山本直樹「自己満足だとしても、チャンピオンになれるなら自分はどうなってもいい」

格闘家イケメンファイル Vol.109


 2015年に「Krush.53」でデビューして以来、K-1でもひときわスター選手が揃うスーパー・フェザー級で奮闘する山本直樹。2017年には5連勝と好調で王座へと着実に駒を進めるもその後は島野浩太郎や郷州征宜、朝久泰央らトップクラスの選手たちにはいずれも敗戦。2019年末には「Krush.109」のKrushスーパー・フェザー級タイトルマッチで王者レオナ・ペタスへの挑戦権を得るも2ラウンドでKO負けを喫した。20代最後の試合は、新型コロナウィルス感染拡大の影響により、過去に例のない無観客興行となった「Krush.112」。山本同様に再起戦となる佐野天馬を延長判定で下し、再びトップ戦線を見据える。
山本直樹(撮影・堀田真央人)
「無観客試合に出場した感想としては、モチベーションが全然違いますね。心では“誰もおらんほうが集中してラクにできるかも?”なんて思っていて試合前にも“ノビノビやる”という発言もしていたのですが、実際は試合運びにはあまり変わりはなくて、“やっぱり声援があったほうがもっと頑張れるな” と実感しました。会場内が静かだったのでセコンドの声はよく聞こえましたけどね、よう喋る兄貴(=元K-1ファイターの山本優弥/優弥道場代表)なんで(笑)」

 山本選手の試合は、その優弥さんから闘魂注入的に背中に一発入れて送り出される姿も印象的。

「自分は、いつも気合十分なほうなんですけどね、兄貴のなかであれが流行っているのかな(笑)。「KHAOS.10」に出場した(目黒)翔大君にもやっていて、しっかり跡が残ってましたね。ただ自分はさておき(笑)、あの時の翔大君は“行かんと!”っていう展開になっていたので、気持ちを切り替えて気合を入れ直すという意味で効果的な一発だったとは思いますね」

 昨年ベルトのチャンスをつかみかけ、今またリスタートを切りました。なかなか機会をものにできない期間もありましたが、どんな思いでいた?

「今の自分はまだ練習量、練習の質、考え方、すべてが足りていません。そして何よりもすぐにカッとなる性格が災いしている。練習中でも自分が悪いことにまでイラッとしたり。そういうところが試合にも出ているのかなと思ってしまいます。勝手に力んで体力を落としてしまうし、抑制がきかない。これは性格的なことですし経験を言い訳にはできませんから、その点では、無観客になると違うかなとも思ったんですけどね。スパーリングの感覚でできるかと思ったけどやはりそれはなかったです」

 お兄さんの背中を追うでもなく、また幼少期から一緒に空手をやっていたというわけでもないそうですが、格闘家になったのはどんなキッカケ?

「兄貴は子どもの頃から空手を習っていましたが、自分は高校卒業までずっとサッカー一筋でした。親は兄弟それぞれ好きなものをやらせてくれる方針だったので、父親と公園で野球やサッカーをして遊んでいた流れで、坊主頭にしなくていいほうを選択しました(笑)。空手にも興味はありましたけど、人見知りで恥ずかしがり屋な性格だったので、殴り合うだけならまだしも(笑)、型を重んじる競技にちょっと抵抗があって。それから実際やっていた兄貴からは勧められるどころか、むしろ、やめておけ、別のことをしろと言われました。6歳上の兄貴は十分大変さを知っていたからでしょうね。その後、兄貴の現役当時も全然興味もわかず試合を見ようとすることすらほとんどなくて。見る機会があった時は、“こんなの、自分でも勝てる”と思ったりしていましたからね(笑)。自分でやって初めて分かりました、兄貴の苦労が(笑)。格闘技を始めたのは、就職してから友人に誘われたサークルで最初は趣味でやっていたのが、どんどんハマってしまったんです。ちょうどその頃、自分の仕事に対して“このまま普通に働き続けるのか?”と疑問を抱いていた時期でもあり、誰でもできるような仕事をただやり続けるよりも、自分のやりたいことやってみよう、と思えたんです」
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