7・23修斗 川名が環太平洋王座奪取。佐藤は元UFCファイターに1RKO勝ち

川名(右)は打撃でABを圧倒した(撮影・小黒冴夏)

 プロフェッショナル修斗公式戦(7月23日、東京・後楽園ホール)のメーンで行われた「修斗環太平洋ライト級王座決定戦」で川名雄生がABを2R2分11秒、KOで下し、第9代王者となった。

 1R開始早々に左フックで突っ込んだ川名だったが、ABはするりと交わすとタックルでケージに押し込みテイクダウン。サイドからパンチを放つが、川名はしのぐと、サイドを取られながらもケージを使って立ち上がる。なおもケージに押し込むABだったが、川名はその力を利用して体を入れ替え、逆に押し込むとテイクダウンに成功。ABは下から左腕を取りにいくが、しのいだ川名はバックを制したまま立ち上がり、パンチからケージに押し込む。ラウンド終盤はスタンドでの打ち合いとなったが、打撃では川名が圧倒した。

 序盤こそ、ABのタックルに手を焼いた川名だったが、その攻防で思わぬスタミナを使ってしまったABは終盤失速。試合のペースは徐々に川名のものに。

試合後、10月舞浜大会での川名vs小谷戦が決定(撮影・小黒冴夏)

 2Rになると、川名が左右のフックにヒジ打ちを的確にヒットさせ、ABをケージに追い込む。ノンストップで左右のフックを打ち続ける川名に対し、本能でパンチを出すABだったが、ほとんど威力はなく、フラフラの状態。それでも押し返したケージの中央、川名が右フックの軌道から切り替え強烈なアッパーを一閃。まともに食らったABは前のめりに崩れ落ちダウン。レフェリーが試合を止めた。

 川名は試合後「3度目でようやくベルトを巻けました。でもまだ修斗のてっぺんには世界のベルトがあります。そこに挑戦できるように、次の試合、前にも言いましたけど、川名雄生と小谷直之の試合、見たいか? 絶対に面白いんで」と観客にアピール。そして小谷を呼び込むと、小谷も「10月15日の舞浜大会で川名がやるというならやろう」と応え、その場で対戦が決まった。

佐藤は元UFCファイターを1RKO(撮影・小黒冴夏)

 セミファイナルでは佐藤将光がアメリカの元UFCファイター、ルーベン・デュランと対戦。1R4分58秒、KOで勝利を収めた。

 佐藤は打撃の得意なデュランに打撃で対抗。自らの間合いにすべく、ともにじりじりとチャンスをうかがう攻防を打開したのは佐藤の強烈な右ローキック。この一発でデュランは大きくバランスを崩す。すぐに立ち上がり佐藤の追撃は許さなかったが、大きなダメージを負った。佐藤はプレッシャーをかけケージに押し込み右フック。離れたところでデュランが“かかってこい”とジェスチャーでアピールすると、佐藤はまたしても強烈な右ロー。またも大きくバランスを崩すデュランに、佐藤は左ハイにヒザで追撃。

 デュランはタックルに活路を見出そうとするが佐藤は体を入れ替え、逆にケージに押し込むと、離れてまたも右ロー。バランスを崩したデュランに佐藤が左ローから攻撃を仕掛けると、デュランはタックルからテイクダウンに成功。しかし佐藤はケージを使ってすぐに立ち上がる。なおも押し込み、チャンスをうかがうデュランだったが、佐藤は足払いで逆にテイクダウン。ラウンド終了間際に、佐藤が左ミドルを放つとデュランがキャッチ。しかし構わず佐藤は片足立ちのまま右ストレートを叩き込むと、デュランはたまらず手を放してダウン。佐藤が追撃のパンチの連打を放つとレフェリーが試合を止めた。

 佐藤は前戦で石橋佳大の持つ環太平洋バンタム級のベルトに挑戦。ドローでベルト奪取はならなかった。王座を守った石橋は7月30日から始まるRIZINのバンタム級トーナメントにエントリー。勝ちと引き分けで、その次の展開に大きな差がついてしまったが、今回の勝利で存在感をきっちりアピールした。

 試合後のマイクで「UFCリリースされた相手には負けない。もっと強い奴とやらせてください」とアピールした。

【写真上】摩嶋(上)がえぐいヒジ打ちを落とす【写真下】長田(奥)がこの後、スリーパーで児山から一本勝ち(撮影・小黒冴夏)

 最近では若い選手とキャリアのあるベテラン選手とのカードが多く組まれる修斗のリング。この日もフェザー級の「摩嶋一整vs星野勇二」、ライト級の「長田拓也vs児山佳宏」というカードが組まれた。

 摩嶋は2015年の新人王。これまで5戦5勝と無敗の新鋭。星野は修斗へは約4年ぶりの参戦なのだが、その前戦は環太平洋ライト級タイトルマッチで矢地祐介に挑戦したもの。国内のメジャーイベント「戦極」へも参戦経験もある、百戦錬磨の41歳のベテランだ。

 しかし試合は現在の勢いがそのまま表れる結果となった。星野が積極的に打撃で先制するが、摩嶋は星野のミドルをキャッチするとケージに押し込み引き倒し、テイクダウンに成功。星野が立ち上がると摩嶋は足をかけて再びテイクダウン。マウントを奪うと強烈な肩パンチ、パウンドにヒジ打ちをほぼノンストップで繰り出していく。下から体をよじり脱出を図る星野だが、摩嶋は絶妙なバランス感覚でしっかりマウントをキープしなおも打撃を落とし続ける。

 大きなダメージが残る星野は2R開始とともに捨て身で前に出るが、その左ストレートに摩嶋が右ストレートをズバリ。前のめりにばったり倒れた星野に追撃のパウンドを落としたところでレフェリーが割って入り試合を止め、2R12秒で摩嶋がKO勝ちを収めた。

 長田は2016年度のライト級新人王。ここまで3勝1敗1分けで、その1敗はこの日のメーンで環太平洋王座を争うABに前戦で喫したもの。児山は第5代環太平洋ウェルター級王者で世界タイトルへの挑戦経験もある。しかし今年1月に20歳の青井心に1RでKO負けを喫するなど、まさに生き残りをかけた戦いとなった。

 長田は試合開始早々に右フックからタックルを決めテイクダウンに成功するとすぐにバックを取り、スリーパーを狙う。腕を取り、しのぐ児山だったが、長田ががっちりとスリーパーを決めると、無念のタップ。1R2分14秒、スリーパーホールドで長田が勝利を収めた。

【写真左】岡田は金物屋の秀に1RKO勝ちでさまざまなうっぷんを吐き出す雄叫び【写真右】“噂の男”論田愛空隆(左)が榎本を1R10秒で秒殺KO(撮影・小黒冴夏)

 バンタム級の注目の試合となったのが「岡田遼vs金物屋の秀」の一戦。

 岡田は2015年のインフィニティリーグで無敗ながら優勝を逃し、昨年11月に行われた環太平洋王座決定戦では石橋佳大に激闘の末敗れ、再起を期した前戦の国際戦ではトリスタン・グリムズリーに一本負けとここぞというところで勝負弱さを出し、いまいち波に乗り切れない。

 一方の秀は昨年の秋以降、2勝1分けと覚醒。その試合内容と合わせ、すっかり波をつかんだ感じ。

 試合は慎重な滑り出し。ともに打撃を当てながらも連打につなげられないもどかしい展開が続いたが、残り1分を切ったところで秀が右フックで前に出る。岡田はそれを交わしタックルで組み付くと素早くバックに回り、バックから左ハイ、左フックを連打。嫌がる秀はクラッチを解いて逃げるが、岡田は追ってパンチで追撃。ダウンした秀にパウンドの連打で1R4分52秒、KOで勝利を収めた。

 岡田は試合後のマイクで「パラエストラ千葉ネットワーク、鶴屋浩の弟子、岡田遼です。うちの道場の山本勇気が事件を起こして、道場のみんながこの1か月、苦しい思いをしました。今日は僕の後ろに続くプロシューターも見てくれていると思います。僕はこれからも鶴屋浩の下で修斗のチャンピオンを目指していくだけです」と話した。