新垣結衣「守りたい」という思い 【インタビュー】映画『トワイライト ささらさや』

ヘアメイク・小西神士(band / 駒沢美粧) スタイリスト・道券芳恵グレーニット、スカート:プランピーナッツ/ショーケース バイ プランピーナッツ

 だからこそ大変な現場でも、そのまなざしには“母”の余裕が。

「途中から赤ちゃんが、だんだん本番の空気を覚えてきて、それを感じ取ってぐずることはありました。あの独特の、ピリッとした感じが苦手みたいで。自分としては構わず抱っこできるんですけど。以前、他の作品で赤ちゃんと共演したときのことなんですけど、本番になるとお母さんと離されるということを覚えて、本番に入ろうとするとぐずるようになってしまったりしたんです。でも、そういったことも、成長なんですよね。ちょっと人見知りするようになったりしても、それも成長だなって思います。確かに撮影としては大変ですけど、赤ちゃんたちの成長を見るのが面白いというか、うれしかったです。でも本当に、赤ちゃんたちはみんないい子でしたよ。よく笑うし、よく泣くし(笑)。撮影も想定以上にスムースにいったと思います」

 そんな赤ちゃんたちとの触れ合いを通して、実際にそんな未来を想像することもあったのでは。

「いつかは赤ちゃんが欲しいですけど“いま欲しい”という気持ちにはならなかったんです。親類の子と触れ合ってみて初めて、赤ちゃんというのはかわいいだけじゃないということが、よく分かったので(笑)。たまに会ってこんなに大変だったら、一対一で向き合ったらもっと大変だろうと思いました。だから逆に、簡単に赤ちゃんが欲しいなんて言えなくなりました。まあ、来る時が来たら、ということだと思います(笑)」

 自身にとって理想の母親像とは?

「子供の代わりに死ねる…と言える人かな。私にはまだその感覚が分かるとはいえないですけど、そういうふうに言えるくらいの気持ちで子どものことを愛していたい、と思うんです。そして、少し子供が大きくなったときには、ちゃんと人生の先輩として引っ張っていけるようなママになりたいです。もちろん、友達のように何でも話せる仲ではいたいけど、親として人生の先輩として、ちゃんと導ける人でありたいなと思います。年を取ったら嫌でも子供の世話になるから(笑)、元気なうちは自分が引っ張っていきたいし、逆に私も親に対してこれからできることをして恩返しをしていくつもりです」

 本作で描かれるのは、新米ママと赤ちゃんの絆だけではない。夫婦、親子、仲間たち…どんな人も共感を見出すテーマが込められているのだ。

「私は、完成した映画を見て一番印象に残ったのが、汗をかきながら懸命に頑張るユウちゃんの姿でした。真剣に生きる姿にすごく感動したんですよね。ユウちゃんとお父さんのエピソードにも号泣しました。私も、この仕事を始めたころ反抗期が始まって、親とぶつかっていた時期があったんですけど、大人になってから、そのときのことをメールで謝ったんですよ。近い存在だから余計にイライラするときもあるけど、やっぱり家族のことは大切だし、できる限り優しくしたい。そして、相手の思いを受け取ることができる人間でいたい。今回、ユウちゃんとお父さんの姿を見て改めてそう思いました」

 女優として活動してほぼ10年。

「この仕事を始めてから、本当にいろいろな方と出会い、成長させて頂いた部分がありすぎて、とても話しきれないくらいです。でも、まだまだ未熟なところもいっぱいあるので、そちらはもっと話しきれないですね(笑)。今回の役も大きなターニングポイントになったんですが、1作ごとにいろいろな物語に出会い、いろいろな人の人生を歩み、その度に新しいことを学び、成長させてもらっています」

 新たな役を演じるたびに、驚きや笑い、感動を与えてくれる女優・新垣結衣。そんな彼女が、一つのターニングポイントになったと語る本作。
「亡くなった夫が成仏できずに現れるという状況は現実にはありえないことですけど、本作の登場人物それぞれが抱えているのは、誰もが普通にいだいていること。誰もが楽しめる作品になっていると思いますので、ぜひ見てください!」

(TOKYO HEADLINE・秋吉布由子)