“全ッ員”に観て欲しい超傑作「ミッドナイトスワン」で想う“映画”という概念!【黒田勇樹のハイパーメディア鑑賞記】

 こんにちは、黒田勇樹です。

 多くの方に三栄町LIVE×黒田勇樹プロデュース公演「ウィルス・ブルース」のオーディションに応募していただきました。

 ありがとうございます。少しでも多くの人に気にしていただけてうれしいです。今度は僕が面白いものを作る番、ということで脚本の執筆にとりかかっています。

 構想の段階からいい感じに進んでいますので、ご期待ください。

 今週は鑑賞記です。毎度のことながら、人生相談も引き続き募集中です。

 では始めましょう。
黒田勇樹
 「ミッドナイトスワン」を観てきました。

 この映画、以前に予告編を観た時点で、強烈な磁力に引き付けられるように「観たい!」と思っていたんですが、本当に凄かった!

 よく「コメディ映画としてココが良かった」とか「ミステリーとして」と“ジャンル”で作品を語ることがあります。この映画は、分類するなら「ヒューマンドラマ」なんでしょうが…

 もうね!“映画”!!! ジャンルというか、概念として“映画”!

 ラベリングする必要のない、純然たる圧倒的な「映画という概念の象徴!」って、感じでした。

 草彅剛さん演じるトランスジェンダーの人物が、育児放棄を受けている女子中学生を一時的に預かり、バレエを通じて心を通わせていく。って感じの話なのですが

「ジェンダー」「バレエ」「虐待」と“見る人を選ぶ”感が強い言葉が並びますが、全ッッッ然関係ない!

 全員!世界というか人類というか、全ッ員!に観て欲しい超傑作でした。

 映画というのは映像と音と物語で“人間”とか“人生”とか“愚かさ”とか“美しさ”を、表現していく媒体なのですが、この映画「台詞以外の部分でドラマを伝える」という部分がとんでもなくすぐれている。

 TVドラマは途中から見ても、家事をしながら音だけ聞いてもストーリーがわかる様に「なんでも台詞にする」というのが主流になっています。

 例えば映画なら「汚い部屋に入って顔をしかめながら鼻を押さえると“臭い”」という表現になりますが、TVドラマなら「くっさ!何この汚い部屋!」と台詞にするような感じ。

 最近は“TVドラマがメインの観客に向けた映画”が、特に邦画の大作では多いので、後者の手法がとられがちですよね。

 今作は、それを本当に少ないセリフで、音楽、映像、そして、“演技”と“ダンス”という身体表現でガンガンに伝えてくる。

 ふと踊るダンスとか、ポテチが生姜焼きに変わっただけで泣けます。

 前半の「予想できる王道の展開」にも十分感動できるんですが、後半の「劇的なことが起こりまくる展開」が、その身体表現の素晴らしさで強烈に説得力を増す。

 皆さん、勿論素晴らしかったんですが、草彅剛さん、水川あさみさん、服部樹咲さん、上野鈴華さんの4人はずば抜けて「もうその人にしか見えない」という表現をされていて圧巻でした。

 ああ!文字数が足りない!観て!とにかく観て!

 映像!音!物語!演技!“人間”!“人生”!“愚かさ”!“美しさ”!全部スクリーンに映ってます!

 主人公の家にあった漫画がTS(トランスセクシャル)、まぁ、「性転換モノ」とでもいうんですかね?の殿堂「らんま1/2」だったのは「やりすぎだろ!」と、思いましたが(笑)

 超大大大傑作でした!
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黒田勇樹(くろだ・ゆうき)
1982年、東京都生まれ。幼少時より俳優として舞台やドラマ、映画、CMなどで活躍。
主な出演ドラマ作品に『人間・失格 たとえば僕が死んだら』『セカンド・チャンス』(ともにTBS)、『ひとつ屋根の下2』(フジテレビ)など。山田洋次監督映画『学校III』にて日本アカデミー賞新人男優賞やキネマ旬報新人男優賞などを受賞。2010年5月をもって俳優業を引退し、「ハイパーメディアフリーター」と名乗り、ネットを中心に活動を始めるが2014年に「俳優復帰」を宣言し、小劇場を中心に精力的に活動を再開。
2016年に監督映画「恐怖!セミ男」がゆうばり国際ファンタスティック映画祭にて上映。
現在は、映画やドラマ監督、舞台の脚本演出など幅広く活動中。

公式サイト:黒田運送(株)
Twitterアカウント:@yuukikuroda23

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