前田健太「手術はネガティブじゃない」リハビリ生活で得た “逆境を乗り越える力” とは

“水” にこだわることで「体調が整ったと感じる機会が増えました」と前田

前田が大切にしている “小さな目標” と “大きなゴール”

 プライベートではコロナ禍で始めたという自炊が気分転換になったという。

「夜に試合がないので、すごく自分の時間があって料理を頑張りました。場所がフロリダの田舎のほうにいたので日本食レストランが全然なくて、もう自分で作ったほうがいいなと。ブロッコリーと海老を中華風に炒めたり、餡かけにして食べてみたりとか。一度気分転換にコロッケを作ったんですけど、じゃがいもをつぶしてからめちゃくちゃ時間がかかるじゃないですか。美味しかったんですけど、揚げ物はもういいかなと。1回作ったら満足しました。ただ新しい料理にチャレンジしてみて、だいぶレパートリーが増えましたね」

 栄養が足りないと感じる時は「鍋」で野菜やタンパク質を摂るという前田。ざっくばらんな男飯を披露するなか、ストイックにこだわるのは「水」。疲れが取れやすくなったり、試合中に足がつることが減ったりした経験から、ブランドアンバサダーを務めるエステプロ・ラボの「ファストプロウォーター」を愛飲しているという。

「これまでは正直、ご飯と一緒で “飲めればいいや” くらいの感覚でしたけど、人間の体のほとんどは水分でできていると考えると、やっぱり “水” って大事だなと思い始めたんです。僕は日頃から水をたくさん摂るほうで、喉が渇いた状態にならないように、こまめに水分補給したいタイプ。とはいえ、これまで水の “質” にこだわっていたというわけではなかったんですよね。唯一、糖質の高いジュースなどは飲まないようにしていたくらい。

 それから『ファストプロウォーター』に出会って、愛飲しているうちに “やっぱり水って大事だな” と。一番変わったところは、体調が整ったと感じる機会が増えました。もともと僕は気温が下がってくると体調を悪くしがちだったのですが、体のだるさや体調が悪化することが減りました。プレーをする上で、基本的なところが大事だと改めて気づくことができたのは良かった。毎日安心して飲める水があると、身も心も整うようになって、いい方向に向かっていくのかなと思います」

 改めて「逆境の乗り越え方」を聞いてみると、前田が大切にしている “小さな目標” と “大きなゴール” が見えてきた。

「目標はあまりひとつに決めていないです。もちろん大きなゴールはひとつかもしれないですけど、その日によって簡単なハードルもあるし、高いハードルもある。例えば、トレーニングメニューだったら “今日頑張ったら明日はちょっと楽になれるかな”  とか。そうしたら今日頑張れるじゃないですか。逆に“今日はちょっと辛い。できないな” と思った日は、もっと小さなハードルでいい。 “今日はこれぐらい、その代わり明日はその倍できたらいい” と。そういう意味では、毎日自分の気分や、やらないといけないことに対してモチベーションを持っていくようにしています。 “ゼロにはしない” ということが大事。1でも良いので、ちょっとずつ積み重ねていけば、大きなものになると信じています」

 高いレベルでのモチベーション維持が求められるメジャーの世界。現在、逆境に直面する人にアドバイスがあるとすれば。

「やはりイメージするしかないと思う。僕自身も、手術をして1年間リハビリというのは、僕の中では逆境でした。ただ、その先を見据えるというか、ここを乗り越えたときに自分がどうなりたいのか。あるいは、乗り越えられなかった時をイメージした時に、 “必ず乗り越える” と、いいものをイメージしたほうがいいじゃないですか。 “ここで諦めたらこういうことが待ってる、でも頑張ったらこういうことが待ってる” となると、多分頑張れる。なので、ここを頑張ったら自分はこうなれるとか、なりたいイメージを強く持つと今の苦しいことも我慢できるんじゃないかな」

 手術を経て伝えたいこともできた。

「日本では手術ってネガティブなイメージがあると思いますが、アメリカは全然そんなことない。ポジティブなイメージというか、復帰できるプランがしっかりあるので、手術に対してネガティブな気持ちを持っているかもしれない日本の子どもたちや学生の人に、僕みたいに “手術しても復帰できるよ” という姿を見せたいですね。頑張ればこうやっていい形で戻れるんだという、励みになるようなピッチングを見せたいです」

 今シーズン、再びマウンドで輝く日も近そうだ。

(取材・文:丸山裕理)