片桐仁が“美術館で拍手する”理由とは? 

片桐仁(撮影:上岸卓史 ヘアメイク:邦木奈帆(トゥインクル・コーポレーション) スタイリスト:片岡麻弥子)

美術館には知る楽しみ、感じる楽しみがあふれてる!

 美術館をさまざまな角度から楽しむ片桐。そんな彼の美大生時代とは。

「なんとかして講義に出ずに済ませるかばかり考えてましたね(笑)。学科の講義が全然面白くなくて。でも今思えば、それをつまらないと思う僕自身がつまらない人間だったんでしょうね。だから、美大を出たわりに大して美術の知識を持ってないんです。なので今からでも見聞を広めようと、勉強しています」

 知れば知るほど、楽しさも広がる。

「今日ロケさせていただいた府中市美術館(第6回放送)では『映えるNIPPON 江戸~昭和 名所を描く』展が開催中(7月11日まで)なのですが、日本の近代にはすごい数のアーティストがいたんだということを改めて知ることができたのも面白かったです。作家もさることながら、美術館も日本各地にたくさんありますからね。僕は東京に30年近く住んでいるのに、東京でもまだ行ったことのない美術館なんてたくさんありますから。

 府中市美術館も初めて来たのですが、毎回スタッフから“次はここの美術館でどうでしょう”と言われて、行ったことがないから実際どうか分からないなと思っても、行ってみると、こんなに面白い美術館があったんだと毎回思います。あまり知らなかっり興味がなかった分野の展示をやっていたりしても、実際に見たりキュレーターさんの話を伺うと、こんな面白さがあったのかと思うんです。『映えるNIPPON』も、風景画を“映え”という切り口で紹介するという学芸員さんの視点で、この時代の風景画の魅力を再発見できました 」

 知らなかった視点が自分の中に生まれてくるのも、美術館の醍醐味。

「場所の力ってありますよね。やっぱり美術館の空間で、直接自分の目で見て感じることでこそ感じられるものがあると思います。劇場と同じ、その場で直接本物を見て、その世界に入り込むという体験は、美術館ならではの魅力だと思います」

 そんな片桐がプライベートでよく行くお気に入りの美術館は?

「上野には上野の森美術館や国立西洋美術館、東京都美術館などがあるし、六本木も森美術館や新国立美術館などがあるのでよく行きます。あと南青山の岡本太郎記念館とか根津美術館も好きだし、練馬区立美術館、世田谷美術館、もちろん東京都現代美術館も好きだし…」

 そしてもちろん、いつかは海外ロケも?

「海外はそれこそ美術館が王宮だったり、すごいところがたくさんありますからね。20歳くらいのころウィーンの美術史美術館に行ったのですが、ブリューゲルの大作の前で、おばあさんが模写しているんですよ。真ん前に陣取っているので絵がよく見えないうえに、よく見たらおばあさん、油絵を描いているんです。日本なんてペンを持つのもいけないのに、文化が違うな、と思いましたね。まあ25年以上も前のことですけど。

 舞台の地方公演があると、時間を見つけてそこの美術館に足を運ぶんですが、今はコロナでそういう機会もなくなってしまって。この番組でいつか、スペシャル回があれば、海外ロケに行けるかもしれない、と楽しみに待っておきます(笑)」

 そしてさらに、いつかはアーティスト片桐仁の作品を美術館に…?

「以前に青森県立美術館で展覧会をさせていただいたのですが、またどこかの現代美術館で個展ができたらいいなと思っています。でも僕の作品はグッズ感があるせいなのか、なかなかコレクションとか、価値が出るという話がないんですよね。芸大のとある先生からは“言い切った者勝ち。片桐くんはこの作品は100万円ですと言い切る覚悟が足りない”と言われましたけど(笑)。確かに考えれば、現代アートにはびっくりするようなコレクションも多いですよね。東京都現代美術館でも、雑巾をギュッとしぼったような作品(髙柳恵里作品『Magic』)を見てびっくりしました」

 なぜこれがアートなのか?と考えることも、アートの楽しみなのかもしれない。

「本当に自由に考えたり楽しんだり、好きな作品を見つけたりしてほしいです。何か少しでも興味のある作品や作家さんをきっかけにしてもいいし、グッズショップを見に行くのでもいいし。番組では、これまでの美術館紹介番組とはひと味違うアプローチをしているので、美術好きな方も、あまり興味が無かったという人も、楽しんでいただければうれしいです」

(TOKYO HEADLINE・秋吉布由子)