格闘家イケメンファイル Vol.19 軽量級のレジェンド 寺戸伸近(てらどのぶちか)

撮影・神谷渚

 今年35歳になる寺戸は、40戦以上の戦歴を持つベテラン。しかし、本人の口からたびたび出てくるように、“がむしゃら”で“一生懸命”なファイトスタイルは、見るものに常に新鮮でワクワクする感動を与えてくれる。そんな寺戸、格闘技を始めたのは、自分の意思ではなかったという。

「最近ではベテランと言われることも多くなりましたけど、もともと格闘技を始めたのが遅かったんです。大学3年生、21歳の時に友達に格闘技のジムに行きたいからちょっと付き合ってって言われて。ただの付き添いだったので、運動不足を解消ぐらいの気持ちで、週に1回しか通ってなかったですし。K−1とかは見ていましたが、格闘技には全然興味がなくて、真剣にやっていなかった。今の若い格闘家を見ていると小さなころから空手や柔道をやっていたなど、エリートコースを歩んでいるので、それに比べると僕なんて21歳までまったくの素人ですから(笑)。でも半年か1年ぐらい経ったころ、アマチュアの試合に出ることになって、自分では余裕で勝てるという自信があったのに、そこで負けてしまった。息が上がってしまうぐらいボロボロ。そこからですね、これはちょっと練習しないとやばいぞと(笑)。それは、あくまで今度アマチュアの試合があったら勝ちたいという気持ちで、その時点でもプロになることは考えていなかった。でもそのうちアマチュアの試合を全部優勝できるようになって、初めてプロを目指すことを意識しました。それがちょうど22歳ぐらいで、結局23歳でプロデビューしました」

 広島で練習を積みプロとして活動してきたが4年前に上京。

「ずっと広島でやっていたので、それが一番いいのかなと思っていたんですけど、ちょっと伸び悩んでいた時に、広島で一緒にやっていた山本優弥が、いろいろ教えてくれて。優弥は何年も前に東京に出ていたので、練習環境やもろもろアドバイスをくれたりしたので、仕事の都合とかタイミングを見て、今かなみたいな感じで決めました。やはり東京ではいろいろな人がいますから、それまで知らなかった練習などができますし、最初なかなかできないことでもくり返し練習できる。そういうところは良かったなと思っています」

 寺戸が思う格闘技の魅力とは

「格闘技はみんな一生懸命練習してリングに上がる本気な戦いですし、そこから決して逃げられない。そういう本気な姿を見て、すごいなと思ってもらえるところもあると思うし、生で見ると怖いぐらいの迫力もある。それは実は選手もやっぱり怖いんです。その作り物じゃないところがいいのかなと。あと、リングの上にいたら華やかな感じですが、リングから降りたら普通の人なので(笑)。アイドルなら会えないかもしれないけど、会場の出入り口もお客さんと一緒だし、格闘家には結構簡単に会えます(笑)。だから本気で戦っていた人を身近でも感じられるのも楽しいと思いますよ」

 4月19日にはK−1 WORLD GP 2015〜 −55kg初代王座決定トーナメント〜に出場、1回戦目はチャールズ・ボンジョバーニと対戦する。

「今は4月19日の事しか考えていません。待ちに待ったK−1の舞台ですし、ずっと身近で一緒にやっていた山本優弥がK−1の舞台で活躍していたのを見ていて、いつかは自分も…と思っていたので。今回自分の階級でトーナメントがあるということで、ぜひチャレンジしたかった。外国人選手が4人いますが、日本人の選手も強豪ぞろいなので、準決勝、決勝には日本人が上がってくるんじゃないでしょうか。でも日本人選手はみんな若い(笑)。10代とか20代前半ですから…。当たったら? おやじ刈りに合わないようにしないと(笑)。それは冗談ですが、勝つと負けるしかない勝負の世界ですから、何としてでも勝ちたい。勝つためにリングに上がるし、いつものように、必死に一生懸命やるだけです。箱も大きいですし、たくさんの人にそんな自分の輝いている姿を見てほしいですね」

1980年9月9日生まれ、島根県浜田市出身。2003年12月7日、全日本キックボクシング連盟「Fujiwara Festival ー藤原祭りー」でプロデビュー。第2代 Mー1 バンタム級 王者。RISE 55kg級 王者。第24代 全日本キックボクシング バンタム級 王者。2011年8月 ISKA オリエンタル世界スーパーバンタム級 王座(防衛1回)。4月19日(日)に東京・国立代々木競技場第二体育館で開催される「Kー1 WORLD GP 2015〜 ー55kg初代王座決定トーナメント〜」に参戦。Booch.Beat所属。