識者が語るシド・ミードと映画「ブレードランナー」以後の未来像

「WIRED」の前編集長・若林恵氏
『ブレードランナー』における世代間ギャップ

 これを聞いて4人の中では世代的に1人だけ若い若林氏は「僕は1971年生まれなので、小学生。1つ上の兄貴が見に行って、“くそつまらなかった”と言って帰ってきた(笑)。小学生では無理。“ブレードランナーというのは面白くない”と思って育っている。その後に興味を持ちだすと、こういう方々(関氏ら)が“見た後と前では違う人間になっている”とか言われるが、興行的には失敗したと聞いている。評価はどうだったのか? 僕の疑念は、“みんながすごいと言うが、実はねつ造しているんじゃないか?”ということ(笑)」などと『ブレードランナー』における世代間ギャップを感じさせた。

 清水氏は「新宿ミラノ座の初日に行ったが1000人超のキャパに十数名しかいなかった。みんな暗い表情しながら出てくる。僕も正直1回目は面白いと思わなかった。なにか今までとは違うものを見てしまったという感じ」と振り返る。

 また若林氏は「正直言うと、最初のブレードランナーは“言説”が多すぎて、映画として素直に向き合うのが困難。いろいろあるんだろうなと思った。でも、「シド・ミード展」に行って改めて思ったのは、“すごくロサンゼルスだな”ということと“ノワール”がすごく意識されていること。(レイモンド・)チャンドラーっぽい世界。リドリー・スコット監督のインタビューも見てみたが、フィリップ・マーロウの話もよくしているし、40年代50年代のロサンゼルスの景色だし。ヴァンゲリスの音楽もみんな褒めてるけど大した音楽じゃない。アルバムはよくできているが、未来っぽい音楽は実はやっていない。YAMAHAのシンセを使って、ノワールっぽい音楽を作った。サックスなんですよね。リドリー・スコットが言っていることで面白いのは“舞台設定は40〜50年先だが、40〜50年前にも見えるようにした”ということ。その時間の取り方、実は未来と過去が分からないつくりというのは結構面白いというか作品の魅力になっている」とも話した。