根津に登場した「不健康ランド 背徳の美味」築70年の銭湯が飲食店に



根津の元銭湯の女湯を改装して誕生



「不健康ランド 背徳の美味」は、根津の銭湯「宮の湯」の跡地に作られた。脱衣所も風呂場も、当時の趣を残したままに、飲食店向けのリノベーションがなされての再デビューだ。

 脱衣所には年季の入ったコインロッカーや体重計も残されており、風呂場にはシャワー口や当時からのタイル絵も残されている。昭和の銭湯の趣も感じるが、どこか今らしい「エモさ」のようなものも感じる。

 運営会社はInstagramでも話題の中野の喫茶店「不純喫茶ドープ」や神田「トーキョーギョーザクラブ」をてがけたwackwack creative。代表の井川氏が自ら物件を探し「役目を終えてしまった店舗」を巡っていたところ、根津で潰れてしまったこの銭湯にたどり着いたのだという。

「社名に入っている『wack』とはヒップホップのスラングでダサイとかクソという意味で使われる言葉なんです。役目を終えてしまったwackなものをワクワクさせていこうというのは、会社のコンセプトでもあるんです。もともと物件を見るのが好きなんですが、この銭湯の物件情報を見た時はすぐに”ここで飲食店をやったら、絶対に面白い!”と思いました。内装工事はいれず、社内メンバーでリノベーションした。作った自分たちもいいと思える、自信のあるものができた」と代表の井川氏。ちなみに「不健康ランド」はなんと女湯の脱衣所と風呂場のみで営業している。



不健康でOK、整わない銭湯を楽しむ



「不健康ランド」は18日から営業を開始する予定。店舗では銭湯にちなんだお酒や「不健康ランド」という名前の通り、銭湯なのに「整わない」背徳感を感じるメニューを楽しむことができる。

銭湯らしい背景によく合う「牛乳ハイ」は、ロゴ入りの牛乳瓶が可愛らしい。いちご牛乳やフルーツ牛乳で焼酎を割るという豪快なメニューだが、見た目も可愛らしく女性にも喜ばれそうだ。食べ物は唐揚げや極厚のハムカツなど、男性や年配にも親しみやすい大衆食堂メニューが多い。が、メニュー名は「鶏の唐揚げ 魔法の粉と」、「大葉のブリブリサラダ」など思わず気になるものばかりだ。味も濃いめで酒もすすむ。



「不健康ランド」のコンセプトは”心の洗濯 入れる一服”。銭湯の跡地でありながら、あえて健康訴求しないメニューとコンセプトで、日常のストレスから心が洗われる。「もちろん健康であることはすごく大事なこと。でも、ヘルシーであることに完璧に向き合い続けることに心が疲れている人も結構いると思うんですよね。なので、まあたまには不健康なことしたっていいじゃないかと。整おうとしなくていい日もあると思うんですよ。いつもイルでもやっぱ今日はチルみたいな」と井川氏。今年は特に予防意識、健康意識を高く持とうとしなければならない年だったからこそ、不健康でいいと言われると救われるような気持ちになる。

銭湯が新しく作るユースカルチャー


老舗の銭湯を改装して作られたということで、サウナーや銭湯好きに注目される一方で、姉妹店の女性ファンからも注目されている。銭湯と飲食店という異色のコラボのおかげで、男女問わず幅広い層に愛されることになるだろう。SNS志向の20代にも、飲酒意識の高い30代以上にも、興味を持たれるフックがある。銭湯という場所を通して、新しいユースカルチャーが形成されている。男女問わずおすすめできる飲食店だ。ぜひ一度遊びに行ってみてほしい。

(取材と文、撮影/ ミクニシオリ)