「お金のミライは僕たちが決める」の著者・我妻弘崇が掲げる可処分時間とは?

「お金のミライは僕たちが決める」を記した我妻弘崇氏は本の中で「ポイントを可処分所得とみる」と同時にキャッシュレス決済で短縮される時間を「可処分時間」と名付け、その有効利用にも言及する。そして今後やってくるキャッシュレス社会においては利便性がものをいい、それを決めるのは消費者であるという。

「お金のミライは僕たちが決める」の著者・我妻弘崇氏

 まずは今回の本を書こうと思ったきっかけは?
「海外でお金にまつわる体験をいろいろしてきたことで、日本と他国の支払い方などに違いがあるということが気になったのがそもそもの動機でした」

 ポイントを可処分所得と考えるという考え方は?
「あまりにも至るところでクレジットカード決済ができるようになって、今までだったら陸マイラーといわれていた通り、意識的にためなければいけなかったはずのポイントが無意識でもたまるように変わっていった。どこでもポイントが増えていくと考えた時に、これはポイントという概念で考えないほうがいいのではないかと考えました。どこで買い物をしてもたまっていく。なおかつポイントがECサイトなどで決済に使えるということは限りなく現金化しているということ。現金に限りなく等しいポイントがどんどん増えていっている時代なのであれば、これは所得、財産として考えたほうがいいのではないかということで可処分所得という言葉にたどり着きました」

 日本は少額でのクレジットカードの使用に抵抗のある人が多く、完全なキャッシュレス社会にはなり切れていない。
「ところが2016年、アップルがApple Payを導入してiPhoneでもキャッシュレス決済ができるようになった。以前は、コンビニでわざわざこの額にカードを出すということが面倒だし恥ずかしい。スキミングの恐れもあって怖いということが、モバイルを介したクレカ決済によりすべて解消された。ということは、これからの我々の決済やお金の管理などは必ずモバイルを通じて行われることになるはずだと思いました。モバイルはまさに僕らの手の中にあるもの。そういう意味でも、『お金のミライは僕たちが決める』というタイトルと合致していると思います」

「可処分時間」というのはどういう意味?
「列に並んで切符を買う手間が、SuicaやPASMOの誕生によって無くなり、便利かつ時間も短縮して電車に乗れるようになりました。あれと全く同じ現象が決済の場でも起きている。つまりモバイル決済、キャッシュレス決済に対応するということは、そういう無駄な時間もこれからはなくなり、時間すらも我々は買うことのできる時代になっているということなんです」

 列に並ぶ、お金を取り出し払う、お釣りをもらう。これを些細な時間と考えるか、塵も積もれば山となると考えるか。
「日本人は平均するとコンビニに年間100〜120回足を運ぶそうです。これは平均なので、都会の人だったら余裕で200回は超えると思うんです。レジに並び、いざ順番になって支払いをするのにトータルで1分半とかかかるとした場合、200回通っている人は年間200分以上をレジの前で時間を消費していることになる。今はモバイルで動画コンテンツや動画ニュースといったミニマムなコンテンツがたくさんある。ツイッターを眺めるだけでもいいと思うんですが、浮いた200分をそういうコンテンツを見る時間に充てるとしたら、どれだけ非生産的な時間を生産的な時間に替えることができるのかなと思うんです。これが昔のようにミクロなコンテンツがない時代だったら些細な時間かもしれないが、今はそういうコンテンツがあふれているから、ここで削った30秒、1分はバカにできないものになります。将来的には可処分時間を意識したコンテンツがより増えてくるのではないかと思っています」

 まだ日本はクレジットカードが主流の時代が続く?
「クレジットカード一強時代が続くと、手数料の問題で店舗の首が回らなくなる時がいずれ訪れる。そうなったときには必ず、1度見直さなければ、という話になる。なので、今はクレジットカードでポイントを稼げるかもしれないけど、この後の保障はない。今だけのボーナスステージだからこそ、モバイルの使い方を知って、なおかつお得にポイント、可処分所得と可処分時間を増やしましょう、ということ。この先は分からないというのは店舗サイドの話に加え、決済手段が増えている、つまりユーザーが多岐にわたって支払い方を選べる時代が到来したからとも言えます。例えば、国際ブランドであるVISAやJCBが、銀行と提携して発行するブランドデビットカードは面白い存在。アメリカではデビットカードを使ったお小遣いアプリがあって、お母さんがアプリを介してお小遣いを管理するサービスがあります。日本でも若い世代がモバイルを使いこなすことで、その層だけに浸透するお金のかたちがあるはずです。高齢者、インバウンド、ビジネスパーソン、若年層……世代や職種によって決済方法やお金の管理、お金のあり方が変わろうとしている。同時に、我々はそれを選べる立場にあるというわけです」

 可処分所得の話に戻りますが、今後ポイントがなくなるという可能性は?
「ポイントはもともと企業の囲い込みのためのものだったんですが、今はそこから離れて、企業とユーザーの立場が逆転しているといってもいいでしょう。なくなる可能性だけでなく、ポイントが課税対象になる未来もあるかもしれない。そこには国や法律という大きな壁が介在する。国vsお店vsユーザーという三つ巴の駆け引きが今後行われていく可能性もある。我々消費者が声を大にして自分の決済方法を唱えていかないと企業主体、国主体で推進されてしまう。我々消費者が新しいサービスを選んできたように、そういった選択がお金の世界でも起き始めている。もはやお金は単なる支払い手段ではなく、副次的に経験や価値を生み出すものへと変化している。新しいお金との付き合い方が問われているからこそ、僕たちの返答次第でお金のあり方も変わってくると思います」

「お金のミライは僕たちが決める」【著者】我妻弘崇【定価】960円(税別)【発行】星海社