映画「いちごの唄」を観て思う、“歌もの”“キャラもの”の難しさ【黒田勇樹のハイパーメディア鑑賞記】

 こんにちは、黒田勇樹です。

 三栄町LIVE特別公演 黒田勇樹プロデュース『リトルスーサイド』の顔合わせと本読みがスタートしました。8月15日が初日と聞くと随分先のことのように思われるかもしれませんが、もうね、もうすぐなんです。

 なので興味のある方はもうチケット買ったっていいんですよ。ええ、1カ月なんてホントにすぐですから。

 今週は鑑賞記です。では始めましょう。
黒田勇樹
 銀杏BOYZの曲を原典に朝ドラなどで活躍されている脚本家・岡田恵和さんがシナリオにした映画「いちごの唄」を観てきました。(ちょっとこの表現、サイトによっては共同原作とか色々表記されてるので微妙にズレがあるかもしれませんが…)

 最近流行ってますよね、ある曲をテーマにした映画、中島美嘉の「雪の華」とか、モンゴル800の「小さな恋のうた」とか。

 でも、ひとつ僕は思い出して欲しい映画があるんです。

 それは紀里谷和明監督の「キャシャーン」。面白かったかどうかはここでは語りませんが2時間超えの長編を見せられ、そのラストに当時監督の妻であった宇多田ヒカルさんの「誰かの願いが叶うころ」が流れたあの瞬間。

「誰かの願いが叶うころ、あの子が泣いてる」

 5分で作品のテーマ要約できてる!なんなら映画より伝わる!今までの2時間返せよ!

 そう思いませんでしたか!?

 翔んで埼玉もEDではなわさんの「埼玉県のうた」が流れた時が一番ウケてました。

 ストレートに埼玉ディスればウケるならもう本編いらねーじゃねーかよ!

 おわかりですか!?音楽は、映画にとって“強敵”なんです!

 こっちは2時間長距離走に対して向こうは5分短距離走の勝負なので、「5分で描き切った素晴らしいテーマ」を映画にリライトしようとすると、どうしても寄り道が多くなったり、短距離をダラダラ走っている印象になってしまうのです。

 この映画自体も、書きたい場面やメッセージが「ちょっと寄り道しすぎかな?」という場面が非常に多く、突然挟み込まれた震災のシーンには「いや、やりたいのわかるけど、やるならもっとちゃんとやれよ…なんか別のエピソードにでも置き換えられたろ…」と思わずにはいられませんでした。

 もうひとつの大きな問題が、主人公の青年の“演技”

 これは「良かった」「悪かった」という話じゃなくて、「難しい」って話なのですが、これも僕が前々から思っている「“コギャル”“チンピラ”“陰キャ”は映像に出すのが難しい」という問題があって、舞台ならそのアプローチで観客に信じ込んでもらうことが出来るんですが、映像は画質が良すぎるから、その誤魔化しが効かない。

 上に書いたようなキャラの人たちって、そもそも「俳優になろう」と思うタイプじゃないから、違うタイプの人間が必死に演技することになるんですが、今回の主人公はド陰キャ中のド陰キャ。

 それを「絶対日常ではモテモテの陽キャだろ!」って俳優さんが「頑張って」演じちゃってるから「頑張れない主人公の歯がゆさ」と違和感が生じちゃって入り込めない。

 必死にキャラ作りして演技してくれてるんだけど、映画は“キャラ”じゃなくて“人間”が見たいので、これでは2時間走り切れない。

 キャラ押しで2時間走り切れる俳優なんてジムキャリーしかいないんですよ!

 共演の女優陣がヒロインから隣人、母、孤児院の園長、子役、カメオの麻生久美子さんに至るまで最高に良かったので、余計にこの主人公の“頑張り”が悪目立ちしちゃって勿体なかったです。

 まぁ、なんつーんでしょうね、良くも悪くも「長めのPV」って感じの映画でしたが、最後にはヒロインの最高の笑顔とともに、僕も号泣出来るラストが待っていたので、銀杏好き、女優好き、映画好きな方には話のタネに劇場へ足を運んで欲しい良作でした。
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