訪日客需要も見込んで今年3月に開業した都内居酒屋店、怒とうの3カ月を乗り越えて売り上げ回復した理由

「アジのなめろう」同じく豊洲で毎朝仕入れる特上のアジを、注文を受けてからなめろうに(960円/大1320円)。
 コロナが本格化する3月下旬にオープンし、4月、5月の売り上げは月額目標の6割未満。しかし6月には8割強まで回復、7月は目標額達成が見込まれる状況に。福慶さんは「もしこの店が、自分で料理や経営も行う個人店だったらここまでの回復は難しかったと思う」と語る。

「実は、僕らの会社はもともと飲食店経営のサポートを行うビジネスを行っており、この店はそのノウハウを注いだ実験的店舗でもあるんです。情報収集や分析、広報といった仕事は僕と中村を含めた経営者3人が行い、ベテランの料理人やホールスタッフが店の仕事に集中できる形にしています。また、POSレジ(販売情報管理システム)やキャッシュレスのシステムなど店舗向けのサービスも利用して効率化を図っています。こういうサービスの会社さんは飲食店関連の情報も詳しくて、アプリで発注やり取りをしてくれる画期的な仲卸さんを紹介してもらったのは本当に助かりました。こういった外部サービスを活用したり分業するなど、負担を集中させない仕組みが飲食店には必要だと思います。店舗経営者が経営管理をしながら調理や仕入れもし、従業員のマネジメントもするって本当に大変なことですから」

 今回のコロナ禍では飲食店の多くが厳しい状況に直面している。

「こういう事態が起こると行政からの情報がとても重要になるのですが、行政の情報は自分からこまめに確認しないと、けっこう知らないままということも少なくないんです。正しい感染対策を行っているかといったことや、助成金や公的サポートをどうしたら受けることができるかということなど、日々更新される情報を自分から積極的に確認して、早急に対策することが大事ですが、個人ですべて行っているお店は本当に大変だったろうなと思います。せっかく休業していたのに申請ミスで感染拡大防止協力金を受け取ることができなかったという話も聞いたことがあります。うちは、店のスタッフには店の仕事に集中してもらい、僕らが情報を集めてすぐに対策を行うなどして、何とか回復傾向にあります。とはいえ、本来なら訪日客が増える今年の6~9月にターゲットを置いていて、インバウンド向けの取り組みも考えていたんですが、オリパラも延期になってしまったので…。ゆくゆくは別形態で2店舗目、3店舗目も計画しているのですが、今後しばらくは様子を見ながら、この店の評価を堅実に高めていくしかないと思っています。今回、改めて飲食店の難しさと分業体制の必要性を実感したので、この経験を生かし飲食店サポートのビジネスも本格化させていくつもりです」
 個人の飲食店にとって、急な環境の変化への対応は大きな負担となりやすい。そういった場合へのサポートも、飲食店に対する支援の1つとなりそうだ。