右手がブロッコリーに!? 世にも奇妙な韓国文学『ブロッコリーパンチ』著者、イ・ユリとは
日本でも続々翻訳書が刊行され、急速に存在感が高まっている韓国文学。そんな中で、少し不思議な手触りの短編集『ブロッコリーパンチ』(リトルモア)が発売された。著者のイ・ユリさんは本書でデビューし、韓国では16刷を突破したという話題作。亡くなった父親の骨を植木にまいたらしゃべり出し、恋人の右手が突然ブロッコリーに……その独自の作風は “イ・ユリ・ユニバース” と呼ばれている。11月に行われた韓国文学の祭典「K-BOOKフェスティバル」で初来日したユリさんに、創作への思いや日韓の読書環境の違いについて聞いた。
※インタビューの中で『ブロッコリーパンチ』の内容に触れている部分があります。
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本書に収録された「赤い実」でデビューした気鋭の作家、イ・ユリさん。初の邦訳となる『ブロッコリーパンチ』は奇妙なタイトルも去ることながら、日常生活と地続きの風変わりな世界があまりにも自然に描かれ、“こんなこともあるかも” と思ってしまう作品ばかり。少し恥ずかしそうに取材に現れたユリさんは、カジュアルなファッションがよく似合う今時の女性。なぜ、作家になろうと思ったのだろうか。
「幼い頃から小説を書くのが好きで、チャンスがあれば作家になりたいと夢見ていましたが、まさか本当になれるとは思いませんでした。大学では文学を専攻していて、作家になるまでに10年の準備期間を要しましたが、本当に実現するとは思いませんでした。
韓国では “登壇” といって、新人文学賞や公募に入選して初めてプロの作家として認められます。韓国の新人作家の登竜門に〈新春文芸〉というコンクールがあって、大手新聞社が新作を募集して毎年元旦に入選作を発表するのですが、私も『赤い実』が京郷新聞の新春文芸に入選して作家活動を始めました。投稿するために10年ほど準備を重ね、その間に書きためた作品があったおかげで、デビューしてからも活動を続けることができました」
デビュー作の「赤い実」や、表題作で韓国の高校の教科書に採用された「ブロッコリーパンチ」をはじめ、推しのためにスーツケースにつかまり海に浮かぶ「ぷかぷか」、元恋人が置いていったイグアナに水泳を教える「イグアナと私」など、“一体どうしてこんなことに” という小説を8編収録。その発想はどこから?
「執筆する時に心がけているのは読者にとって面白い小説を書くことです。この物語は面白いかどうか、どのように展開すれば面白くなるかを一番大切に考えています。物語は日常生活の中で得たアイデアをもとに構想し、常に面白いかどうかを自分に問いかけながら、次の展開を練り上げます」

