シリアの青年が見上げる戦争のある日常を切り取った映画『空のない街 A city without sky』【黒田勇樹のハイパーメディア鑑賞記】

こんにちは、黒田勇樹です。

三栄町LIVE×黒田勇樹プロデュースvol.12『黒田薔薇少女地獄』の稽古が始まりました。

やっぱり稽古が始まると一段とテンションが上がります。このまま、まずは初日まで突っ走ります。

関係者の皆さん、よろしくお願いします。

すでにチケットが売り切れそうとの話も聞きました。興味のある方はお早めにぜひ。

では今週も始めましょう。

『空のない街』(オンライン:6月4日より配信)

 ペンは剣よりも強し、と、言いますがじゃあ、映画とスマホとミサイル、どれが一番強いの?

 いや、もう“強いってなに!?”

 と、世界に問いかけたくなるような、そんな映画でした。
 作品は24才のシリアの青年Zain Issa監督が、スマートホンで、戦地の現状を淡々と撮り続けショートフィルムとしてまとめたもの。

 5分38秒という非常にコンパクトな長さなのですが、鳴り続ける銃声と、立ち上る煙、そして
「僕は、この長編映画をずっと見ている」というナレーションで、まるで3時間越えの映画を観たような体験を、もたらされる…あたえられる…体験できる…いや、

 体験“させられる”

 そういう感覚を覚えました。
 アラブの春を始まりとすれば11年、第一次世界大戦からなら108年、人類の歴史を考えれば、もーーーっと、ずーーーっと前から、一度たりとも途切れることなく、どこかで続いている、この“戦争という映画”のエンドロールを、みんなが待っているんです。

 後半はずっと戦地を背景に、鳩たちを撮り続けているのですが、そこでも「鳩も僕もなんでここから逃げ出さないんだろう」という、真理に近い命題を訴えかけていて、映画の本質であり、なんなら、この世界全体がそうであるように「自問するしかない」強烈なプレッシャーを、投げかけられました。

 スマホというツールと映画というメディア、そして現代を生きる若者というエネルギー。
 この“新しい”3つが重なった時に発するメッセージを、是非、多くの方に受け取ってほしいです。

 本作は現在開催中のSSFF & ASIA 2022で視聴できるんですが、他にも世界各国のショートムービー、同じスマホ部門であれば、コロナ禍で家から出られない子供たちをスマホで撮って楽しい映画にしちゃった「ミーティングの後で」など、現代ならではの作品が沢山。

 ロシアの作品を除外せずに上映していることにも、僕はとても素晴らしい決断だと思っています。

 世界のことも映画のこともぎゅっとつまったSSFF & ASIA 2022。
 空のない街の様な映画がたくさん集まり、沢山の人に届き、何かが変わればいいなと強く思いました。

『SSFF & ASIA 2022』メインビジュアル

ショートショート フィルムフェスティバル & アジア 2022
【開催期間】6月7日(火)~20日(月)
オンライン会場は4月28日(木)~6月30日(木)
【上映会場】オンライン会場および都内複数の会場にて予定
※開催期間は各会場によって異なる
【料金】会場上映:無料 ※一部有料イベントあり
【問い合わせ】03-5474-8844
【オフィシャルサイト】https://www.shortshorts.org/
※新型コロナウイルスの感染状況を踏まえ、時期または内容を変更する場合あり

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黒田勇樹(くろだ・ゆうき)
1982年、東京都生まれ。幼少時より俳優として舞台やドラマ、映画、CMなどで活躍。
主な出演ドラマ作品に『人間・失格 たとえば僕が死んだら』『セカンド・チャンス』(ともにTBS)、『ひとつ屋根の下2』(フジテレビ)など。山田洋次監督映画『学校III』にて日本アカデミー賞新人男優賞やキネマ旬報新人男優賞などを受賞。2010年5月をもって俳優業を引退し、「ハイパーメディアフリーター」と名乗り、ネットを中心に活動を始めるが2014年に「俳優復帰」を宣言し、小劇場を中心に精力的に活動を再開。
2016年に監督映画「恐怖!セミ男」がゆうばり国際ファンタスティック映画祭にて上映。
現在は、映画やドラマ監督、舞台の脚本演出など幅広く活動中。

公式サイト:黒田運送(株)
Twitterアカウント:@yuukikuroda23