現代アートの奇才が生んだ名作|知っておきたい名作家具(3) FAVN ―抱擁という名のソファ
■世界で最も影響力のあるアーティストのひとり、ハイメ・アジョンとは?
1974年、スペインのマドリッドで生まれ、アーティスト・デザイナーとして活躍するJaime Hayon(ハイメ・アジョン)。
彼はTimes誌で現代を代表するクリエイター100人のうちのひとりに、そして、Wallpaper誌でも、この10年で最も影響力のあるアーティストのひとりに選出されています。
現代美術(アート)の奇才ともいえるハイメ・アジョンが、フリッツ・ハンセンのラインナップとして手がけた家具のなかでも、このFAVN(ファウン)は、世界中のインテリア・ファンに高い人気を誇る名作ソファなのです。
10代の頃からグラフィティ・アートに夢中だったハイメは、工業デザインをマドリッドとパリで学びました。その後、1997年に「ベネトン」のコミュニケーション・リサーチ・センターである、「ファブリカ」に参画します。
そこで彼はすぐに、デザイン部門を統括するトップに抜擢されることになり、レストランや展覧会など、グラフィック・アートに関わる様々なプロジェクトをディレクションしていました。その8年後にハイメは、陶磁器や家具、デザイナーズ・トイなどのコレクションのような展覧会を、ロンドンのデヴィット・ギル・ギャラリーで開催します。
まるで、サーカスにインスパイアされたような独特の世界観は、「地中海のデジタル・バロック」と呼ばれ、ハイメ自身による独特の感性と創造性が大きく花開いたのです。
そうした自身のコレクションをきっかけに、ハイメはデザイン、アート、工芸と多岐に渡る分野においてボーダーレスに活躍するクリエイターとして、世界中にその名を知られるようになりました。
現代を代表するアーティスト、ハイメ・アジョンですが、実は彼、日本を代表する伝統工芸品ともコラボレートしているのです。
石川県の代表的な伝統工芸、九谷焼。先人の伝統を守り、日々の食器から茶陶まで一点一線、昔ながらの手仕事で丹精込めてつくりあげる。そんな九谷焼の窯元の中でも、130年以上もの歴史を持つ『上出長右衛門窯』では、とても鮮やかな彩りの上絵付けと深い発色の染付け、また、丈夫で美しい生地が特長的です。
そんな日本を代表する九谷焼の窯元が、類い稀なる個性で次々と傑作を生み出す希代のアーティスト、ハイメ・アジョンの世界観に惚れ込み、いままでにない新しいものづくりへの挑戦を始めたのです。