「37年前のトリックが今も読者を驚かせる理由」実写ドラマHuluオリジナル「十角館の殺人」主演・奥 智哉と原作・綾辻行人が語る

日本のミステリー界を代表する作家・綾辻行人が1987年、26歳で発表したデビュー作『十角館の殺人』。タイム誌が選ぶ〈史上最高のミステリー&スリラー本〉オールタイム・ベスト100に選出され、小説ならではの驚きのトリックにより長らく実写化不可能と言われてきた同作がついに映像化。Huluオリジナル「十角館の殺人」として3月22日より独占配信。原作者・綾辻氏と、主人公・江南(かわみなみ)孝明を演じた奥 智哉が、デビューから37年を迎える今も“傑作”とされ続ける原作の魅力とドラマの見どころを語る!

撮影・上岸卓史 【奥 智哉】ヘアメイク・岩下倫之 スタイリスト・カワセ136

原作者・綾辻行人も太鼓判「これは幸せな映像化」

 K大学ミステリ研究会に所属する大学生たちが向かった合宿先は、とある孤島にある“十角館”と呼ばれる館。そこは、かつて謎の殺人事件が起きたいわくつきの島だった。そんな中、ミス研を退部し合宿に参加していなかった江南孝明(演・奥 智哉)のもとに奇妙な手紙が届く。島にいるメンバーたちを案じた江南は、偶然知り合った男・島田 潔(演・青木崇高)とともに手紙、そして館の謎を追っていく…。

奥 智哉(以下:奥)「僕も、映像化不可能と言われた“あのトリック”が映像でどう表現されるのか、ずっと気になっていたんです。でも何も知らずに見た方が、種明かしされるまで気づかなかったとおっしゃっていて、本当にうれしかったです。これって大成功したんじゃないかな、と(笑)」

綾辻行人(以下:綾辻)「演じる側の役者さんも、そういうところを楽しみにしてくれるんですね。僕と同じように、仕掛ける側の気持ちを皆さんが持っていてくれてたならうれしいです」

奥「もちろんすごく楽しみです! 原作を読んだときのあの衝撃を、絶対にこのドラマでも伝えたいと思っていましたから」

綾辻「トリックの種明かし、そんなに驚きました(笑)?」

奥「メチャメチャ驚きました! 1ミリも疑っていなかったので(笑)。ドラマでもトリックの描き方に成功したんじゃないかと思いますし、完成作も本当に面白くて」

綾辻「僕もこれは幸せな映像化だな、と思いました。ただ、僕が書いた台詞をほとんどそのまま使ってくれているので、気恥ずかしい部分もありましたね(笑)。原作を書いたのは僕が26歳の時。江南やサークルのメンバーたちと同年代でした。そんな若いころに書いた台詞を役者さんが実際に話しているのを見ると気恥ずかしくて…“もっと変えてくれてもいいのに!”って(笑)。でも、見ているうちに慣れてきて、そうそう、このときこんな感じをイメージしながら書いてたんだよな…といろいろ思い出しました。十角館でサークルのメンバーたちがパニックになるシーンなども、僕が思い描いていたものが良い具合に再現されていてね。37年も前に書いた作品ということもあってか、わりと客観的に“なるほど、よくできている”と楽しめました」

奥「そうおっしゃっていただけると本当にうれしいです」

綾辻「でも‘86年が舞台というのは、どうでしたか? 奥さんたちからすると生まれる前でしょう?  今では、若者がタバコを吸うシーンが出てくる作品なんて珍しいですもんね(笑)」

奥「確かに十角館内の登場人物たちがタバコを吸うシーンが多くて珍しいなと思いました。十角館のセットや小道具もすごかったです。十角形のマグカップもそうだし、照明も十角形のデザインになっていたり、いたるところが十角形のモチーフになっていて」

綾辻「力が入ってましたよね。あのセットは原作よりも十角形の小物が増えている。そう気づいて僕も製作陣の本気を感じました」

奥「その十角形にまつわるトリックも楽しみにしてほしいです。原作をすでに読んでいるファンの方でも、映像を見たら“これは分からない!”と納得すると思います(笑)」

綾辻「人間って、見ているようで見ていないんです。僕も、それを狙ってあのトリックを考えたんですけど、ドラマを見て自分のアイデアは正しかったな、と改めて思いました。当時も自分で図を書いて検証したんですけど。映像で再確認できました」

奥「あれらのトリックを僕らと同年代で思いついたんですよね、すご過ぎる…。小説を書くときのトリックって、いつ考えていらっしゃるんですか? ふっと思いついたりするものですか?」

綾辻「若いころは常に考えていました。まあ今も、そうではあるんですけど。いつも今書いている作品のことや次の作品のことを考えているんです。ずっと一生懸命に思考しているというより、ミステリーのアンテナが常に張られているという感じでしょうか。どこに行っても、そのアンテナが立っていて“あ、これ使えるかも”と、アイデアのネタを収集している気がします。その結果として、あるときふとトリックを思いつく、という感じでしょうか。場面でいうと、編集者や作家仲間、あとはうちの妻の小野不由美も作家をやっているので、話しているときにいろいろ刺激を受けてアイデアが出てくるということが多いです。それを、小説のなかでどう使おうかと1人で練りこんでいくという感じです」

奥「そうなんですね、常にアンテナが…!」

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