6月13日に告示される東京都議会議員選挙(22日投開票)が近づいてきた。前回の都議選がコロナ対策や東京五輪といった分かりやすい争点があったが、今回の選挙は物価高対策など横並びになりそうで、一票を誰に投じるのが良いのか決めるまでに時間がかかりそうだ。注目の候補である、現役ママ議員となった荒木ちはる都議(都民ファーストの会 現職)は、次の4年は「声なき声と届きにくい声に注目したい」と語る。
不妊治療を経てママ議員に!NICUでの経験を都政に反映
2017年に初当選。2021年に再選されるも、2期目は1年務めたあと参院選惜敗、小池都知事の秘書に。2024年補欠選挙に当選して都政に戻った。
「2期目は実現したい政策を多く予算化させていただきました。子育て支援であったり介護従事者の方々の処遇の改善であるとか、国でやらなければならないもので動いてないんですがこれらを動かしてきたと思っています。既に1期務めていた経験もあり政策実現もしやすく、区民の皆さんからの意見もいっぱいいただいての1年間でした。都政から離れていた2年間は小池都知事の秘書を務めつつ、不妊治療、そして出産・子育てもさせて頂いた2年間ででした。」
荒木議員が経験してきた子育ての2年間と、東京都で作り上げた出産や子育てに関わる施策とは重なる部分が大いにある。
「自分の経験を踏まえて、その2023年に卵子凍結に係る費用の助成の制度、東京都特定不妊治療費(先進医療)助成事業の制度を作らせていただきました。不妊治療をして40歳で妊娠、41歳で出産の高齢出産です。2カ月半の早産で、生まれた時の子どもの体重が886グラムで超低出生体重児。4カ月半、NICU(新生児集中治療室)に入っていました。都議に復活してからの1年は、NICUにいる赤ちゃんやそのご家族の支援を実現、予算化してきました。自分も当事者として同じような境遇のみなさんの声を集められましたし、それによって政策や予算を作りました。
自分の子もNICUで人工呼吸器をつけていた期間があったので医療的ケアのお子さんや重度心身障がい児の皆さんの思いも様々な政策につなげています。自分の経験を踏まえて、役所とも具体的な事例をもって交渉できるようになったのは相当の強みです。病児保育の新しい制度なども経験や想いをもって、本当に使いやすい制度に設計できたのではないかと思います」
都営地下鉄の「子育て応援スペース」は子どもがいない世代にも好評
利用者にとってはすでにおなじみの風景となったが、都営地下鉄の「子育て応援スペース」は初当選した荒木議員など都民ファーストの会が取り組んでいたものだ。
「都営のすべての線で「子育て応援スペース」が導入されていて、車両の一部にミッフィーや機関車トーマス、絵本のキャラクターなどの装飾をして、子どもを連れて、ベビーカーやベビーバギーで一緒に乗りやすい環境を作りました。ベビーカーやベビーバギーで電車に乗ると、ベビーカーをたため!って言われたり、舌打ちされたりという経験をされて、ベビーカーで子どもを連れてお出かけするのが嫌になってしまったという声をすごくたくさんいただいたんです。最初は難しいとのことで、女性専用車両ですら、いろんな批判が起きたから。でも私は、批判が起きたらいいじゃないって思ったんです。批判されたらされたほうがと思って」
都営地下鉄はあらゆる人たちが乗るので、子育てとは近しくないところにいる人の視界に「子育て応援スペース」が目に入ることで、もたらされるものは大きい。
「私は40歳まで独身で、毎日スーツで、国会に通い、都議会に仕事と家の往復のみのような生活で、よだれとかうんことか、おむつとかそんなものとは縁遠い生活をしてました。そういうなかで、地下鉄に乗った時、街を歩いていてもいいですが、そういう社会、生活があるんだってことを突きつけられること、そういう刺激を受けることは人間として大事だなと思うんです。
『子育て応援スペース』を設けたのは、もちろん子育てをしている方たちを支援したかったというのもありますが、社会で子育てしているんだということを広く伝えたかったというのもあります。社会には、大人も子どもも高齢者もいる。働いている人もいるし、子育て中の人もいれば、介護をしている人もいる。家族もいればシングルもいる。そういう人たちがみんないて社会が動いているんだよって、ひとつの形として表したかった」
なんでもパーソナライズされる世の中。自分好みの情報は入ってきても、自分が進んで寄っていかないものに触れられるのは地下鉄や会社のような公共の空間ならではのことにもなっている。
「30代だった私は結婚する気もないし子ども産む気持ちもなかったけれど、電車で子育ての状況を見て、そういうのもあるんだな、自分の人生ってどうするのか、など自分で判断したり、刺激や考える機会があることも悪いことではないかなと。産む産まない、結婚するしないとかは自由だけれど。『子育てスペース』は、アンケート調査をしてみたら、子どもがいない世代の方々からも好評なんです」