佐藤寛太インタビュー 主演映画『いのちスケッチ』で地元・福岡の動物園で“いのち”と向き合う!

今の年齢だからこそ出せた色みたいなものが出ていたらいいなと思います


 共演のベテラン俳優から学ぶことも多かった、と佐藤。園長・野田を演じたのは日本を代表する俳優、武田鉄矢。亮太の祖母・和子には渡辺美佐子、母・寛子には浅田美代子。

「本編には映っていないんですが、あるシリアスなシーンで武田さんがアドリブのパスを僕にくれたことがあって。武田さんのアドリブを入れていて、僕もそれに対してアドリブで返したんです。シーンのあとに、よく付いてきてくれたねと言ってくださったのがうれしかったです」

 物語の山場となるシーン、ライオンへの麻酔を使わない採血“ハズバンダリートレーニング”に挑む場面ではキャスト、スタッフが一丸となって取り組んだ。モデルの大牟田市動物園は、日本で初めて動物への無麻酔採血を成功させた動物園。劇中で描いてきた、動物福祉を体現するシーンなだけに、丁寧に、繊細に描く必要があった。佐藤も事前に専門書を読むなど、万全の準備で臨んだ。

「あの場面の撮影は一番、強く覚えています。全員があのシーンに向かって準備をしていましたから。当日は雨が降っていたんですが、あの時間だけ収まるなど天気も味方しました」

 劇中では、大牟田の美しい景観にも目を奪われる。瀬木直貴監督は撮影の8カ月前から大牟田市に住み込み、その地の人情や言葉、迫力の風光明媚をとらえた。佐藤が語る地元・福岡の魅力は。

「撮影にあたっては大牟田の人たちが全面協力してくれました。朝の車両を出してくれたり、夜に炊き出しをしてくれたり、街の整備までしてくださって、皆さんの温かさを感じました。焼き鳥店のシーンにもありますけど、福岡の街の良さは、隣同士に座っている人が何気なく話しかけてくるところなんです。高校生のときに行っていた屋台でも、隣に座っていたおじさんと仲良くなって、串をご馳走してもらったりしていました(笑)。福岡の、そんな温かさが好きですね」
 18歳で劇団EXILEに加入し、映画『イタズラなKiss』シリーズでは初主演に抜擢。その後も数々のドラマや映画に出演し、現在23歳。本作で再び座長を務め、見える景色も変わった。

「少しですが、キャリアを重ねてから真ん中に立つって、また違うなと思いました。例えば『走れ!T校バスケット部』では、志尊淳くんが僕と同世代ながら座長としてみんなを引っ張る姿を見たり、『駐在刑事』では、寺島進さんの立ち居振る舞いを見て、主演とは、その言動一つで作品の良し悪しが変わってくるほど、責任を背負う存在なんだと感じていました。僕も今回、この作品に対して誰よりも情熱を持っているということを伝えられるように、という姿勢で現場に挑んでいました。それは18歳のときにはできなかったかもしれない。今の年齢だからこそ出せた色みたいなものが、この映画に出ていたらいいなと思います」

 動物飼育員の仕事を通して成長する亮太の姿は、役者としてステップアップする佐藤の姿にどこか重なるのかもしれない。故郷・福岡を舞台に奮闘した座長の経験と、いのちに向き合った日々。佐藤の役者人生にとって、またかけがえのない1ページが刻まれた。

(取材・文 丸山裕理)
©2019「いのちスケッチ」製作委員会
『いのちスケッチ』
監督:瀬木直貴 出演:佐藤寛太、藤本泉、芹澤興人他/1時間40分/ブロードメディア・スタジオ配給/11月15日(金)より全国公開 
【「いのちスケッチ」公式サイト】http://inochisketch.com/ 
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