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戦後最悪の日韓関係をいかにすべきか(下)【長島昭久のリアリズム】

2019.10.14 Vol.723

 戦後最悪の状況に陥った日韓関係を打開する道筋は依然として見出せません。過去2回の連載を通じ、私は、今回の日韓衝突の核心が、これまでのような歴史問題をめぐる「被害者vs加害者」の構図ではなく、「自ら結んだ国際約束を守るのか否か」という国際関係の基本に関わる問題であることを明らかにしました。すなわち、戦後の日韓関係は、たとえ過去をめぐる様々な葛藤やわだかまりがあったとしても、東アジアの平和と繁栄という共通の目標に向かって、歴代の日韓政府はじめ両国民の真摯な努力によって築かれてきました。その土台となったのが、1965年の日韓請求権・経済協力協定です。それが日韓両国の共通理解でした。したがって、その共通理解を根底から覆すような韓国文在寅政権の姿勢が改められない限り、未来志向の日韓関係は到底望み得ないと考えます。  とはいえ、これ以上日韓関係を悪化させた場合、我が国の安全保障への深刻な打撃につながりかねないことは、前回の最後に触れました。したがって、何とか関係正常化の糸口を探りたいと思い考察を重ねた結果、私は、日米韓3か国相互にこれまでとは次元の異なる不信感が植えつけられてしまったことに気づいたのです。  すなわち、第一に、一連の韓国の「(国際)約束破り」が、これまで日本が韓国に抱いてきた「加害者としての呵責」のような感覚を吹き飛ばしてしまったことです。第二に、日本による制裁まがいの輸出管理規制が、従来のような「歴史を反省しない日本」という韓国人の対日イメージ(とくに高齢者世代に多い)を、「韓国の将来を侵害しようとする日本」(とくに若い世代)へ劇的に変えてしまったということ。第三に、韓国によるGSOMIA破棄が、日米両国の安全保障関係者から「中露朝(大陸勢力)への転向宣言」に等しく受け止められたということです。このパーセプション(認識)の劇的変化を放置することで誰が得をするのか、それが東アジアの安全保障にとり、どれほど危険かを想起する必要があります。  もつれた糸を解きほぐして日米韓3か国の関係を正常化する道は険しいのですが、私は次のような具体的なステップを提案したいと思います。第一に、GSOMIAについては、日韓関係を超えた東アジアの安全保障の根幹に関わる問題であるとの認識に立って、韓国が米国の勧告を受け入れる形で破棄を撤回する。第二に、日本政府は、(韓国側の輸出管理に係る是正措置を見届けた上で)輸出管理強化措置を停止する。第三に、韓国政府は、「徴用工」をめぐる大法院判決を重く受け止めつつも、日韓協定をめぐる共通理解に基づきすべての原告に対する補償措置を韓国政府の責任で行うことを表明する(その際に、自発的に日本企業が見舞金を支払うことを日本政府は黙認してもよい)。  以上のアクションを行うには、とりわけ日韓両国の間に「阿吽(あうん)の呼吸」が整わねばなりません。GSOMIAが失効する11月23日までに水面下の実務協議を通じて詳細なロードマップを策定し、年末までに日米韓の外交・安全保障関係閣僚による会議を開催し、上記3つの相互措置に合意するのです。さもなければ、ますます中露朝による分断工作の思う壺に陥ることを、そろそろ私たちは深く認識すべきではないでしょうか。 (衆議院議員 長島昭久)

戦後最悪の日韓関係をいかにすべきか(中)【長島昭久のリアリズム】

2019.09.09 Vol.722

 日韓関係は、前回の寄稿からさらに悪化しています。なんと韓国政府は、勢い余って遂に日韓GSOMIA(軍事情報包括保護協定)までも破棄してしまいました(11月23日に失効)。事態は、日韓関係を超え、米韓関係をも破壊しかねない想定外のレベルに達してしまいました。  日韓関係の将来を考える前に、日韓GSOMIA破棄の地政学的なインプリケーション(影響)を考えておかねばなりません。GSOMIAは、その名のとおり秘密保護に関する取り決めです。その取り決めがあって初めて機微な軍事情報が日韓間でやり取りできるようになるのです。朝鮮半島情勢をにらみ日米韓の緊密な連携が不可欠と考える米国が日韓両国へGSOMIA締結を強く働きかけた所以です。よく破棄は締結されたほんの3年前に戻るだけだから大したことではない、などと訳知り顔で述べる方がいますが、とんでもない話です。GSOMIAは日米韓安全保障協力の「紐帯(ちゅうたい)」ともいうべき重要な協定なのです。それは、朝鮮半島有事を想定すれば明らかでしょう。ハドソン研究所の村野将研究員が指摘するように、韓国軍と連合して即応態勢を維持する在韓米軍は、「後詰」の在日米軍がなければ十分に機能を発揮できません。在日米軍は自衛隊の支援が必要不可欠です。したがって、日韓の軍事的「紐帯」を断ち切ってしまえば、在韓、在日米軍の戦力発揮が困難に直面してしまいます。だから、日韓GSOMIA破棄に米国が激しく反発しているのです。  しかも、今までは北朝鮮の核やミサイル情報が3国間のやりとりの大半を占めていましたが、今後は、中国やロシアに関する情報なども日米韓で緊密に共有することが期待されていました。今回韓国政府は、この可能性を潰してしまったのです。しかも、GSOMIA破棄を繰り返し求めてきたのは北朝鮮であり中国でした。つまり、韓国は、日米との関係よりも中朝(露)との関係を優先させてしまったのです。これは、地政学的には極めて由々しい事態です。古来、朝鮮半島は、ランド・パワー(中露など大陸国家連合)の磁力に引き寄せられる傾向を持ってきました。それが、1950‐53年の朝鮮戦争以来、38度線を挟んで南の韓国と米国が同盟関係を結び(米軍を駐留させ)、日米同盟(および在日米軍)と連動させることにより、韓国を日米を中心とするシー・パワー(海洋国家連合)に引き込んでパワー・バランスを維持してきたのです。  今回の韓国政府の判断は、この地政学的前提を大きく突き崩すものです。つまり、今後の推移次第では、我が国(および米国)の安全保障の根幹を揺るがす可能性を排除できません。日韓関係の将来を考えるということは、この最悪の事態を想定した近未来を念頭に置いて我が国の安全保障戦略を練り直すということと大きく重なります。この続きは、次回詳しく論じたいと思います。 (衆議院議員 長島昭久)

戦後最悪の日韓関係をいかにすべきか(上)【長島昭久のリアリズム】

2019.08.12 Vol.721

 安全保障上の理由から、韓国を優遇的地位から他のアジア諸国並みとした日本政府による貿易管理の厳格化措置をめぐり、韓国では国を挙げて反日機運が高まっています。私は、今回の出来事は、日韓関係を普通の隣国関係に転換する好機ととらえています。  これまでの日韓関係における問題解決のパターンは、歴史問題(日本による朝鮮半島の植民地化に起因)を巡って「被害者(被支配国民)vs加害者(支配国)」という構図に基づいて、「加害者」とされる日本側が(過去に対する贖罪意識から)特段の譲歩を迫られるというものでした。その典型が、2015年暮れの「慰安婦合意」です。  慰安婦をめぐっては、「河野談話」によって事実認識に混乱が生じ、韓国の民族左派民間団体などの攻勢を受け、またしても日本政府が譲歩を迫られていました。じつは、この問題は韓国との関係を重視していた民主党政権でも解決できませんでした。しかし、保守派の安倍政権となって、「戦時における女性の人権問題」と捉え直し、あらゆる請求権問題は1965年の日韓基本条約・日韓請求権・経済協力協定によって「完全かつ最終的に解決」したとの大原則は堅持しつつも、被害者の尊厳を回復する措置の一環として日韓両国で基金を創設することに合意し、日本から10億円を拠出することで最終決着させたのです。これにより、慰安婦問題は、「最終的かつ不可逆的に解決された」(2015年12月28日、日韓外相共同記者発表)“はず”でした。  しかし、前政権の反動で誕生した文在寅政権において、民族左派が牛耳る側近の影響もあり、この国際約束はあえなく反故にされてしまいました。日本政府にとって、いや日本国民にとってもこの衝撃は深刻でした。この頃から「もはや韓国は信用できない」「日本はいつまで譲歩を続けるのだ?」といった論調が、保守派ばかりでなく一般の方々からも発せられるようになりました。さらに、火に油を注ぐような事案—釜山港に入港する自衛艦の旭日旗掲揚を拒否、韓国駆逐艦による海上自衛隊哨戒機への火器管制レーダー照射、韓国国会議長による天皇陛下(現上皇陛下)侮辱発言など—が次から次へと発生し、日韓関係は戦後最悪に陥ったのです。
 そして極めつけは、元朝鮮半島労働者をめぐる韓国大法院(最高裁)判決です。「合意は拘束される」(つまり、日韓基本条約・請求権協定など国家間の合意は、行政のみならず、司法も含む三権を拘束する)という国際法の大原則を踏みにじる韓国政府の姿勢に、「仏の顔も三度まで」、ついに日本国民の堪忍袋の緒が切れてしまったというのが現実なのです。  これら韓国側の一連の対応は、日韓関係を、これまでのような歴史問題をめぐる「加害者vs被害者」という構図とは全く異なる次元に向かわせることとなりました。次回詳しく論じますが、今、日韓関係で問われているのは、加害側が被害側にどこまで譲歩するかという問題ではなく、「約束を守るのか、破るのか」という国家関係の基本に関わる問題です。 (衆議院議員 長島昭久)

徴用工問題で日韓関係に亀裂?

2018.11.09 Vol.712
 韓国の最高裁が10月30日、日本企業へ元徴用工への賠償を命じた判決を出した。日本政府は1965年に結ばれた戦後賠償に関する2国間協定である「日韓請求権協定」で解決済みとの立場をとっていることから安倍首相は「解決済み。あり得ない判断」とコメント。政府は11月5日、韓国政府が賠償金の肩代わりを行う立法措置などを行わない限り国際司法裁判所(ICJ)に提訴する方針を固めた。

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