映画『星より静かに』の初日舞台挨拶が11日、都内にて行われ、君塚匠監督とキャスト、プロデューサーが登壇。自身もADHDと診断された君塚監督が本作に込めた思いを語った。
現在、日本には300万人の症状を持つ人がいるとされているADHDをテーマに、君塚監督が自らの実体験をもとに、ドキュメンタリーとドラマをミックスさせて描くオリジナル作品。
今回、監督・脚本・企画・出演まで担った君塚監督。「最初、この映画は個人的な映画としてスタートして、クラウドファンディングで低予算でというはずだったんですけど、私の熱量に賛同してくださる方が徐々に増えて、ついには商業映画として全国順次公開できる運びとなりました」と満席の客席に感激。
55歳でADHDと診断されたという君塚監督。「人様に迷惑をかけるような、ずっと生きづらさを感じていて。理解してくれる人も多いんですが、ときには差別的な面もあったりする。そういうことも含めて自分を表現したいと着手したんです」と振り返り「最初はADHDの人に向けた映画のつもりだったんですけど、ADHDじゃなくても生きづらさを感じている人ってもっとたくさんいると思うんです。そういう人たちに向けた映画として届いたらいいなと」。
この日は、監督の熱意を受け止めたキャストたちも登壇。ドラマパートで、ADHDである夫を演じた内浦純一は、監督と「デートのように(笑)」時間を共有しながら役作りをしていったと明かし「ADHDを知りたくて一緒に過ごさせていただいていたのが、だんだん、ただ監督と一緒にいるのが楽しくなってきて。ADHDって何なんだろうと。そういった思いも監督にお話しし演じました」、ADHDの特性を持つ青年を演じた三嶋健太も「学ぶうちに、何となく知っているというのは怖いことだなと思いました」と難役を振り返った。
支える家族側を演じた蜂丸明日香は「相手をADHDだからという意識を持たないつもりでも、大切な人を支えたいと言う思いが強くなるほど過保護な表現になってしまったり。優しさの形をすごく考えさせられました」。
同じく、渡辺真起子も「ADHDと名前がつくと先入観を持つこともあるかもしれないけど、名前がつくことで、その人のことをもっと考えてみようと思えることもある。他者と足並みをそろえなければならない生きづらさへの支えになったら」。
森重晃プロデューサーが「映画界なんて変なヤツがいっぱいいるから…(笑)」と冗談めかすと、渡辺が「本当ですよ。全部に名前をつけてもいいくらい」とクセものぞろいの映画界を引き合いにし、会場も大笑い。
そんなベテラン女優の渡辺に、君塚監督は「着替え部屋を用意できず車の中で着替えてもらった」と低予算の現場に恐縮。すると渡辺が「原っぱでも着替えますよ(笑)」と返し、さらなる笑いをさそっていた。
新宿K’s cinemaほかにて全国順次公開。