〈赤ペン瀧川×山口ヒロキ対談 前編〉瀧川「AIが実写の作品と融合したときにすごい革命が起こりそうな感じがする」 8・29からアップリンク吉祥寺で「generAIdoscope」公開【AI映画の現在と未来】

 8月29日から『generAIdoscope:ジェネレイドスコープ』という映画が東京・吉祥寺のアップリンク吉祥寺にて公開される。この映画は3人の監督によるオムニバス形式の作品で、いずれもオリジナルの物語を全編生成AIで製作するというチャレンジングなものになっている。

 昨今よく耳にするものの、実際のところよく分からない部分も多い「生成AIで製作された映画」について、同作の中の『グランマレビト』を手掛けた映画監督・映像ディレクターの山口ヒロキ監督に俳優と映画プレゼンターという二つの顔を持つ赤ペン瀧川が迫った。(全2回 前編)

俳優、そして映画プレゼンターの赤ペン瀧川(撮影・蔦野裕)

赤ペン瀧川「そもそもなんでAIで映画を作ろうと?」

 まずは赤ペン瀧川さんにおうかがいしたいのですが「AI映画」というものについてはどういうイメージを持たれていますか?
瀧川「これまで見た映画の中に実はその技術が紛れ込んでいたということはあったかもしれないですけど、基本的に僕は生成AIから生み出された映画を見たことがなくて。それで『グランマレビト』とその前作の『IMPROVEMENT CYCLE』を見たら、課題も見えるんだけど、すごい可能性があるってことが分かりました。見慣れていないだけで自分が想像しているものよりも圧倒的に良かった。AIが作った動画や画像ってSNSで流れてくるやつの中には見ていて違和感があるものが結構あったんですが、映画という作品としてこうやって仕上がった時に全く違和感がない、全然問題なく映画として受け入れられるなって思って、すごい可能性しかないなって思いました。

 ただ、そもそもなんでこれを作ろうと思ったのかということと、どういう手順を踏んで作られていくのか。AIで映画を作るって聞いた時の僕の印象としてはもう、ドラえもんみたいな感じで。“感動できる映画を作って”って言ったら“はい、できました”って出来上がってくるようなイメージでしかないんですよ。でも実際はきっとそうではないじゃないですか。そもそも実写映画を撮り続けてきて、AIを作ることになったきっかけは何だったんですか?」

山口「きっかけはこの映画のプロデューサーもやってくれている弊社プロデューサー寺嶋が以前アメリカに住んでいて、AIの開発関係の仕事をしていたんですよ。寺嶋さんから “そろそろAIで動画が作れるようになるから、やったほうがいいですよ”って2023年春ぐらいからずっと言われ続けていて。その時AIが作った動画みたいなものも送ってくれたんですけど、それを見るとまだ全然で。ウィル・スミスがスパゲッティーを食べるみたいな、あの頃の映像です。このAIの映像では特に何も活用方法は無いなと思っていたんですが、2023年の年末ぐらいになってくると、急激にAIが成長してきた。作り出された映像がSNSなどにアップされていて、それらを見た瞬間にまさに瀧川さんと同じで“これはすごい可能性がある。映画が作れるようになるはず”と思って始めたのが、2023年の年末ぐらいです」

瀧川「開発スピードが尋常じゃないんですね」

山口「いわゆる指数関数的成長みたいなことがAIに起こりました。ChatGPTが公開されて、そこからの流れですね。僕が勉強を始めたのは2023年の年末ぐらいからで、ちょうど勉強しているところで寺嶋さんが日本に帰ってきた。じゃあプロデューサーをやってもらえれば一緒に短編ぐらい作れそうということで、6分の作品を作ったんです。それをいろいろな海外の映画祭に出してみたら入選したので、そこからそれが仕事になり始めた」

瀧川「海外にはAIで作られた映画の映画祭みたいなものがあるんですね?」

山口「AI映画祭は2023年頃から始まって、AI映画祭元年みたいな感じで2024年にそのような映画祭が急激に増えました。始めはただの短編映画祭に出していたんですけど、そのうちにAI映画祭がいっぱいでき始めたのでそちらにも出していきました」

1 2 3 4 5>>>