長島昭久のリアリズム 第三回

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エネルギー政策のリアリズム〈その3〉

 9月13日、衆院本会議で野田新総理の所信表明演説が行われた。演説の中で、野田総理はエネルギー政策の再構築について、「人類の歴史は、新しいエネルギー開発に向けた挑戦の歴史である。規制改革や普及促進策を組み合わせ、省エネルギーや再生可能エネルギーの最先端のモデルを世界に発信する」と訴えた。私は、この言葉に人類全体の未来に貢献できる日本人のエネルギー政策が見出せる。

 まず、陸上で考えられる再生可能エネルギーは、中小水力発電と地熱発電の導入だ。日本の国土は急峻な地形が多く、年間降水量1700ミリを誇る世界有数の水に恵まれた国である。このため中小河川が多く存在し、中小水力発電の適地が多い。中小水力発電は、すでにある水路に発電機を設置すればいいことから一気に推進することが可能であり、日本中の山間部に雇用を創りだせる。また、世界有数の火山国である日本は、インドネシア、アメリカに次ぐ第三位の地熱資源を有しており、すべてのエネルギーを利用できれば100万kwの原発31基分(53〜120℃の低い温泉を含む)となる。

 次に、海洋面積で世界6位という日本の海に着目したい。まさしく「海洋国家日本」のパワーの源泉だ。我が国の排他的経済水域内における熱エネルギー総量は、約100兆kwhに達するといわれている。このうち1%を電力に変換するだけでも年間発電量は1兆kwhとなり、年間の総発電量に匹敵する。海を利用したエネルギーでは、安定した強い風を利用した洋上風力発電と波力発電が有力だ。三井造船や東京大学など産学で構成する「海洋エネルギー資源利用推進機構」によれば、洋上風力や波力を使い福島県沿岸だけでも600万kwの電力を得られる可能性があるという。

 また、東京都や東京大学など産学官の専門家でつくる「波力発電検討会」は、洋上風力発電と波力発電の併設により、2030年までに100万kw級原発20〜30基分の導入が可能だと試算している。さらに、海洋温度差発電は、天候などの環境に左右されにくく、年間を通じて安定した供給が可能であるという。世界50カ国で導入検討が進められているが、今のところ商用運転を行っているプラントは存在しない。この点、日本の技術レベルは現在、世界トップレベルであり、近年ではアメリカなど各国から協力依頼が寄せられている。

 このように中小水力、地熱、洋上風力、波力、海洋温度差といった日本の気候風土に適したエネルギーをフル活用し、「脱・原発依存」を確実に実現すると同時に、これを積極的にシステム輸出することにより新たな経済成長の原動力に据える。しかも、我が国最大のアキレス腱であったエネルギーの海外依存を克服する道が開けるのだ。これぞまさしく、経済成長と安全保障を両立させるエネルギー政策のリアリズムである。

(民主党衆議院議員・長島昭久)