SPECIAL INTERVIEW 小日向文世 × 段田安則 × 風間杜夫

三谷幸喜作・演出『国民の映画』が待望の再演決定!
 2012年数々の演劇賞に輝いた三谷幸喜の『国民の映画』がパルコ劇場40周年記念公演として、2月8日から上演される。同作品で第19回読売演劇大賞最優秀男優賞を受賞した小日向文世はじめ、初演に続き出演する段田安則、風間杜夫があらためて作品の魅力を語る。
撮影:宮上晃一
 三谷幸喜が1940年代のドイツ・ベルリンを舞台に、芸術と権力の狭間で葛藤する人々の群像劇を描き、話題となった舞台『国民の映画』。再演とあって、稽古は順調に進んでいるようで…。

小日向(以下、小)「初演の時のことを思えば、かなり順調ですよね。初演ではこの段階でまだ2幕ができていなかったけど、この前2幕をやって一応ラストまでできましたから」

風間(以下、風)「そうそう、4日後には通しでしょ?」

小「本番の1週間以上前に通しができるなんて夢のよう(笑)」

風「稽古しなくてもよくない? これ以上やってもね、なんにも出てこないよ(笑)」

段田(以下、段)「あとは毎日終わったら飲むだけですか?」

風「そう。ちょこちょこって稽古やってすぐ飲みにね(笑)」

小「この余裕、初演と全然違うな。前回は実質4週間の稽古だったんですけど、よくできたなという感じでした。お二人は知っていると思うけど、僕はプレビュー公演から、昼と夜の公演の間に出るお弁当が全然食べられなかった。みんなは食べているのに、台本にかじりついて…。その時、風間さんが“あまりそういうふうに思わないほうがいいよ。思うとそうなっちゃうから”って言ってくれて。でも結局そうなったけど(笑)」

段「どうなったの?」

小「2回も白くなったじゃない」

段「ああ、白くね(笑)。セリフがとんで2分ぐらい黙ってましたっけ?」

小「そんなに長くないけど。プロパガンダっていう言葉が出てこなかった。ちょうど段田さんと向き合って言うところだったんだけど、プロパガンダの“プ”が出ないの」

風「プさえ出りゃね(笑)」

小「もう本当に地獄でした。1回目は袖に戻って台本を見に行こうと思ったんだけど、間をもたせるためにゆっくり一回りしたら、ちょうど客席を見たときに“プ”が出て、プロパガンダが言えた。2回目は段田さんが気をきかせて僕を怒鳴り始めて、その中でプロパガンダっていう言葉を言ってくれたらしいんですけど、気がつかなくて。でも結局出たんだよね」

段「出ましたね(笑)。自分が忘れたのは分からないけど、人が忘れたのは分かるからね」

風「でも助けようがない」

段「そうなんですよ」

小「あとで聞いたら完全に目が泳いでたって(笑)。ヤニングス(風間)が一幕で入ってきてセリフを言うところも、めちゃくちゃ緊張して。風間さんのセリフに食い気味にセリフを被せたり、よく噛んでいたりしました」

 同じ役で二度目の顔合わせということで、前回の舞台の話で盛り上がる3人。2011年の初演時は、本公演の幕を開けた直後に東日本大震災に見舞われながらも公演を続けたという。同作品の再演が決まった時はどんな心境だったのか。

小「再演の話を最初に聞いたときはゾッとしました(笑)。前回は神奈川が最終公演だったんですが、その時にプロデューサーから再演を考えているって聞いたときはもう…」

段「断ろうと思わなかったの?」

小「うん…でも正直やりたくないって思った。セリフは多少多かったけど、それより風間さんや段田さんをはじめ、そうそうたるメンバーを前にして僕が演説するっていうシチュエーションが初演のときは耐えられなかった。シリアスな芝居だから客席はシーンとしているし、針のむしろってこのことだなって。拷問ですよ、拷問(笑)。笑える芝居でお客さんが盛り上がっていたらいいんだけど、頭がよくて偉そうにしているのに、噛んじゃうからさらに焦る」

風「僕はめちゃくちゃ楽しかった。だから再演の話もすごくうれしかったですね。初演の時は、3.11の渦中でしたから、来たくても来られなかったお客さんもたくさんいたし。だからまたやれるのはうれしかった。だっていい作品だもん」

小「そうですよね。前回チケットを取ったのに来られなかった方や、今回来ていただく方のことを思うと、あの舞台をもう一度できることはうれしいことですね」

風「三谷さんもそういう思いだと思いますよ。大勢の人に見ていただきたい、そういうお芝居だと思います」

小「再演の良さって、同じメンバーでやると練り直せるから、さらに高みに上がっていけるというのがありますよね」

風「うん。僕の経験だけどクオリティーはあがります。一度お客様の前でやっているから、役者はいろいろ気づく。体で覚えたこともたくさんあるから、すごく進化していると思います」
段「自分の進化感じます?」

風「自分は大したことない(笑)」

 小日向は舞台や映像で三谷作品によく出演しているが、意外にも段田と風間はこれまでそんなに接点がなかったとか。

風「三谷さんの舞台は始めてですね。映像でも『古畑任三郎』に1回犯人役で出たぐらい」

段「僕も舞台はこれが最初です。映像ではテレビドラマの 『振り返れば奴がいる』にちょっと出ましたけど、その時は三谷さんの脚本だって知らなかった(笑)」

風「井上ひさしさんも膨大な資料と格闘しながら歴史的な人間を書き上げる作家ですが、三谷さんもこの作品を書き上げたっていうのは、相当の労力があったんだと思います。いろいろな映画人が登場しますからね。しかもそれらの人たちの作品も全部DVDを見たようですし、すごい方だと思います」

小「下準備をどれだけしているのか。でも、そんなに家にこもってやっている印象はないんですよ。子どものころから興味があったものをずっと積み上げていて、じゃ今度はこれをやろうって引っ張り出している感じ。それこそ、映画の『清須会議』とかもそう。小学生か中学生の時に、清須会議って面白いって思ったって言うんだから。僕なんて清須会議って言葉自体この前初めて聞いた(笑)」

段「それぞれの人について綿密に調べているから、全部の役に思い入れがありますよね。どの人物も丁寧に書かれている。全部の役に話を持たせるのは、きっと優しいからだと思います。だからちょっと長くなるんでしょうけど(笑)」

小「あと、基本的に現場が大好きな人ですよね。自分が書いたものは、役者のそばにいて、一人一人自分のイメージを伝えたいと思うから、現場にずっといるのが好きなんだと思います。だから僕は三谷さんに人物像を聞いて、それに沿っていこうって思っていますね。僕がやりたいことがあったら、三谷さんの言った事とすりあわせてみて、最終的に軌道修正されたらその通りにしようと。三谷さんが喜んでくれるならそれがいいやという感じです」

 同舞台は2月8日の東京を皮切りに、大阪、愛知、福岡で公演が行われる。

段「地方公演もありますが、ステージ数で言ったら前回より少ないですよね」

小「うん。三谷さんの芝居って人気だから、長いんですよね。以前やった『彦馬が行く』っていうお芝居なんか90ステージぐらいありましたから。もう吐きそうでしたよ(笑)」

段「連続で? すごいな」

小「そうですよ。もう飽きた、飽きた(笑)」

段「それは飽きますよね」

風「僕は飽きるっていうのがよく分からないんだよね。逆にいつも楽日近くになると、もう少しで終わっちゃうんだって寂しくなる」

小「風間さんってすごいと思う。お芝居が本当に好きですよね。でも全然飽きないんですか?」

風「うん。それで楽日を迎えて、みんなで打ち上げやって、3日後には忘れてる」

小・段(爆笑)

風「そこは薄情なの。そうしないと次にいけないっていうのはあるけど、あれほど別れるのが辛いとか言っていたのにって(笑)。多分女性にもそんな感じかな、案外冷たかったりして(笑)。でも真面目な話、稽古も含めて、みんなと過ごした時間が終わっちゃうのが寂しいんですよね。このお芝居の初演の時は、3.11が起きて、日本中が混乱してるからお客さんも入らなくて。でもそれから大阪にも行って…って、いろんな思い出がある。それがいよいよ幕を閉じちゃうんだなって」

小「そういうふうに思えるのは余裕があるからですよね。僕は全然なかったもん」

段「じゃ、終わった時はほっとした?」

小「ほっとしたどころじゃないよ。あの時は役者をこれ以上続けられないかもしれないと思ったぐらい。映像はなんとかなっても、舞台には立てなくなるかもしれないってギリギリの精神状態でした。ところで段田さんは飽きない?」

段「僕、すぐ飽きるんです(笑)。以前は飽きると微妙に自分の中でタイミングを変えたりしていましたが、最近は同じことをやるのが楽しくなってきた。40を過ぎてから、毎日同じことをして、同じセリフを言って、同じ感情に流れていくのが楽しいですね。女性に関しては風間先輩を見習って飽きないでいきたいと思いますけど(笑)」

小「ところで風間さんは演じる時に、どういう気持ちでやっているんですか? というのは、風間さんは落語もやられていて、それってお芝居より怖いじゃないですか。1人対何百人だから。そういう状況で怖さとか感じませんか?」

風「誰かに言われたんだけど、お客様が100人いたとして、その全員に分かってもらおうというのは所詮無理なんだと。それぞれ感情も思考も違うし、俺のことを嫌いだと思っている人もいるかも知れない。だから、誰か一人対象を決めて、その人に見せるつもりでやってます。それは例えば死んだおふくろとか、必ずしもそこに本当にいる必要はない」

小「そうなんですか。いいこと聞いたな。全員に賛同してもらうんじゃなくて、誰かに絞ればいいんだ」

風「その人のためだけに演じると案外それが全体に伝わることはあるんだよね」

小「じゃ、再演のこの芝居は誰を思います?」

風「具体的には言えませんが今一番愛おしく思っている人かな」

段「孫!」

風「孫はまだ3カ月だから分からない(笑)。キザなようだけど、この年になると知り合いで亡くなる方もいるんですよ。同級生とか恩師のつかこうへいさんとか。そういう心にある人のためっていう時もありますよね」

小「いいですね。僕は、死んだ親父かな。高校時代ずっと劣等生で、卒業後も転々といろんなことをやって、最後に役者をやるって言った時に、やるからには黒澤組の志村喬さんのような俳優になりなさいって後押ししてくれたんです。その親父に向けて今回はやってみようかな」

段「僕は別にいないんだけど…」

風「猫3匹と亀がいるじゃない(笑)」

段「それはちょっと(笑)。じゃ、その日来てくださるお客さん一人一人に向けてやります。パルコ劇場が400人入るとして、半分よりちょっと多い人が、段田も頑張ってるなって思ってくれれば」
風「250人に向けて」

段「もうちょっと…253人で(笑)」

小「そうですよね。誰か一人を思いながら、来てくれたお客さんに向かってね。でも、そう思ってもやっぱり怖いよね(笑)」
(本紙・水野陽子)
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『国民の映画』公演
【公演日程】東京:2月8日(土)〜3月9日(日)
【会場】パルコ劇場
【入場料金】9450円(全席指定・税込)、大阪:3月13日(木)〜16日(日)
【会場】森ノ宮ピロティホール
【入場料金】9500円(全席指定・税込)、愛知:3月21日(金・祝)〜23日(日)
【会場】刈谷市総合文化センター 大ホール
【入場料金】S席9500円、A席7500円(全席指定・税込)、福岡:4月4日(金)〜6日(日)
【会場】福岡市民会館 大ホール
【入場料金】9500円(全席指定・税込)
【問い合わせ】パルコ劇場 TEL:03-3477-5858、http://www.parco-play.com/web/program/kokuminnoeiga2014/http://www.parco-play.com/web/program/kokuminnoeiga2014/