【短期集中連載】〈日本で最も歴史の長いプロ格闘技・シュートボクシング40年史〉第12回 “ツヨカワGirls真夏の祭典”の代名詞はRENA!

 来る11月24日、東京・国立代々木競技場第2体育館で創立40周年記念興行「〜SHOOT BOXING 40th Anniversary〜S-cup×GZT 2025」を行うシュートボクシング。プロ格闘技団体として同じ名前では史上最長となる40年という長い歴史を振り返る。(文・布施鋼治/写真提供・一般社団法人シュートボクシング協会)

第1回「Girls S-cup」を制したRENA

ライバル・神村エリカとの闘い

 男子のトーナメントがあれば、女子のトーナメントがあってもいいじゃないか。

 2009年8月23日、東京で“ツヨカワGirls真夏の祭典”と銘打ち、シュートボクシング(以下SB)初の女子トーナメント『SHOOT BOXING GIRLS TOURNAMENT Girls S-cup』がスタート。その後もGirls S-cupは2019年までコンスタントに毎年開催されている。

 この大会の主役は第1回大会開催時にはまだ無冠ながら、周囲の期待に応えるかのように1回戦でMMAファイターの吉田正子を、続く準決勝では空手出身の石岡沙織を、決勝ではV一(のちのV.V.Mei)を相手に3連勝を飾って優勝したRENAだろう。

 当時RENAは18歳。試合後は青春の全てをSBにかける女子高生らしいコメントを残した。「この夏は何も満喫せずに来ており、海も祭りも花火も今年は何にもしてません。でも、これ(S-cup)を獲れたことで最高の夏になりました」

 その後もRENAはGirls S-cupの顔として活躍し、第2回、第4回、第6回と出場したトーナメント全てで優勝するという快挙を成し遂げている。日本人選手の中で最もライバルというべきドラマを見せてくれたのは神村エリカ(TARGET)との闘いだろう。

 初顔合わせは2011年4月23日、当初は韓国人選手との一戦が予定されていたが、その相手が東日本大震災の影響を心配して来日を拒否。急きょ、当時飛ぶ鳥を落とす勢いだった神村との限りなく実戦に近いエキシビションマッチが組まれたのだ。

 エキシなので勝敗がつくことはなかったが、神村からダウンを奪われるなど、試合内容は散々だった。このままで終わるわけにはいかない。同年8月19日開催の第3回Girls S-cupで優勝した神村に対してRENAは宣戦布告。舞台を神村のホームであるRISEに移して同年11月23日に初代RISE QUEEN王座をかけて再びあいまみえた。ここでRENAは神村を見事に攻略。リベンジを果たすとともに、同王座を獲得した。

 翌2012年8月25日開催の第4回Girls S-cupではRENAも神村もエントリーしたので3度目の顔合わせが期待されたが、神村は初戦でロレーナ・クライン(オランダ)にまさかの敗北を喫してしまい、頂上対決は幻と化す。

 トーナメントでは期待された対決が必ずしも行われるわけではない。それがトーナメントの面白さであり、難しさでもある。結局、決勝は第1回大会同様、RENAとV.V.Meiの顔合わせとなり、RENAが現在はアナウンサーや俳優として活躍中のMeiを返り討ちにした。

RIZINに参戦。2015年大晦日からはSBとMMAの二刀流に

 トーナメントだけではない。RENAはGirls S-cupで組まれたワンマッチでも際立った存在感を見せた。中でも2015年8月21日、東京・大田区総合体育館で行われた第7回大会ではタイ国女子ボクシング・ミニフライ級王者のカネ・チョー.カンピロムと初代SB女子世界フライ級王座を争い、1Rから打っても投げても極めてもカネを圧倒。最後は3Rに首相撲からのヒザ蹴りでレフェリーストップを呼び込みTKO勝ちを収めた。

 試合後、世界王者となったRENAは真新しいチャンピオンベルトとともに抱負を述べた。
「今後はこのベルトの価値をどんどん高めていく。そして誰とやってもRENAは負けないという最高の位置まで行きたい」

 有言実行で同年12月からRENAはRIZINのリングで闘うようになる。SBとMMAの二刀流になったのだ。翌2016年7月7日の第8回Girls S-cupにUターン。中国散打の三冠王・クラウディア・パウィカ(ポーランド)を挑戦者に迎え、3Rにヒザ蹴りでTKO。初防衛に成功した。

 2018年7月6日開催の第10回大会ではSBのリングでMMAにも初めて挑戦し、エレイン“パンテラ”リアル(ブラジル)を相手に勝利を収めている。もう一度、Girls S-cupのリングでRENAの「1、2、3、SHOOT!」のシャウトを耳にしたい。(第13回に続く)