蜷川幸雄演出の舞台『ヴェニスの商人』で悪役を演じる

SPECIAL INTERVIEW 市川猿之助
蜷川幸雄演出・監修「彩の国シェイクスピア・シリーズ」の第28弾『ヴェニスの商人』が9月5日から上演される。主演は蜷川と3度目の顔合わせになる市川猿之助。前回の『じゃじゃ馬馴らし』では女形を演じた猿之助が、今回は悪役シャイロックに挑む。
 歌舞伎はもとより舞台、映像と活躍のフィールドを広げている市川猿之助と世界のNINAGAWAによる『ヴェニスの商人』。シェイクスピアの中でも分かりやすく、誰もがそのストーリーを知っている作品。過去タッグを組んだ前2つの蜷川作品では女形だった猿之助の初の悪役に注目が集まっている。さらに、すべての役をシェイクスピアの時代に倣って、男性キャストが演じる“オールメール・シリーズ”ということでも話題の舞台だ。

「蜷川さん演出の舞台は3度目ですね。1度目は歌舞伎、2度目はシェイクスピア・シリーズで女形、そして今回が男性の役です。最初から蜷川さんは僕には何も言ってくれなくて。何かやってよとか、自由にどうぞっていう感じでしたね。ただ、歌舞伎の『NINAGAWA 十二夜』は、見ていただいたお客様にすごく面白かったとよく言われたので、期せずして僕のそういう面を引き出してくれたのかなと思いました。今回は悪役なので、とても面白いですね。二枚目とかいい人は演じていてつまらない。悪い奴とかちょっと狂気的な役のほうが絶対におもしろい。正義の味方って演技のしどころがないから。大河ドラマ以降、民放のドラマでは、殺人犯とか癖のある刑事とか変な役が多かったので、楽しいです」

 歌舞伎もシェイクスピアも古典という共通点がある。
「蜷川さんともお話したことがあるんですけど、作品の持つ重さというのが、普通の芝居をやるより古典をやるほうがずっしりと感じられます。どっと疲れがでるというか。生半可なセリフの言い方じゃだめだし、歌うように朗々と言わなきゃけない。あと、無駄なセリフがないから、全部が大事なので、全部声を張って言わなきゃいけないとか。歌舞伎もシェイクスピアもそういう古典としての大変さはあると思いますね。でもそういうところが似ているから逆に僕はやりやすいというのもあります」

 中村倫也、横田栄司、高橋克実ら個性派俳優との共演も楽しみだが、稽古中に驚かれたことがあるとか。
「みなさん素晴らしい役者さんですが、僕と芝居をしていて、戸惑っているんじゃないかな。毎日違う芝居をするし、セリフもいい加減だし(笑)。この間もセリフの語尾を変えちゃって、次の人が困っていました。悪いなと思うんですけど、本番まであと10日もあると思うと…。これを言うとすごく驚かれるんですけど、歌舞伎は1日が初日だったら、稽古は5日前くらいから始まるんです。歌舞伎以外の舞台では稽古期間が1カ月ぐらいというのは普通だから、お互いにカルチャーショックですよ。ですから僕はこの1カ月って、チームワークを作る期間でもあると思っています。初めましての人と2〜3日ですぐに芝居は作れません。歌舞伎は生まれた時から同じメンバーだから、相手が何をやりたいか、どう動くかが大体分かるけど、初めての人は分からない。そのへんが分かるための1カ月の稽古なんだなって思います。今回の舞台もチームワークはいいですよ。お互い裏では何を考えているのか知りませんけど(笑)」

 歌舞伎興行の合間に、ほかの舞台や映像などの仕事をこなす猿之助。1カ月休みが取れたらやってみたい事は。
「海外逃亡(笑)。全く連絡がつかないところに行きたい。まず携帯電話を壊すか、すごく親しい人だけしか知らない携帯電話を持って着の身着のまま、放浪する。隙間産業でテトリスみたいに仕事が入ってくるので、仕事が入ってこなければどこでもいいです。とにかく自由な時間が欲しいですね。一番行きたいところ…歯医者かな(笑)」
(本紙・水野陽子)
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ヴェニスの商人
【公演期間】9月5日(木)〜22日(日)【会場】彩の国さいたま芸術劇場大ホール【問い合わせ】彩の国さいたま芸術劇場 TEL:0570-064-939
※広島、北九州、兵庫公演あり