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GWでお金使いすぎないようにしないと… イキウメ『太陽』

2016.04.24 Vol.665

 2011年に初演し、2014年には蜷川幸雄演出で『太陽2068』として上演された『太陽』を本家本元のイキウメが再演する。

 夜しか生きられない進化した人類「ノクス」と太陽の下で暮らす旧人類「キュリオ」という2つのコミュニティーに分かれてしまった近未来を描く物語。

 世界はバイオテロにより拡散したウイルスで人口が激減、政治経済は破綻し、社会基盤が破壊される。しかし数年後、感染者の中で奇跡的に回復した人々は人間をはるかに上回る身体に変異。それは頭脳明晰で若く健康な肉体を長く維持できるというものだったが、その反面、紫外線に弱く昼間は活動できなかった。やがて政治経済の中心はノクスに移行し、人口も逆転する。キュリオの中にはノクスにあこがれる者もいれば、ノクスを忌み嫌う者もいた。

 壮大なSFの設定ではあるが、差別、嫉妬、郷土愛、自尊心といった感情は普遍的なものなのだと改めて感じさせる作品。

 4月23日からは舞台に先駆け映画が公開。こちらは神木隆之介、門脇麦主演で、舞台とはまた違った雰囲気の作品となっている。2月に発表された小説と合わせてさまざまな角度から作品を味わってみるのもいい。

対象とか場面は違えど「抗う」人を見るのは面白い Wけんじ企画『ザ・レジスタンス、抵抗』

2016.04.10 Vol.664

 Wけんじと聞くとある一定の世代の人は「やんなっ」でおなじみの東京の漫才コンビを頭に浮かべるかもしれないが、お亡くなりになられているので、もちろんそっちの話ではない。

 城山羊の会の山内ケンジと青年団のベテラン俳優である山内健司という2人の“けんじ”ががっぷり四つを組んでの新企画。
 山内ケンジも本名は「健司」で2人は同姓同名。もともとCMディレクターであるケンジが演劇活動を始めた当初は「健司」で活動していたのだが、青年団に山内健司がいたことから途中で改名し、現在に至る。

 今回のお話は山内ケンジ曰く「山内健司さんが抵抗し、社会から『無駄な抵抗はやめろ』と言われる物語。 同時にわたしである山内健司の抵抗でもあります」とのこと。会社や家庭での問題。性欲の減退や更年期に抗いながらたどりついた男の顛末が描かれる。

 公演中、28日には平田オリザ×山内ケンジ、1、4(夜)、6日にはWけんじ(山内ケンジ×山内健司)、10日には岩井秀人(ハイバイ)×山内ケンジのアフタートークもある。前売り完売の回もあるが、当日券はわずかながら出るので気になる人はぜひ!

対象とか場面は違えど「抗う」人を見るのは面白い 月刊「根本宗子」『忍者、女子高生(仮)』

2016.04.10 Vol.664

 今年2月にミュージシャンの「おとぎ話」とコラボレートした『ねもしゅーのおとぎ話 ファンファーレサーカス』を上演したばかりの根本宗子が、その余韻も冷めやらぬ中、今度は劇団公演。相変わらずのハイペースで作品を発表しまくっている。
 本人の旺盛すぎる好奇心となにゆえか発せられる大物感で演劇以外からもオファーが多く、活動の場が広がる一方の根本だが、劇団は「自分が最強に今面白いと思うことを追求する場」と特別な思いを持つ場所。今回も今やりたいことをとことんやり尽くす作品になる。

 この『忍者、女子高生(仮)』というタイトルは、タイトルについて考えているうちに「忍者っぽいタイトルをつけてみたい」という衝動にかられてつけたもののようで、物語とどの程度リンクしているかは定かではない。しかし「なんか気になるタイトルだな」と思ってしまった段階で、実はすでに根本の思うツボ…?

 ちなみに今年は「第60回岸田國士戯曲賞」の最終候補作に『夏果て幸せの果て』が残るなど、演劇界的にも評価が上がりつつある。もっとも根本本人はそのへんはあまり視野には入れていないのだろうが…。

クスリと笑うもよし、大声で笑うもよし『あぶない刑事にヨロシク』

2016.03.27 Vol.663

 映画界であぶない刑事の最新作『さらばあぶない刑事』の上映が続くなか、演劇界から『あぶない刑事にヨロシク』なる作品のリリースが届いた。
 もちろん映画とは無関係。

 演出家、脚本家、構成作家、映画監督など幅広い活躍を見せる細川徹が作・演出を担当し、濃いメンバーでばかみたいなことだけをひたすらやりまくる作品。

 あぶない刑事にあこがれる“そんなにあぶなくないコンビ”皆川と荒川が、今日もあぶなっかしく、大した事件や大したことのない事件に立ち向かっていく。いったいどんな“あぶない”事件が起こるのか、2人は生きて事件を解決することはできるのか…。

 皆川と荒川を演じるのは大人計画の皆川猿時、荒川良々。池津祥子、村杉蝉之介、近藤公園といった芸達者な面々がワキを固め…まではともかく、ターンテーブルやギター、ベースなどをたった1人で駆使する超絶パフォーマーのTUCKERが音楽を担当と聞くと、舞台上ではいったいどんなことが繰り広げられるのか全く予想もつかない感じ。

 前売り券は完売で当日券はチケットぴあ当日券専用ダイヤル(0570-02-9997)で、14時開演の公演は 前日の16〜18時、19時開演の公演は公演当日の 12〜14時受付となっている。

クスリと笑うもよし、大声で笑うもよし『スケベの話〜オトナのおもちゃ編〜』ブルドッキングヘッドロック

2016.03.27 Vol.663

 ブルドッキングヘッドロックの作品は、不安、悪意、狂気といった現代の人間が抱えるさまざまな息苦しさを描きつつも、それゆえに発生してしまう、ささやかな“おかしみ”を緻密な会話劇で綴る。いわばどんよりしたお話を笑いでさらっと昇華する、といった感じ。

 題材的には幅広いタイプの作品を上演してきたが、今回は中でも人気の高かった?「スケベ」をテーマに、あらゆる「スケベ」を嗜むシリーズ、「スケベの話」の公演新作。

 とある国の軍部に属する中佐の邸宅で行われた、ある日のパーティー。中佐の部下の大尉は、そこで謎めいた美しいメイドと出会う。「このスイッチを君に預けよう。君を救うためのスイッチだ」中佐の懐には、たくさんのスイッチ・スイッチ・スイッチ…。大尉のもとへ渡ったスイッチは、隣国へのミサイルか、美人秘書を身悶えさせるのか。というように、さまざまなことがちょっとずつエッチな方向に転がり始める。それは「スイッチのせいだ!」と気づいた将校だったが、そこにメイドの女が妖しく歩み寄るのだった…。

 家族、権力、そして性欲の狭間でおもちゃのように揺れ動く、男たちのおかしみと哀しみが描かれる。

現代口語演劇の幅の広さを実感『ドロボー・シティ』あひるなんちゃら

2016.03.15 Vol.662

 あひるなんちゃらの作品は、思いついた面白そうなことをただ書いていたら一本の作品になっていた——という感じ。意味ありげな台詞があると「伏線か?」と思う人も多いだろうが、決してそうとは限らず、ただいい台詞が思いついたから喋らせてみた、ということが結構多い。楽しむコツを分かっている人であればあるほどのめり込める、ある意味、プロレスのようなもの。

 今回はタイトルから察するに「泥棒」のお話。

 作・演出の関村曰く「大泥棒が、古代王朝の財宝とか、あなたの心とかを盗んでどうこうっていう話を書いたら、それはオマージュやインスパイアという名の限りなく盗作に近い芝居になってしまうので、小泥棒の話にしました」とのこと。

 泥棒にも家があって、ひょっとしたら泥棒の家だって泥棒に入られる可能性はあるわけで……といったトーンで話が進んでいく。

 小泥棒? こそ泥じゃなくて? なんて突っ込みは家に置いてきてありのままを楽しむのが肝要。
 今回も年配の方とか飽きっぽい人にも優しい70分の駄弁芝居。

現代口語演劇の幅の広さを実感『おとこたち』ハイバイ

2016.03.15 Vol.662

 1月に新作公演『夫婦』の上演が終わったばかりのハイバイが2014年に上演された『おとこたち』を再演。全国6都市を回る。

『おとこたち』は作・演出の岩井秀人が元落語研究会のサラリーマン、紹介予定派遣で働く人、知人のがん治療などを取材し、それをもとに4人の男性の24歳〜82歳の人生を描いたもの。

「老い」「認知症」「人生の幸福度」「社会」というテーマが大きな反響を呼び、その後NHKの人気番組「クローズアップ現代」でも取り上げられたほど。

 製薬会社の営業、居酒屋のバイト、俳優、紹介予定派遣社員の4人の男たちは定期的にカラオケボックスや飲み屋に集まり、互いの近況を語り合う仲。しかし時が経つにつれ、順調に歩む者、挫折する者、転落する者とそれぞれの人生は大きく変遷していく。

 順調に越したことはないが、だからといって楽しいわけでもない。転落した者だけが手に入れる暗い輝きにシンパシーを感じる時もある。人生についていろいろと考えさせられる作品。
 俳優としてサンプルの松井周が出演するのもちょっと気になる。

岩松的ホームドラマの決定版 M&Oplaysプロデュース『家庭内失踪』

2016.02.21 Vol.661

 M&Oplaysプロデュースでは岩松了、倉持裕、ノゾエ征爾といった作・演出家が他のプロデュース公演や劇団などで見せる作品とは一風変わった作風を見せてくれる。加えて“ならでは”の豪華であっといわせるキャストを揃え、ハイアベレージな作品を作り続けている。

 今回は岩松了と定期的に行っている公演で、昨年に引き続いての新作書き下ろし。

 物語は倦怠期真っただ中の夫婦を中心に繰り広げられるのだが、その夫婦を演じるのは小泉今日子と風間杜夫。2008年にも岩松作品である『恋する妊婦』で夫婦役を演じており、まさに倦怠期の夫婦役はぴったり?

 この倦怠期真っただ中の夫婦は20歳ほど年が離れていた。夫には前妻との間に娘がいたのだが、最近その娘が嫁ぎ先から出戻ってきた。血のつながらない娘の登場により、いっそう微妙さを増す夫婦の関係。そこに説得にやってきた娘の夫の部下、近所に住む謎の男がからみ、事態は思わぬ方向に転がっていく…。

 岩松の代表作のひとつである『蒲団と達磨』の後日譚ともいえる作品。笑いと謎に満ちた岩松的ホームドラマの決定版。

M&Oplaysプロデュース『家庭内失踪』
【日時】3月11日(金)〜23日(水)(開演は平日19時。土14時/19時。日祝14時。16日(水)は14時の回あり。23日(水)は14時の回のみ。14日休演。開場は開演30分前。当日券は開演1時間前)
【会場】本多劇場(下北沢)
【料金】全席指定 前売り・当日共6500円/U-25チケット4500円(25歳以下対象・当日指定席券引換・枚数限定・要身分証明書・チケットぴあにて前売販売のみ取扱)
【問い合わせ】M&Oplays(TEL:03-6427-9486=平日11〜18時 [HP] http://mo-plays.com/kateinai/ )
【作・演出】岩松了
【出演】小泉今日子、風間杜夫、小野ゆり子、落合モトキ、坂本慶介、岩松了

三部作待望の再演。その第1弾 鄭義信 三部作 Vol.1『焼肉ドラゴン』

2016.02.21 Vol.661

 新国立劇場は今年上半期に鄭義信が日本の影の戦後史を描いた三部作を一挙上演する。『焼肉ドラゴン』はその第1弾。

 本作は万博に沸く1970年前後の関西の地方都市に暮らす在日コリアン一家と、彼らが営む焼き肉屋に集う人々の日常を通じて、日韓の現在・過去・未来を音楽を交え、おかしくも悲しい物語として描いたもの。
 2008年、2011年には日本ばかりではなく韓国・ソウルでも上演されるなど、大きな話題を呼んだ。今回はキャストをほぼ一新しての待望の再々演となる。
 焼き肉店の店主らの世代とその子供世代、在日コリアンと日本人、男と女といった立場の違う人間たちが繰り広げる物語は、見る者の感情によって感想は大きく変わってくるだろう。

 4月に朝鮮戦争が始まった1950年代を描いた『たとえば野に咲く花のように』、5月には60年代半ばの九州のとある炭鉱町で炭鉱事故に巻き込まれた在日コリアンの家族を描いた『パーマ屋スミレ』が上演される。
 きっとなんらかの“気づき”のきっかけとなってくれる三部作だ。

【日時】3月7日(月)〜27日(日)(開演は水木土日13時、金18時30分。月は7日18時30分、21日13時。火は8日18時30分、15日13時。26日(土)は18時30分の回あり。14・22日休演。開場は開演30分前。当日券は開演1時間前)
【会場】新国立劇場 小劇場 THE PIT(初台)
【料金】A席5400円、B席3240円
【問い合わせ】新国立劇場(TEL:03-5351-3011 [HP] http://www.nntt.jac.go.jp/ )
【作・演出】鄭義信
【出演】馬渕英里何、中村ゆり、高橋努、櫻井章喜、朴勝哲、山田貴之、大窪人衛、大沢健、あめくみちこ/ナム・ミジョン、ハ・ソングァン、ユウ・ヨンウク、キム・ウヌ、チョン・ヘソン

MONO『裸に勾玉』さまざまな形でなされる問題提起に気づく感性が大事

2016.02.08 Vol.660

 MONOの作品は、現実にありそうな設定や普通にいそうな登場人物のキャラをちょっとひねってみたり、何かを加えることで、ありそうでなさそうな世界観を作り上げ、そこで物語が展開される。そのずれた設定のお陰で、そこで繰り広げられるおかしな会話はそのままおかしく、深刻なエピソードも「まあ、架空の世界のお話だから」とそれほど気を滅入らせることなく観客に受け入れさせる。

 作・演出の土田英生が今回選んだ舞台は弥生時代。卑弥呼が死亡する少し前、狗奴の国と邪馬台国が交戦状態になるころ。ある集落の外れに身分も低く頭も悪い三兄弟を中心とした家族が住んでいた。さしたる問題もなく楽しく暮らしていたその集落に、ある日、追っ手から逃げてきた不思議な男が紛れ込んできた。それを機に平穏な生活に波風が立ち、やがて集落の人々は“ある選択”を迫られることになるのだが…。

 あえて弥生時代という現代とは大きくかけ離れた設定にすることで、個々のエピソードのリアリティーが増し、本質があぶり出される。さりげない会話の中に挟まれる疑問や問題提起に気づくともっともっと面白い作品。

MONO『裸に勾玉』
【日時】3月5日(土)〜13日(日)(開演は5・7・9・11日19時30分、6・10・12・13日14時。8日休演。開場は開演30分前。当日券は開演1時間前)
【会場】シアタートラム(三軒茶屋)
【料金】指定席 一般 前売4000円、当日4500円/早期観劇割引(5〜7日)前売3500円、当日4000円/U-25(25歳以下・要証明書提示。前売のみ)2000円
【問い合わせ】キューカンバー(TEL:075-525-2195 [HP] http://www.c-mono.com/ )
【作・演出】土田英生
【出演】水沼健、奥村泰彦、尾方宣久、金替康博、土田英生、山本麻貴、もたい陽子、高橋明日香、松原由希子

美男高校地球防衛部LOVE!活劇! 人気アニメを舞台化! オリジナルストーリーも!?

2016.02.07 Vol.660

 昨年の1〜3月にテレビ東京ほかで放送され、既に第2期の制作も発表されている女性向けオリジナルアニメ『美男高校地球防衛部LOVE!』が、『美男高校地球防衛部LOVE!活劇!』と題し舞台化することが決定した。

 主人公は、眉難(びなん)高校に通う5人の男子高校生。“何もしない部”こと「地球防衛部」に集まりダラダラと過ごしていた彼らの前に、突如、日本語をしゃべる奇妙な桃色のウォンバットが現れ、5人を愛の王位継承者“バトルラヴァーズ”に任命し…。

 脚本・演出は『ママと僕たち』、舞台『私のホストちゃん』などを手掛ける村上大樹が担当。奇想天外な展開をコミカルに描き出す。

ローソン・ミニストップ店頭Loppiにてチケット好評発売中!
『美男高校地球防衛部LOVE!活劇!』

【日程】3月10日(木)〜13日(日)
【会場】Zeppブルーシアター六本木
【料金】一般¥6,800(税込)
【チケットの購入および問い合わせ】 http://l-tike.com/

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