海老沼匡に教えてもらった柔道撮影の醍醐味 【アフロスポーツ プロの瞬撮】

 スポーツ専門フォトグラファーチーム『アフロスポーツ』のプロカメラマンが撮影した一瞬の世界を、本人が解説、紹介するコラム「アフロスポーツの『フォトインパクト』」。他では見られないスポーツの一面をお届けします。

撮影/文章:長田洋平(2021年4月4日 全日本選抜柔道体重別選手権 男子 73kg級 準決勝)
柔道の撮影は地味に厳しい。

試合が停滞すると、カメラを持つ手がプルプル震えてくる。地べたに座りながら撮影するため腰と背中も痛くなってくる。
その中で突然のように起こる投げ技を狙い続けるが、良いアングルで決まることなど稀の中の稀だ。その上、1日の試合数は多い。

そんな地味に過酷な柔道撮影の中で楽しさを教えてくれた選手の一人が海老沼匡選手だ。

僕の中では2014年の世界選手権が何より印象深い。
当時66キロ級で世界選手権を連覇していた海老沼は投げの切れが違った。守備を固める選手が多い中で、海老沼は攻撃重視。ガンガン投げを繰り出していく。当然攻めているから投げられもする。そういう時は投げられながらも空中で反転して、一本は回避する。
投げられても投げ返す。スペクタクルな試合展開を受けて、カメラマンは疲れも忘れて撮影に集中するしかなくなる。
結果は優勝、世界選手権3連覇を飾った。
今、この階級は阿部一二三と丸山城志郎が日本の頂点と世界の頂点を同時に争っているが、当時は海老沼の時代だった。

数年前から海老沼は73キロ級に階級変更をしている。しかし、柔道のスタイルは変わっていないように見えた。
今回の写真は2021年全日本選抜体重別選手権・準決勝で勝負が決まった投げ技だ。

パッと見たらどちらが投げて、どちらが受けているのか分かりにくいかもしれないが、それが海老沼らしいと感じる。
一本は柔道撮影の醍醐味だ。忍耐も必要だが、海老沼の柔道は撮影の楽しさを思い出させてくれる。

海老沼匡、31歳。
まだまだ楽しませてほしい。しかし、そう思った矢先に先日、突然の引退発表があった。

「残念」もあるが「感謝」の方が強い。激闘の競技人生、お疲れ様でした。
 

■カメラマンプロフィル
撮影:長田洋平
1986年、東京出身。かに座。
早稲田大学教育学部卒業後、アフロ入社。
2012年ロンドンパラリンピック以降、国内外のスポーツ報道の現場を駆け回っている。
最近では平昌オリンピック、ロシアW杯を取材。
今年の目標は英語習得とボルダリング5級。

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アフロスポーツ

1997年、現代表フォトグラファーである青木紘二のもと「クリエイティブなフォトグラファーチーム」をコンセプトに結成。1998年長野オリンピックでは大会組織委員会のオフィシャルフォトチーム、以降もJOC公式記録の撮影を担当。
各ジャンルに特化した個性的なスポーツフォトグラファーが在籍し、国内外、数々の競技を撮影。放送局や出版社・WEBなど多くの報道媒体にクオリティの高い写真を提供し、スポーツ報道、写真文化の発展に貢献している。

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