〈赤ペン瀧川×山口ヒロキ対談 前編〉瀧川「AIが実写の作品と融合したときにすごい革命が起こりそうな感じがする」 8・29からアップリンク吉祥寺で「generAIdoscope」公開【AI映画の現在と未来】

ツールのすさまじい進化による作品の仕上がりの変化にびっくり(撮影・蔦野裕)

山口監督「AIはあくまでツールの一個として使っているだけ」

瀧川「そして、そこの市場がパッと広がって、これだけ熾烈な開発戦争が行われているということは、これが主流になるとみんなが思い始めているということですよね。ここに大きな市場が生まれるという。そうじゃなきゃこのスピードで開発されないですよね。多分、まだ今は風当たりが強いかもしれないですけど、きっと当たり前になっていくんだろうな、という感じはすごくします。でも仕事を奪われてしまう人が出るっていうことはあるかもしれないですね。だって僕はエンドロールの短さにすげーびっくりしましたもん(笑)。 このCGのこの規模のこのクオリティのエンドロールにしてはどんだけ人が少ないんだよって(笑)。HIROKI YAMAGUCHIがいっぱいあって、エンドロールのスタッフ人数が少ねえ!と思って、すごいびっくりしました。

 今年のアカデミー賞で長編アニメーション賞を受賞した、ラトビアのクリエイターが作った『Flow』という作品があって。対抗ノミネートはドリームワークスとかディズニーピクサーみたいな大手プロダクションが何百億ってかけて作った作品なんですけど、結局取ったのはインディペンデントなラトビアのクリエイターが40~50人ぐらいのスタッフでオープンソースで作った作品なんです。とんでもないジャイアントキリングなんですよ。予算も50分の1、スタッフも10分の1以下。でエンドロールやっぱり超短くて衝撃を受けたんですよ。ディズニーピクサーなんてすごいですから。CGアーティストだけで、もうぎゅうぎゅうのエンドロールが永遠に流れ続けている。だから山口監督の作品もこれだけの人数でこの15分のSF映画が作れるんだっていうことにびっくりして“こうなっていくんだな”と思いました。確かにこの状況をみると“俺の仕事を奪われるかも”っていうふうに思う人はいるかもしれない。でも僕なんかは例えば生成AIで作られる映画がこれからヒットしていったりたくさんの量が作られたら、逆にアナログの価値が高まると思うんです。再評価されると思うんですよ。なので両方とも走らせていけば結局両方ともいい感じになると思っていて、食い合うようなことはないと思うんですけどね」

山口「AIばかりにはならないし、あくまでツールの一個として使っているだけという気持ちでいます。こればっかりで映画を作りたいわけでもない。ただ実写に取り入れたほうが絶対いいかなと思っています」

瀧川「それはすごく思いました。AIが実写の作品と融合したときに、どこをAIに任せて、どこを実写でというバランスが取れたときに、すごい革命が起こりそうな感じがするんですよね。その時に仕事を失う人はいるかもしれないけど」

山口「でも結構新しい仕事も生み出されているんです。この作品を作る時も一人でやっていたわけではなくて、僕が画像を作ってそれを動かすには分担してやってもらわないと間に合わなかったので、6人に分散して作業して動画生成をやってもらいました」

瀧川「各セクションごとに仕事を分業したってことですよね」

山口「漫画家さんみたいな感じ。アニメーションの現場というより本当に漫画家さんの現場に近くて。頑張ろうと思えば監督一人で全部できるんですけど、漫画家さんも一緒で分担したほうが早い」

瀧川「背景は君に、ベタ塗りは君にという感じですね」

山口「難しそうな、自分のこだわりのあるカットは自分でやる。そういう分担の仕方でやっていくと、ここに新たな仕事が増えていくと思います。仕事の種類が変わるだけで、人は必要です」
〈後編に続く〉

『generAIdoscope:ジェネレイドスコープ』
原作・監督:安達寛高(モンキーズ・オデッセイ)、曽根 剛(AZUSA)、山口ヒロキ(グランマレビト)/8月29日(金)よりアップリンク吉祥寺で公開
最新情報 https://x.com/realcoffeeinc

『グランマレビト』ウェブサイト( https://gaumapix.jp/grandmalevit
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