【インタビュー】朝倉海 格闘技界に最大の衝撃を与えた男が令和元年を締めくくる

 今年のRIZINは絶対王者と思われていた堀口恭司が朝倉海に敗れるというエポックメイキング的な出来事があった。大晦日にはタイトルをかけての再戦が予定されていたが堀口がケガで欠場。この対戦が来年以降に持ち越しとなったことで、現在、RIZINの男子の中心軸は朝倉海が担うこととなった。
朝倉海(撮影・堀田真央人)

「堀口選手が戻って来るまで絶対に負けてはいけない」


 まずは堀口戦が流れた時の率直な気持ちを。

「ケガで欠場というのは想定していませんでした。なので、一瞬頭の中が真っ白になりました。でも大晦日に出場することは変わらないので、代わりの選手を用意してもらって、“誰が相手でも盛り上げるしかない”と切り替えました」

 そう簡単に切り替えられるものでもないと思うのだが、気持ちを切り替える時に心掛けていることはある?

「特にはないです。基本的にマイナスなことは考えません。今回も流れてしまったけど、良く言えば来年に楽しみが先延ばしされただけ。これで俺が勝ち続けて、万全な状態で堀口選手が復帰したら、そこでもっと熱いものが見せられるというか、大きな熱が生まれるなと思ったので、今回やる予定だったものが先に流れただけという考えにシフトしました」

 わりとサクッと切り替えられるタイプ?

「悩んでもそこからは何も生まれませんから。悩むというのは意味がないことだと思っているので、何事もそうなんですが、そんなに悩んだりはしないですね。落ち込んだりしても3分くらいですね(笑)。3分経ったら“おしまい”って感じ」

 ではモチベーションは高く保ったまま?

「今は日本の格闘技界を盛り上げるために戦うという高いモチベーションをキープしています」

 堀口が休んでいるうちに朝倉は4~5試合する可能性がある。そうなるとぐんとポジションが上がって、新たな目標が生まれるかもしれない。それでも堀口には興味がある?

「やはり他の選手と比べてもずば抜けて強いと思っているので、その戦いには意味があるし一番盛り上がると思っています。それを面白くするためにも堀口選手が戻って来るまでに絶対に負けてはいけないという使命のようなものはあります」

 常日頃「格闘技で世界一になる」と言っている。と同時に「日本の格闘技を盛り上げる」とも。UFCへの参戦も視野に入れるとなるとこの2つを同時進行するのはちょっと難しい。

「まずは今年の大晦日にチャンピオンになって、来年の初めにはチャンピオンとしてRIZINを盛り上げて、そこに海外のメジャー団体の強豪選手を呼び寄せることができれば、とは思っています。それが理想なんですけど、それができないのであれば、僕がRIZIN代表として海外に行くのもありかなと思っています」

 取りあえずはベラトールへの参戦?

「それは堀口選手がやったことなので僕もやりたいです。そして今、世界で一番強いと言われるのがUFCのチャンピオンなので、その後はそこを目指していきたいです」

 気の早い話になるが、次の堀口戦が終わったら朝倉海の試合は日本では見られなくなる可能性もある?

「その可能性もありますので、来年の試合は必ず会場に来て見てほしいですね」

 朝倉海は兄・未来とともに対戦相手を徹底的に分析したうえで試合に臨む。8月の堀口戦もそうだった。いとも簡単にやってのけているイメージだが、そんな簡単なものではないはず。

「昔、愛知にいたころから、周りに強い選手がいたわけでもない中で、自分たちで考えて映像で研究するということを習慣化していました。その積み重ねで今があると思っています」

 分析とか戦略家のイメージは未来選手のほうが強い印象だが、海選手もそこは負けていない?

「兄貴は分析に関しては本当に優れていて、僕よりもすごい。でも僕も分析力はあると思います」

 もともと人を観察することにたけている?

「そういうことはあるかもしれないです。日常の中ででもですよね?」

 例えば、こういうインタビューの時も相手のしぐさを見て“どういう人間なんだろう?”と考えたり。

「そこまでは気にしないですけど(笑)。でもそういうつもりで見れば、性格分析みたいな、相手がどういうことを考えているのか、というのは分かるかもしれません」

 会見での相手の発言とか喋り方でも?

「会見ではあまり分からないですけど、試合直前のインタビューを見て“この人は俺の作戦は読み切れていないな”ということは分かります」
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