内閣不信任決議案否決も菅首相退陣へ

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 自民、公明、たちあがれ日本の各党は1日、衆院に内閣不信任決議案を共同提出。2日午後の衆院本会議で採決が行われたが賛成152票、反対293票で否決された。棄権は33票だった。

 間一髪で民主党の分裂が回避されたと言うことか。

 6月に入って政局は大きく動いた。1日に菅直人首相と自民党の谷垣禎一総裁、公明党の山口那津男代表による党首討論(国家基本政策委員会合同審査会)が東日本大震災後初めて開催された。

 この党首討論後の内閣不信任決議案提出を目指す谷垣氏と山口氏は、首相の政策や理念よりも根本的な資質問題と人間性を激しく追及した。

 谷垣氏は「結局、何でいろんな問題が進まないか。あなたの不徳と力量のなさが政治空白を生んでいる」と首相の「徳と力量」の欠如を訴えた。

 山口氏は「震災対応があまりに遅い。やる気を疑う。首相は原発事故の収束にばかり関心がいって、他のことが人ごとのように聞こえる」と指摘し、首相に退陣を求めた。

 そして不信任決議案を提出。共産、社民両党が棄権を表明したためこの時点で可決に必要な過半数は232票となった。

 1日夜に行われた小沢グループの会合には衆院議員71人が出席。小沢氏は「皆さんが決断したことに敬意を表する。今の政権は必ずしも政治家が責任を取る態勢を取っていない。国民のための生活を実現する決意で行動する」と宣言。都内で記者団に、「国民が支持してくれた本来の民主党のあり方に戻さなければならない」と述べ、内閣不信任決議案に賛成する意向を表明。鳩山由紀夫前首相も同日夜に自らのグループの幹部会合を開くなど対応を最終調整し、自主投票を決めた。鳩山氏自らは記者団に不信任決議案に「賛成する」と明言した。

 民主党から「82人」が賛成に回れば可決されるというなか、欠席者が出ることも予想され、どちらに転ぶかは全く予想のつかない状況となった。

 可決された場合、解散するにしても総辞職するにしても政治空白ができてしまう。否決の場合でも党の分裂は免れない。

 しかし2日になって状況が変化する。まず午前に菅首相と会談した国民新党の亀井静香代表が「東日本大震災、東京電力福島第1原発事故対応が済んだら辞任してほしい」と退陣表明を求めた。そして正午から開かれる民主党の代議士会に先立って菅首相と鳩山由紀夫前首相が会談。鳩山氏の「2次補正予算にメドをつけた段階で身を捨ててもらいたい」との提案を受け入れ、菅首相が代議士会で、震災対応に一定のメドがついた段階で自発的に退陣する意向を示した。

 これを受け、賛成の予定だった小沢グループは直前になって自主投票に方向転換し、一致して反対することになった。しかし小沢氏は欠席し、小沢氏に近いとされる松木謙公・元農水政務官は賛成票を投じた。鳩山氏は反対に転じた。また原口一博元総務相は「民主党内で一定の解決をみた」として反対に回った。

 しかし「一定のメド」というのはいつのことなのかは明言しておらず、野党側から「茶番だ」という声が相次いだ。伝家の宝刀である不信任案が抜かれてしまった以上、またズルズルと菅首相が総理の座に座り続ける可能性も否定できない。

 今回の内閣不信任決議案といい、前週の海水注入中断問題といい国会では無駄な時間だけが流れていく。

 党の分裂は回避したように見える民主党だが、欠席した小沢氏の処遇はどうなるのか。

 小沢氏は不信任決議案提出前に、周辺議員に党を除名された場合、「新党をつくる」と述べるなど不退転の決意を示していた。また5月31日には鳩山邦夫元総務相による小沢氏と実兄の由紀夫氏との連携も視野に入れた新党構想も浮上している。

 今後もポスト菅、小沢氏の動向など、被災者をそっちのけの政治ショーが展開されるのか…。