誰よりも”丁寧に”スーツを着こなす男に成長!
映画『繕い裁つ人』 三浦貴大

『RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語』でのデビュー以来着実に存在感を増し今年は主演の『サムライフ』をはじめ出演作が続々公開。今年、特に注目したい俳優・三浦貴大を直撃!
「本当は、服やファッションにほとんど関心がなかったんです」。そう苦笑しながらも、目の前の彼は完璧にスーツを着こなしている。なにしろ今年最初の公開作『繕い裁つ人』で演じているのが、スーツも完璧に着こなす男。同作は『しあわせのパン』の三島有紀子監督が“服と人”をテーマに、仕事への情熱を静かに燃やす女性仕立て屋の姿を描いた作品。三浦が演じるのは中谷美紀演じる仕立て屋・市江の仕事に心奪われる青年・藤井。

「僕が演じた藤井は、オシャレな人というか、大手の百貨店で服を売っている人間なので、服にすごく興味を持っていて、自分の服装も常にきちんとしている…という、自分の中に全く要素が無い役でした(笑)。そこが面白くもあり難しいところでもありましたね。オシャレさの度合いでいうと、藤井が“10”なら僕は“2”くらいでしょうね(笑)。最近はスーツを着る役も増えたんですけど、着なれていないと違和感があります。僕は学生時代にスポーツをやっていて、大学にもスウェット姿で通っていたし、そもそもジーンズを履いているだけで“今日は東京に行くのか?”となるような田舎だったので(笑)、スーツを着るなんて一大イベントだったんです。確かに着ると気持ちはシャキッとするんですけど、身体はガチガチ(笑)。着なれてないとダメだなあと思いました。少し姿勢を崩すとシワになるんじゃないかと、身動きもろくにできなくて(笑)」

 スーツ姿のりりしさは、スポーツ経験者だからこそ、かも。

「みなさんからスーツが似合うと言っていただきましたが今でこそ…ですね。実際にスポーツをやっていたときには、そもそも体に合う服がありませんでしたから(笑)。二の腕なんて40センチくらいあったのでスーツを着ると、ちょっと腕を上げたら袖が戻ってこない(笑)。筋肉が落ちてきて、やっといろいろと服を着られるようになったんです。俺が着られる服なんてない、と思ったのがファッションが苦手になった理由なんですよ。市江さんのような仕立て屋に出会えていれば…(笑)」

 市江が守り続ける“一生ものの服”は、人々の人生を彩る。役者・三浦貴大にとって“服”とは…。

「衣装に助けられることは多いです。実際に衣装を着てみて監督が衣装に指示を出す言葉から、まず外見だけでも監督がどんなイメージを持っているかが分かるので、そこから役作りもしていきます。それに何といっても役に合った衣装を着れば、その気持ちが沸いてくるんですよね。農作業着を着れば“俺は農家だ…”という気持ちになりますし(笑)、今回はスーツを着たことで藤井のきちっとした感じをつかんだと思います。おそらく休日の藤井はスウェット姿じゃないうえに、書店で服に関する本をあさったり他のお店に出かけて“あのデザイナーの服か…”とかチェックしているでしょう(笑)」

 藤井しかり市江しかり、こだわりを持って生きている。そんな姿がまた人間味にあふれ魅力的だ。

「寝癖頭にパジャマという、普段とのギャップも市江さんの魅力なんですけど、でも外の人には決してそれを見せないんです。市江さんが手掛けるのは“夢を見る服”だから。そういう気持ちは僕も近いものがあります。僕自身も、実のところメディアで自分自身をあまり語りたくない部分があって。役者にとって役以外のイメージは邪魔というか、映画を見て“三浦貴大が藤井をやっているんだ”と思われた瞬間に負けだと思っているんです。自分の名前なんてどうでもよくて、その人物としてそこにいれば、それでいい。もちろん取材をしてもらうのはありがたいですし話もさせてもらいたいんですけど、自分自身のことはあまり見てほしくない…みたいな矛盾した気持ちがありますね(笑)」

“頑固”も魅力となる生き方がある。

「頑固というのはこだわりを持っているということだから、悪いことばかりでもないと思うんです。僕の周りだと…ウチのオヤジ(三浦友和)とか(笑)。映画監督も、基本的にみな頑固ですよね。ただ三島監督の頑固さは、言われたみんなが納得できるものなんです。三島監督には市江さんと通じるものを感じます。そういう意味では、中谷さんも市江さんにかなり近いですね。三島監督が撮り中谷さんが演じたから、市江さんの生き様が本当に素敵に映っているんだと思います」

 自分の人生や仕事を丁寧に愛情を持って接している人たちの映画です、とまた一つ丁寧に仕事を終え充実の表情。スポーツマンからスーツまで、今後も役幅を広げていくに違いない。(本紙・秋吉布由子)
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『繕い裁つ人』
監督:三島有紀子 出演:中谷美紀、三浦貴大、片桐はいり、黒木華、余貴美子他/1時間44分/ギャガ配給/1月31日より新宿ピカデリー他にて公開
http://tsukuroi.gaga.ne.jp/http://tsukuroi.gaga.ne.jp/
©2015 池辺葵/講談社・「繕い裁つ人」製作委員会