妄想が暴走する劇団☆新感線『港町純情オセロ』

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撮影:田中亜紀

 劇団☆新感線の『港町純情オセロ』が、笑いと涙とやりきれなさで、赤坂ACTシアターをいっぱいにしている。戦前の日本、関西のある港町が舞台。ギャングの親分と病院の令嬢との恋、ギャングの抗争、陰謀、策略など、登場人物それぞれが抱えるストーリーが入り組み、絡み合うのだが、そこが舞台で使われる大阪弁の魅力か、難解にはならず、悲劇の終焉へと軽やかに展開する。
 舞台のベースは、シェイクスピアの四大悲劇のひとつ『オセロー』。ヴェニスの軍人であるオセローが、周囲の反対を押し切って、運命の女性・デスデモーナと結婚。オセローをよく思わない旗手のイアーゴーがオセローに妻の浮気の噂を吹き込むと、オセローは嫉妬に狂い愛する妻を殺し、その後に真実を知って自殺する。
 悲劇とされるものの、『港町純情オセロ』には笑いがこぼれる。例えば、原作で主人公を陥れるイアーゴーは音をもじって"イヤー・ゴー"=耳なしという呼び名を持つ。セリフでは、主演の橋本じゅんが2010年の公演『鋼鉄番長』を腰の故障で降板したことをつついたり、脚本家をいじったりと、劇団☆新感線ファンを喜ばせるものもある。さらには、清純派という石原さとみのイメージを大胆なセリフで覆したりもする。しかしそれによって、悲劇の要素が格段に際立ち、客席には静かに頬を伝う涙をぬぐう姿も見られた。
 田中哲司の何かに取り付かれたような演技、大東俊介の弾けた演技も強く印象に残る。
 舞台は15日まで。