中村七之助 新作に挑む思いや父・勘三郎との“ホラーな思い出”を語る「リアルなチャッキー人形を…」

撮影・蔦野裕 ヘアメイク:中村優希子(Feliz Hair) スタイリスト:寺田邦子

中村獅童、中村勘九郎、そして七之助。3人そろえば怖いものなし


 3年ぶりの公演となる予定だった赤坂大歌舞伎では、兄・中村勘九郎、中村獅童という頼もしい2人と、新作として牡丹燈籠に挑んでいた。

「兄と獅童さんとは長年一緒にいろんなものを作ってきた仲ですから本当にやりやすい。2人とも小さいときから共演していますし、一緒に舞台に立つと安心感がありますね。それでいて僕の期待をどんどん超えてくるので、僕はもう引っ張ってもらうだけでいい(笑)。獅童さんのすごさは“吹っ切れる”ところでしょうね。ポーンと吹っ切れて、本当にその人物そのものになることができる。吹っ切れる能力にかけては歌舞伎界でも随一ではないかと思います。兄は芝居であれ踊りであれ、どんな役でも表現へのこだわりはすごいものがある。2人とも、周囲に気を配りながら場を盛り上げてくれるムードメーカーで、座頭としてもすばらしいです。そんな2人と一緒に新しいことに挑戦できるのは、本当に心強いです。役者としての能力はもちろんですが、人としての優しさや、作品を作り上げようとする情熱といった部分も誰にも引けを取らない2人なので、一緒だと本当に怖いものなしです。この3人だけでなく、それぞれのお弟子さんの存在も僕たちの強みなんですよ。本当に優秀な方々が多くて、新作であっても自ら把握して動いてくれる。仲間に恵まれているのも、中村屋の強さだと思います」

 中村勘三郎から始まった赤坂大歌舞伎のたすきをともにつなぐ“怖いものなし”の3人。

「敢えて語り合うことはありませんが3人とも、赤坂大歌舞伎はうちの父が残した、大切な場だと考えていると思います。獅童さんも、父のことをとても好きでいてくれた一人でしたから。父が一緒のときはいつも、芝居の話はもちろん、こんなことをしたいね、あんなこともやってみたいねという話をずっとしていました。父は、僕たちがこれから戦力になっていくというときに亡くなってしまいましたから実際のところは分かりませんが、僕たちと一緒にいろんなことをやっていきたいと思ってくれていただろうし、僕たちもそう思っていました。だから、父が始めた赤坂大歌舞伎につないでいくことができるのは本当に幸せなことだと思っています」

 今後も、古典を守り継ぎながら新作はもちろん、さまざまな表現の場に挑み続けるであろう中村七之助。彼らが生み出す新作も、いずれは古典として愛される日が来るに違いない。
(本紙・秋吉布由子)
5月5日(火・祝)~24日(日)に上演を予定していた赤坂大歌舞伎『怪談 牡丹燈籠』は新型コロナウイルスの感染拡大と政府の緊急事態宣言を受け、全公演中止
※このインタビューは2020年2月に行われたものです
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