世界屈指の動物標本と考える「私たちは誰なのか」 上野「WHO ARE WE 観察と発見の生物学」

 東京・上野の国立科学博物館にて現在、巡回展「WHO ARE WE 観察と発見の生物学」が開催されている。およそ490万点という膨大な数の標本を所有している国立科学博物館。普段は収蔵庫に保管されている標本の中から、世界屈指の動物標本コレクションとして知られる「ヨシモトコレクション」を中心に、選りすぐりの哺乳類などの標本を紹介する。

国立科学博物館で開催中の巡回展「WHO ARE WE 観察と発見の生物学」

 日本館1階 企画展示室にて開催中の「WHO ARE WE 観察と発見の生物学」。“観察の眼、発見の芽”をテーマに、声なき標本とじっくり向き合うことで、他の動物との意外な共通点や私たちの日常とのつながりなど、観覧者自身が学びや問いを発見できる展示内容。キャプションによる説明は最小限に止め、動物の剥製を1点1点美術作品のように観察し、タイトルのついた引き出しを開けていくと、観察のヒントや発見の芽を見つけることができる。

引き出しをスライドさせると観察のヒントが現れる

 たとえば「哺乳類とは何か」というコーナーにある一見爬虫類のような骨格標本。近くの引き出しを開けると、哺乳類の歴史は「ほんの1.9億年」で、動物全体の「わずか5400種」、哺乳類ならではの特徴などが示され、最初の骨格標本が哺乳類の祖先と近縁な単弓類の「ディメトロドン」であることが分かる。

5400種すべての哺乳類の名前が入っている引き出し

「名前の群れ」という引き出しには、すべての哺乳類の名前を書いたプレートが入っていて、一番上に「ヒト」が示されることで、私たちも哺乳類の一種であることを表している。展示全体を通して標本を見て考え、そのヒントを探していくという流れで構成し、同館動物研究部研究主幹で監修者の川田伸一郎さんは「図書館に行って調べ物をするような感覚で、いろんなものを見ながら少しずつ答えを見つけてもらいたい」と語る。

1 2 3 4 5>>>