自販機の進化が止まらない! 続々と生まれる進化型自販機、その背景とは?

 自販機と言えば飲料を売るためのもの…、といった認識はもう古い。最近は飲料以外の商品を販売するものや新たな機能が付いた自販機が増えているのをご存じだろうか?

 コロナ禍により非対面・非接触が求められる中、自販機は消費者と従業員の接触無しで商品を販売することが可能となる。また、店舗が休業していても、自社の商品を販売できることから、自販機が再び注目され進化系自販機が増えてきているのだ。

 

 アパレルやアクセサリーを販売する自販機や、おもちゃやぬいぐるみなどのグッズを販売する自販機など、その幅は大きく広がっているが、特に人気を博しているのがラーメンやパン、総菜などの食事系の自販機。前述したようにコロナ禍で営業時間の短縮をせざるを得ない店舗も、冷凍のテイクアウト商品は24時間販売することが可能になる。冷凍食品の販売を可能にする自販機「ど冷えもん」を生み出したのは、自販機メーカーであるサンデン・リテールシステムだ。特別な訓練を受けたオペレーターでなくても商品の補充をしたり、タッチパネルで商品を管理したりできる。アルバイトでも簡単に商品補充ができる点が評価され、ラーメン屋などのいわゆる個店で広がりを見せている。

 

 しかし、メインともいえる飲料の自販機だけで見ると総市場は年々減少傾向にある。特に20年以降は新型コロナウイルスの影響でリモートワークが普及し、オフィスへの出勤率が下がったことや、外出自粛によりレジャー施設などの売上が下がっていることが影響し、自販機の総市場は大きく減少している。そんな逆風の中、あえて「オフィスなどの法人企業に注力する」とサントリー食品インターナショナル(以下、サントリー)が発表した。その理由としてサントリーは、自社の行ったアンケートでオフィス内の自販機を利用する人は19%にとどまり、半数以上が飲料を持ち込んでいたことを受け、「当社の努力不足であった反面、自販機にはまだ伸びしろがあると考えた」「自販機に付加価値を付けることで法人が抱える経営課題の解決に向けた提案をしていく」と説明する。解決する経営課題は、「コミュニケーション活性化」「職場環境充実」「健康経営サポート」の3つの領域。

「コミュニケーションの活性化」では、昨年発表された「社長のおごり自販機」を全国展開するとした。社員2人が揃い、自販機の対象部分に2枚の社員証を同時にタッチすることで、それぞれ1本ずつ飲み物を無料で受け取れるサービスだ。すでに導入した企業からは「久しぶりに同期と話すきっかけになった」「雑談から新しいアイデアが生まれた」など好評を得ており、同社は目標を22年中に100社から200社へと上方修正したと話す。

「職場環境充実」では、自販機をセルフレジとして活用し、気軽に軽食の販売が導入できる「ボスマート」を開発した。飲料自販機には投入商品のラインアップよりもボタンが多く存在する機種があり、その余剰ボタンを活用して、カップ麺やパンなどの軽食や菓子が購入できるサービスだ。特に郊外の企業では、近くにコンビニや飲食店がなく、ちょっとした小腹満たしをするにも不便な状況にある。そういった従業員のちょっとした不便さを解決したいと今回のサービスを開発した。

「健康経営サポート」では、法人向けの熱中症対策を自販機でお助けするというサービスを開発。自販機と専用カードを使用することで利用状況の確認ができるとともに、簡単に冷えた状態で飲料配布ができる新サービスを「DAKARA給水所」と名付けて発表した。主に工場などの高温作業所に向けての提案だ。

 サントリーは、今後も「自販機を通じてオフィスを“ちょっとハッピーにする”取り組みを継続して行っていく」と語った。

 自販機の進化には非対面・非接触ニーズの高まりと新しいアイデアによる付加価値提案が背景にあることが分かった。今後も自販機の進化に注目したい。