original

“サイコ”の異名を持つ平成ノブシコブシ・徳井健太が、世の中のあらゆる事象を生温かい目で見通す連載企画「徳井健太の菩薩目線」。第144回目は、若手を通じて感じた表現の見解について、独自の梵鐘を鳴らす――。

『ドキュメント72時間』、恵迪寮の“その後”を追って。そこは小さな国だった。〈徳井健太の菩薩目線 第143回〉

2022.08.21 Vol.web original

“サイコ”の異名を持つ平成ノブシコブシ・徳井健太が、世の中のあらゆる事象を生温かい目で見通す連載企画「徳井健太の菩薩目線」。第143回目は、北海道大学の恵迪寮について、独自の梵鐘を鳴らす――。

歴史は「古代」からではなく、「近現代」から教えた方がいいと思うんだけど〈徳井健太の菩薩目線 第142回〉

2022.08.10 Vol.web original

“サイコ”の異名を持つ平成ノブシコブシ・徳井健太が、世の中のあらゆる事象を生温かい目で見通す連載企画「徳井健太の菩薩目線」。第142回目は、歴史の教え方について、独自の梵鐘を鳴らす――。

大西ライオン無双 いつの間にかゴルフ界のアイドルになっていた〈徳井健太の菩薩目線 第141回〉

2022.07.30 Vol.web Original

“サイコ”の異名を持つ平成ノブシコブシ・徳井健太が、世の中のあらゆる事象を生温かい目で見通す連載企画「徳井健太の菩薩目線」。第 141 回目は、同期・大西ライオンについて、独自の梵鐘を鳴らす――。

麒麟の田村さん、若手の色彩わんだー、励まされる言葉って大切だよね〈徳井健太の菩薩目線 第140回〉

2022.07.20 Vol.web original

“サイコ”の異名を持つ平成ノブシコブシ・徳井健太が、世の中のあらゆる事象を生温かい目で見通す連載企画「徳井健太の菩薩目線」。第140回目は、励まされるメッセージについて、独自の梵鐘を鳴らす――。

百貨店ほど知見を高めてくれる利便性◎な場所はない! でも、そりゃないよ……〈徳井健太の菩薩目線 第139回〉

2022.07.10 Vol.web Original

“サイコ”の異名を持つ平成ノブシコブシ・徳井健太が、世の中のあらゆる事象を生温かい目で見通す連載企画「徳井健太の菩薩目線」。第139回目は、老舗百貨店の功罪について、独自の梵鐘を鳴らす――。

芸人をプレイヤーのままでいさせる『千鳥の鬼レンチャン』。だから、面白い。〈徳井健太の菩薩目線 第138回〉

2022.06.30 Vol.web Original

“サイコ”の異名を持つ平成ノブシコブシ・徳井健太が、世の中のあらゆる事象を生温かい目で見通す連載企画「徳井健太の菩薩目線」。第138回目は、『千鳥の鬼レンチャン』について、独自の梵鐘を鳴らす――。

芸人たちの打ち合わせ論、台本論。テレビの向こうのバカリズムさんから教わったこと。〈徳井健太の菩薩目線 第137回〉

2022.06.20 Vol.web Original

“サイコ”の異名を持つ平成ノブシコブシ・徳井健太が、世の中のあらゆる事象を生温かい目で見通す連載企画「徳井健太の菩薩目線」。第137回目は、台本について、独自の梵鐘を鳴らす――。

 いろんなテレビ番組がある。その数だけ台本がある。

 台本をどう紐解くか。おそらく、タレントや芸人によって、その解釈の仕方は、これまたいろいろあると思う。

 台本がある。ということは、打ち合わせもある。その台本を確認しながら、番組ディレクターなどがあれこれと文字通り“打ち合わせ”をする。

 徳井健太の場合。楽屋に入ると台本が置いてあるので、必ず目を通す。流れを確認し、自分なりの答えを出し、収録に臨む。けど、その前に、打ち合わせがある。

 台本を一言一句追っていくような打ち合わせをすることがある。でも、それはすでに読んだ内容だから、正直なところ、もっとプラスアルファのある打ち合わせの方がうれしかったりする。

 たとえば、流れをかいつまみながら、特定の箇所を説明し、「ここでこういう盛り上げ方ができませんか?」などなど。せっかく大人が向き合っているのだから、写経のように、ただただ台本の文字をなぞるだけの打ち合わせは、気持ちがどんどん「無」に近づいていってしまうというか。写経だったら、それでいいんだけど。

 そんなふうに考えていたある日、それって「凡庸だったんだ」と気が付いた。

『ワイドナショー』を見ていると、打ち合わせはいるか、いらないかみたいな話をしていた。タイムリー。

 出演者の多くが、やはり杓子定規な打ち合わせであれば、あまり意味はないのではないかといった論調に傾いていた。バラエティでは、台本通りに書いてあっても、そうならないことが多々ある。どうなるかわからないことについて打ち合わせをするのは、“たられば”の世界。だったら、実際にやったほうが早いよねって。

 ところが、バカリズムさんだけは違う視点を持っていた。「打ち合わせは必要」。なんでだろう。

 めちゃくちゃ面白い台本、それこそ笑いを前面に押し出したようなバラエティの台本があったとき。その打ち合わせをするディレクターが、もしも台本を一字一句読んでいくタイプ、ものすごく真面目なタイプだったら、どうなるだろう。一見、お笑い風の番組だけど、実はそんなにバラエティ的な要素は求められていないのではないかと疑う、そうバカリズムさんは話していた。

 たしかに、バラエティ番組といっても多種多様だ。情報系もあれば、ゲストに俳優さんがくるバラエティもある。台本を開くと、とても楽しそうで、お笑い色が強いんだろうなとわくわくする。情報系だけど台本が面白いんだったら、俺は芸人感を出して収録に臨もうと決める。だけど、バッサリとカットされるというのは珍しいことじゃない。

 その逆もある。情報がメインなのに、ボケた部分が意外に使われていてびっくりするなんてこともある。そういうケースを振り返ってみると、打ち合わせをするディレクターが、台本に書いてあることをあまりなぞらずに、余白を感じさせるような打ち合わせをしていたような。

 バカリズムさんは言う。台本の内容と実際に打ち合わせをする人物とのシンクロ具合が重要なのであって、それを見極めるために打ち合わせという場は必要だ、と。目からウロコ。レベルが高い人の考え方ってすごい。

 たくさんの番組に出させてもらうようになると、芸人である俺たちは、打ち合わせで「面白いことやりましょう。どんどんやってください」なんて言われる。意気揚々とオンエアのふたを開けると、バッサリいかれ、よくわからない反省タイムへ突入する。「何がいけなかったんだろう」。でも、それは良い、悪いの話というより、合う、合わないの話でしかなく、そんなことを繰り返しているうちに、人間不信よろしく打ち合わせ不信になってしまう。「どうせ話が違うんでしょ」なんて思ってしまって、結局、自分なりの答えを出して、収録に臨む。言い方を変えれば、個人プレー。それでもいいかなんて走っていた。

 でも、番組はたくさんの人間がいて、作られている。理想を言えば、どんな番組でもチームプレーを心がけたい。その気持ちをズレさせないために、打ち合わせという場を有効利用し、フォーカスを合わせる。バカリズムさん、勝手に勉強させていただきました。ありがとうございます。

 芸人たちの台本論。芸人たちの打ち合わせ論。面白いかもしれない。

 たとえば、極楽とんぼの加藤浩次さん。伝説のバラエティ番組『めちゃ×2イケてるッ!』は、毎回ものすごい厚みの台本があったそうだ。めくると、命を懸けて、寝る間も惜しんで書かれていたことがわかるくらい真剣な台本だったという。だから――。

 加藤さんは、命を懸けてぶっ壊しにいったと話していた。命を削って作った台本VS命を削ってぶっ壊しにいく芸人。その死闘の数々が、極楽とんぼの名シーンとしてカメラに収まっているんだと思う。本気同士が対峙するから壊せる。ちゃんとしたものがあるから、壊す行為にカタルシスが生まれる。

 バラエティの現場って面白い。本気になるために、打ち合わせって大事なんだ。 

Copyrighted Image