「年間1000冊マンガを読む人」に聞いた、今読みたいマンガ5作

緊急事態宣言は解除となるものの、なかなか気軽に外出できない週末が続いている。サブスクでドラマやアニメを見るのにも飽きてしまったなら、たまにはマンガを一気読みしてみるのもいい。動画コンテンツには少し遅れを取ったが、コロナ禍でマンガコンテンツもサブスク化が進んでいる。昔よりもまとめて手に取りやすくなっており、今がチャンスだ。


とはいえ、いきなり何を読みはじめていいか分からないという人もいるだろう。そこで今回は、1年間に1000冊マンガを読む人に、おすすめのマンガを教えてもらった。



 


コバヤシエリナさん(28)は、都内IT企業で人事として働きながら、イラストレーターとしても活躍しているマンガホリックなOLだ。幼少期、気づいたらもうマンガ好きだったというコバヤシさん。少女漫画・少年漫画問わず、気になったマンガは片っ端から読んで、SNSでレビューを貯めているという猛者だ。本棚にもマンガがぎっしり。これが理由で引っ越しを渋ることもあるほどだという。マンガに影響を受け続けて生きてきた彼女は、転職や留学など、人生の大きな転機ではいつも、マンガに背中を押されてきたそうだ。



 


 


2021年来そうなマンガは…


コバヤシさんは新作・名作、女性向け・男性向けを問わず多くの漫画を読んでいるそう。そんな彼女に2021年、ここから人気が出そうだなというところで注目しているマンガを聞いた。




「イチオシはアフタヌーンコミックス『図書館の大魔術師』です。今4巻まで出ているんですけど、正直ハリーポッターをはじめて読んだ時と同じくらいの衝撃が走りました。中世的な世界観で、主人公が娯楽の中心である本と図書館と関わっていくお話です。生まれが貧民の主人公は、誰でも入れるはずの図書館が利用できないっていうハンディを抱えているんですが……。とにかく、自分の人生の主人公は自分なんだということを教えてくれるマンガ。1巻まるまるプロローグに使っているあたり、長期連載を前提とした自信も感じます。なにかしたいけど一歩踏み出せない時、ぱっとしない週末に読んでほしい」



ファンタジー物は世代問わず楽しめる。コバヤシさんは他にもサンデーコミックス『葬送のフリーレン』、もうすぐ最終回を迎えるマガジンコミックス『進撃の巨人』も注目しているそう。



涙なしでは読めない、人生に気づきをくれるマンガ


新しい生活様式を過ごすようになり、仕事面でももやもやを抱えている人が多いだろう。とはいえ、転職に適しているとはいいづらい今。そんな「仕事へのもやもや」も、マンガでデトックスできるという。





「マンガって基本フィクションなので、ビジネス書を読むよりもすっと自分に活きる気づきを与えてくれることも多いです。モーニングコミックス『宇宙兄弟』は、仕事に活きる気づきをたくさんくれるマンガ。宇宙に行くっていう一つの目標に対して、いろんな関わり方のプロフェッショナルが登場するんだけど……主人公は宇宙飛行士だけど、そういう花形の仕事をしていない人たちにもしっかりスポットがあたっていくから、チームで仕事をすることの大切さとか、どんな仕事にも意味があるってことを教えてくれる。仕事やキャリアに行き詰まった時、勇気を与えてくれました」


実用書は「教えられる」だが、自分で「気づく」ことができるのもマンガの良さの一つだ。



「サンデーコミックス『銀の匙』も、仕事に活きる気づきをくれるマンガ。一斉を風靡した『鋼の錬金術師』の作者・荒川弘先生の作品です。ガリ勉の主人公が、親への反発で農業高校に入学するストーリーの中で、他種族の命を食べるということに向き合っていく話。


勉強はできなくても、それぞれの得意分野があるクラスメイトに囲まれて、一人の少年が自分のやりたいことを見つけて、それをビジネスにしていく過程を描いていきます。自分が興味を持ったことを、現実に落とし込んでいく姿を疑似体験できる。転職を考えたい時、自分のキャリアと向き合いたい時に読み返したくなります」


誰かの経験を「疑似体験できる」のは、現実的なストーリーの作品が持つ魅力の一つだ。


女性ならモーニングコミックス『働きマン』もおすすめできるそう。ジャンプコミックス『左利きのエレン』も、仕事に活きるマンガとして定番だ。



大切な人に勧めたくなるマンガ


おうち時間の過ごし方に悩む人も多い今日このごろ。一緒に住む家族、はたまた離れて住む恋人と、マンガという共通体験を楽しむのもいい。



「ジャンプコミックス『青のフラッグ』は、子どもができたら読ませたいマンガのひとつです。LGBTQ当事者たちが登場する、高校生の青春物語。性の多様性は少しづつ認められつつあるけど、高校生が当事者に接したらこんな感じなんだろうなっていう、リアルさを感じられる。葛藤しながらも受け入れていく友人たちや、当事者の苦悩と成長に涙する場面も。身の回りにそういう子がいた時、子ども自身がそうだった時とか、読んでおいたら救われる部分があると思うんですよね。もちろん大人も、参考にする部分があると思う。青春マンガとしてもいい話なので、すっきりしたい時に読んでほしいです。


女の子なら、デラックスコミックス『カードキャプターさくら』もおすすめです。こちらも”好きの多様性”に自然に触れることができるマンガ」


どちらも難しい題材だが、絵柄の雰囲気的にも読みやすさのあるマンガだ。


「ヤンキーマンガも、意外と大切な人に読んでほしいマンガかも。ヤンキー漫画って、人の本質がすごい描かれてるんですよ。友情とか義理人情とか、大切なことをたくさん教えてくれる。特におすすめしたいのはジャンプコミックス『ろくでなしBLUES』ですね。『ROOKIES』の作者・森田まさのり先生の作品で、ヤンキー漫画の金字塔。『ろくでなしBLUES』のいいところは、主人公がヤンキーだけどワルじゃないこと。ヤンキーっちゃヤンキーなんだけど、同時にボクシングのプロを目指していくから、そんなに悪いこともしないんですよ。倒したやつが全員仲間になっていく過程もハッピーだし、ヤンキー漫画に偏見がある人でも読みやすい。」



子どもや恋人と一緒にマンガを読む休日もいい。読み終わったあとはお互いに感想を言い合おう。昔ながらのヤンキーマンガに抵抗が強いという人には、マガジンコミックス『東京卍リベンジャーズ』もおすすめらしい。


他にも、大作を一気読みしたいなら、サンデーコミックス『からくりサーカス』、ジャンプコミックス『ゴールデンカムイ』などもコバヤシさん太鼓判の作品だ。



 



サブスクや電子書籍をうまく利用しよう


マンガを気軽に読めるサービスもコロナ禍で増えてきているので、便利なサービスを利用して読むのもおすすめだ。コバヤシさんも、イチオシの作品は紙で買いながら、とりあえず気になる程度のものは、書店のマンガレンタルサービスや電子書籍のサブスク、Kindleの読み放題サービスなどをうまく活用しているという。まずはネットで無料立ち読みしてみて、先が気になったらお金をかけてみるのもいい。


Kindleや紙のマンガなら、夜寝る前のブルーライトをカットすることもできる。スマホのいじりすぎで寝付きが悪いという人にもおすすめだ。


 


(取材と文・ミクニシオリ)