4月からは大分県パートナーシップ宣誓制度がスタート。SDGsジェンダー主流化に向けた取り組みを推進

今後は「多様性の尊重=人権の尊重ととらえ、人権デューディリジェンス(企業活動における人権リスクを抑える取り組み)の観点からも労使で多様性の尊重を推進していく」と説明する田島氏

 次に、MGUジェンダー共同多様性推進委員会リーダーの田島由紀子氏が「SOGIが尊重される職場づくりに向けたMGUの取り組み」と題し、MGUのダイバーシティ推進ビジョンを紹介。マレリグループ労使で取り組んできた性の多様性を尊重する体制づくりや職場改善策などを説明するとともに、誰もが安心して自分らしく働ける職場風土の醸成に向けた今後の取り組みについて説明した。

 また、マレリグループ内においては、独自の社内パートナーシップ制度を導入したものの、自治体で発行されるパートナーシップ制度の証明の提出を前提としているため、パートナーシップ制度を導入していない自治体に住む従業員が自社の福利厚生を利用することができないという自社の制度の課題感についても語った。

 今回、大分県のパートナーシップ制度の導入叶うことで、マレリ九州(株)に就業する多くの従業員が自社の制度の適用の対象になったが、行政の施策が広範囲に広がることで、マレリグループが継続的に取り組んでいる「多様性が尊重され、誰もが安心して活躍できるインクルーシブな職場づくり」が、今後、他の企業にも広がっていくことを強く願うとも語った。

 続いて、過去2回のSOGIセミナーで講師を務めてきた加藤岳氏が「誰もが安心して自分らしく働ける職場をめざして」と題して講演をおこない、性の構成要素やLGBTQ・SOGIの基礎知識のほか、社会や職場で性的少数者が抱える困難などについて、自身の経験などを交えて説明。就職や転職などにおけるハラスメントの事例紹介やアウティングの危険性などに言及しつつ、「職場で自身が性的少数者であることを伝えていない割合は約8割です。企業の性的少数者への対応が遅れているため、性的少数者の可視化が進みにくい現状があります」と指摘した。一方で、「職場の誰かにカミングアウトしていると勤続意欲が高まり離職率も減ります。また、差別的な言動などがない職場では勤続意識も高くなります」と安心して働ける職場づくりの必要性を訴えた。

 学校の教師をしていたトランスジェンダーの実弟や加藤氏の家族を取り巻く困難などが描かれたショートフィルムが投影され、出席者は性的少数者が抱えるその厳しい現実を目の当たりにして神妙な面持ちとなって映像に見入っていた。投影後に加藤氏は「教師をしていた弟が職場を後にした理由は、校長先生のせいでも、生徒たちのせいでも、弟のせいでもありません。理解のない社会が弟を辞職に追い込んだのです。今の社会構造は、グラスにヒビが入っているような状態であり、水を注ぐとヒビの隙間から漏れていきます。性的少数者はそのような社会構造の中で、地域社会や職場で、グラスから漏れ続けています。そのヒビを埋めるために、自治体にパートナーシップ制度を求める活動や企業で性的少数者に配慮した諸施策が進むための取り組みに力を入れる必要があるのです」と参加者に語りかけた。